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2019年もAI大国に向けて進む中国 米中摩擦の激化要因にも

AIチップ進出に追い風

 中国はAIで相当なレベルに達しているが、アキレス腱があるという。処理チップの問題だ。この分野を活性化させようと言う動きをMIT Technology Reviewが伝えている。

 世界の工場の中国だが、半導体チップとなると、世界上位15位中に1社もランクインしていない。この分野ではNvidiaがリードし、Intelが後に続いた。GoogleもAI専用のチップ「TPU」を発表している。米国などで半導体が大きく発展した時代に文化大革命で技術開発が遅れたのが主な原因だが、AIではもう一度スタートラインに立てると見ているようだ。

 MIT Technology Reviewは、元Baidu幹部であるKai Yu氏が創業したHorizon RoboticsとHuawei TechnologiesなどのAIチップの動きを紹介している。Horizonは事前にトレーニングされた深層学習アルゴリズムに特化したアプリケーション固有のマイクロチップを開発している。自動運転車やスマートロボットが主な用途だ。Huaweiは昨年8月、自社スマートフォン向けのチップ「Kirin 980」を発表。同社の幹部はNPU(Neural Network Processing Unit)を搭載し、画像や音声認識に優れることを強調していた。

 両社以外にも、中国ではチップの動きが活発のようだ。Baiduは昨年7月に深層学習アルゴリズム専用のチップ「Kunlun」の開発を明らかにし、その後9月にはAlibabaがAIチップ事業をPingtougeとしてスピンアウトしている。

 一方で、HuaweiのKirin 980の製造は台湾のTSMC、設計はCambriconだ。まだチップ製造能力という点では「制限がある」としながらも、「成果と野心を示すもの」とMIT Technology Reviewは論評している。

 このようなチップ製造は「中国のチップへの野望は、米国をはじめとする国々を動揺させる」と記事は指摘。「中国は技術を獲得するにあたって積極的な買収を行ったり、技術の移転を強要したり、産業スパイ活動を行うため」とする。チップは軍・防衛とも密接にかかわっていることも付け加える。

 それでも、「チップ製造に向けた中国の動きは高速で、阻止できない」という。中国のAI、2019年にどこまで進むのか――。摩擦の火種になるとすると、残念なことだ。