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「AIの大衆化」でエンタープライズクラウド攻略 Google Cloud Nextから

Google AutoMLは本当に宣伝通りなのか

 膨大なデータを分析・活用するデータサイエンスは、あらゆる業種で利益を飛躍的に伸ばすと期待されているが、分析の前段の機械学習には手間がかかる。データソースの選択や、データの準備などに大きな時間が必要で、同時に、データサイエンティストやAIスキルを持った開発者・研究者は圧倒的に不足しているのが現状だ。

 そこでAutoMLは、作業を自動化して機械学習にかかる手間を削減し、貴重な専門知識を本業に生かしてもらうことを目指す。専門家不足やスキルの問題に対応するサービスという位置付けだ。Gartnerは、2020年にはデータサイエンティストの作業の40%が自動化されると予想している。

 もちろん、この方向にはライバルも多い。画像認識では、Microsoftにもデータから簡単にカスタマイズドモデルを生成する「Custom Vision」があり、機械学習活用の専業では、ビッグデータを扱えるH20.ai、予測分析のDataRobot、信用情報分析のZestFinanceなどの新興がひしめいている。

 Googleの影響力はそれらの中でもトップと言える。しかし、同社のAutoMLに疑問を投げかける専門家もいる。サンフランシスコ大助教(データサイエンス)で、AIソフト開発・教育を手がけるfast.aiの共同創業者Rachel Thomas氏は、AutoMLの宣伝は誇大ではないかと指摘する。

 Thomas氏は、Googleのサイトの説明では、AutoML Visionは「neural architecture search」(NAS)と「転移学習」という2つのコア技術で成立しているが、両者は相反するアプローチだと解説する。

 すなわち、転移学習が「学習済みのモデルを別の領域に適用する技術」であるのに対し、NASは「スクラッチから重みを学習しなければならない」技術で、この2つを同じ問題に同時に適用することはできないという。Googleの宣伝の通りではないとの異議だ。

 また、NASはニューラルネットワークの構造自体の最適化から始める手法で、専門家でなくとも高品質なモデルを生成できるのが特徴だが、同時に計算量が多くなるというデメリットもある。Thomas氏は「Googleの主張を評価する際、ディープラーニングを効果的に利用するカギが計算能力であることに留意すべきだ。つまり、実際に使うにはGoogleの全製品を購入しないといけないかもしれない」と付け加えている。