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米国はAIのリーダーでいられるのか Trump氏の大統領令

優秀な人材の流出が続く

 Fortuneは「このAI計画は財務上の詳細を公表していないという点で、他国の計画と特に異なっている」と言う。

 中国は既に地方政府ごとに、数十万ドル規模の産業ファンドを立ち上げるなど活発に動いている。他の先進国も例えばフランスは昨年3月、2022年までにAIに18億5000万ドルを投資すると発表。翌月には英国も複数年で13億ドルをAIに投じる計画を発表している。これらに対しAmerican AI Initiativeは予算配分で「優先する(prioritize)」と述べるだけで額は明示していない。

 ホワイトハウスは、今後6カ月程度で進め方を明らかにするとしているが、実際にどれだけの資金がまわされるかは不明だ。予算をめぐって、連邦機関の閉鎖や非常事態宣言まで飛び出す今の状態では、政府案がすんなり議会を通るとは考えにくい。

 米国はどれくらいの資金をAIに投じればいいのだろうか。かつてGoogle中国のトップなどを務め、現在は中国のベンチャーキャピタルInnovation Works(創新工場)のCEOであるKai-Fu-Lee(李開復)氏は「AI研究予算を2倍にするのが、最初だ」と昨年9月のCNBCのインタビューで述べている。

 Lee氏によると、米国のAI研究者は政府の助成金獲得で四苦八苦している。一方で潤沢な研究費を提示する中国などのプロジェクトに移る者も多く、貴重な人材の流出が続いているという。

 そして、多くの識者が指摘するのがTrump大統領の移民政策だ。高度人材においても労働者の入国は厳しくなった。2017年4月には、多くのソフトウェアエンジニアが恩恵を受けてきた「H-1B(専門職)」ビザの簡略手続きが大統領令で廃止されている。

 その影響とみられる例をForbesが紹介している。カナダはシニアソフトウェア・エンジニアのような特定のカテゴリーの移民に短期の労働許可を発行する「Global Skills Strategy」を2017年6月に導入した。その結果、米国にいたAIの研究者・エンジニアがカナダに移る動きが活発になっているという。

 Forbesによると、人材の国外流出は、小企業やスタートアップに影響が大きい。大企業の場合、子会社を持って国外に研究・開発を持つことができるが、スタートアップには難しいからだ。