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目指すは「気軽にビジネスができるクラウド事業者」 Kurian氏のGoogle Cloud

Oracleの戦術をGoogleで再現

 Kurian体制始動をアピールしたGoogle Cloudだが、メディアやアナリストの評価はどうだろう。

 ZDNet編集長のLarry Dignan氏は、Kurian氏が20年以上務めたOracleの作戦を持ち込んだとみる。Kurian氏がOracle時代に使った産業別のOracleの導入率を示したスライドと、Googleイベントで表示した同様のスライドを示し、その戦略がOracleのものと似通っていることを指摘した。また、Oracleは、Sun Microsystemsの買収でJavaを手に入れ、「Write Once,……」のスローガンを使っていた。

 Wall Street Journalも同様の指摘をしている。Kurian氏の下で進む営業体制の強化に着目し、それまでアカウントマネージャーがいないことが普通だったGoogle Cloudで、エンタープライズ顧客の要望に応えることができる営業・サポート体制作りが進んでいるとする。

 営業に合わせて、契約の簡素化、わかりやすい価格体系などもKurian氏になってから改善されているといい、「22年間エンタープライズ顧客と付き合って学んだことがいくつかある」というKurian氏のコメントを引用している。

 Accentureの戦略トップGene Reznik氏はWall Street Journalに対し、Googleが営業とサポートよりも技術開発を最優先させる文化であることを指摘し、Kurian氏がGoogleの“コンシューマー中心の社風”に、企業からの信頼を加えることを期待する。

 Google Cloudは現在、IaaSでは3大ベンダーに入ってはいるが、1位のAWS、2位のMicrosoft Azureに大きく水をあけられての3位だ。Gartnerによると、AWSのシェアは51.8%、Microsoft Azureは13.3%であるのに対し、Googleは3.3%にすぎない。

 Kurian氏の前に3年間Google Cloudを率いたGreene氏は、さまざまなクラウドサービスを「Google Cloud」として集約し、技術面では積極的にAIに投資して特徴付けた。これが奏功して2018年には、取引額100万ドル以上の案件は倍増したという。このGreene氏が築いた土台の上でKurian氏は営業を強化する。

 Kurian氏は「最も気軽にビジネスができるクラウドプロバイダー」に向けた対策として、価格、営業、サポート、パートナー関係の強化を図っている。だが、残された時間は少ないとの専門家の見解をWall Street Journalは紹介する。

 Madrona Venture Groupのマネージングディレクター、Matt McIlwain氏は「時間切れが近づいている。エンタープライズ流の販売をうまくできなければ、Googleがこの市場で勝つことはないだろう」と述べている。Kurian氏はさらに戦略の加速を迫られるということだろう。