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“1兆ドル企業”になったAmazon、成長期待とビジネス批判

小売業の支配と逆風

 先の大統領選でClinton氏と民主党候補の指命争いをした上院のBernie Sanders議員(現在は無所属)は9月5日、「Stop Bezos法案」と呼ぶ法案を提案した。

 「Stop Bad Employers by Zeroing Out Subsidies」(補助金の相殺で悪しき雇用者に歯止めを)の略で、AmazonのCEO、Bezos氏の名前にかけたものと言われている。以前から計画していたが、提出が1兆ドル達成の翌日というタイミングで、さらに注目されることになった。

 Stop Bezos法案は、従業員500人以上の大企業に対し、低賃金の労働者が受け取る連邦補助金と同額を課税するというものだ。低所得者には、食費補助金「SNAP」(旧Food Stamp)や公的医療制度「Medicaid」が連邦政府の負担で提供されており、その分を企業が負担せよという趣旨だ。

 非営利団体のNew Food Economyのレポートによると、SNAPを受けているAmazon従業員の比率は、アリゾナ州では3人に1人、ペンシルバニア州とオハイオ州では10人に1人にのぼるという。

 こうした批判に対し、Amazon側は8月末、ブログ記事で反論。2017年だけで13万人分の雇用を創出した、スキルアッププログラムCareer Choiceの受講者に95%の費用を前払いしている、フルタイム従業員の平均収入は3万4123ドル(Bernie議員は2万8446ドルと主張)、SNAP受給者の中にはパートタイムで働くことを選んだ従業員、短期的に働いた人が含まれている――などと述べている。

 The GuardianはTrump大統領のAmazon批判を取り上げている。Trump氏は以前からAmazonが税金逃れをしていると攻撃しており、配送面では米国郵便公社(USPS)から搾取していると主張している。Trump氏はこれに関連して7月、USPSの財務状況を調べる特別調査委員会作業部会の設立を命じた。

 また、Amazonが計画中の第2本社の候補地の1つであるニュージャージー州ニューアークから、誘致にあたって70億ドルの税控除を約束されたことをThe Guardianは挙げ、「世界で最も潤っている会社に優遇する必要はない」と批判されていることも紹介している。

 Amazonの勢いは衰えていない。Bezos氏は2018年のForbesの富豪ランキングで世界トップに立った。やっかみのようなものも含めて風当たりは強い。同社の利益の還元を求める声も米国内外で続きそうだ。