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米国はAIのリーダーでいられるのか Trump氏の大統領令

 Trump米大統領がAIを全面的に推進するという大統領令に署名した。「米国のAI分野のリーダーとしての地位を高める」をうたい、AI研究開発への重点的な予算配分、データの官民共有、AI時代に対応した労働者の訓練などを柱とする。この分野で急速に台頭する中国を念頭に置いたものでもある。だが、強硬な移民規制政策をとる同政権下でどれだけ実現されるのか懸念する声が出ている。

米国のAI推進5原則

 大統領令(Executive Order)は、軍を含む連邦政府機関に対して大統領が直接出す命令だ。法律と同等の効力を持ち、議会の審議を経ずに発することができる。Trump大統領下では、「TPP離脱」「メキシコ国境の壁建設」などで物議を醸すものが相次ぎ、日本のメディアでもお馴染みになっている。

 2月11日に署名された「American AI Initiative」は同氏の95番目の大統領令にあたる。米国のAIの推進を連邦政府機関に対して求めるもので、以下の5つの原則からなる。

  1. 連邦機関に対し、AIの研究開発投資を優先することを求める
  2. 連邦機関のデータ、モデル、コンピューターリソースを米国のAI研究者や業界がアクセスできるよう協力する。
  3. 広範囲な技術と業界のAI開発と利用で信頼できる標準を確立する。策定はNIST(国立標準技術研究所)が主導する。
  4. 労働者に対して新世代のAIとその関連分野の教育を実施する
  5. 米国のAI研究を支え、AI産業に開かれた国際環境を促進するとともに、米国の価値観と利益に一致する形でのAI技術の開発を確かなものにし、米国の主導権を強化する

 米国では近年、AIでの中国の台頭への危機感が高まり、産業界や研究者からAIの国家基本戦略を求める声が高まっている。中国は2017年、“2030年までにAIで世界トップのイノベーションセンター”となって1500億ドル規模の市場をつくると宣言。翌2018年には、AIスタートアップへのベンチャーキャピタルの出資総額が米国を上回るなど発展が著しい。

 そしてようやく出てきたのがAmerican AI Initiativeとなる。専門家やメディアは、これを重要な1歩として歓迎しながらも、その課題と不安を指摘する。まずは、資金の問題だ。