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米国防総省がクラウド移行計画 「単一ベンダーと契約」に反発の声

クラウド・ベンダーロックインに懸念の声

 だが、「単一のベンダー」という点に、ハイテク業界は反応した。

 Nextgovは「AWS以外の全ての企業は国防総省の計画に反対している」と記し、IBMの政府担当ゼネラルマネージャ、Sam Gordy氏の「DoDは大きな間違いを犯す」というコメントを引用している。Washington Postは、Oracleのシニアバイスプレジデント、Ken Glueck氏の「透明性があって公正な競合プロセス」を呼びかけるコメントを紹介した。

 政府調達の業界団体Coalition for Government Procurementは「単一のアプローチにロックインするリスクがある」と批判する。国防総省の組織であるDefense Innovation Unit Experimental(DIUx)が先に、AWSのGovCloudと約277万ドルの契約を結んだことに触れ、「複数の企業が参加してさまざまな技術問題の解決を図ることをミッションとしていたはずなのに、データをクラウドにホスティングするために単一のクラウドソリューション事業者と契約し、内部にフォーカスした問題解決を図ることにした」とする。

 DIUxはその際、AWSの契約が決まったのは、Microsoft AzureとAWSとを比較して「複雑なアルゴリズムの実装に必要な高度なコンピューティングの要求を満たす」「既にAWS GovCloudを使っており、別のクラウド事業者に移行するには余計な作業と時間が必要になる」などの評価があったからとしていた。

 Federal News Radioは、別の業界団体IT Alliance for Public Sectorの意見として、「複数の相互運用可能なサービスを組み合わせた省のクラウドこそ競合のメリットを得られ、政府と納税者に最大の価値を提供できる」と主張する。このようなマルチクラウドは多くの大企業が既にとっている方向性であり、「1社のクラウド事業者を選ぶことは、将来の競合を損なうことになる」とみるからだ。

 適切なIT調達の促進を目指して産官学で構成する「IT Acquisition Advisory Council」(IT-AAC)は国防総省に向けた公開書簡を発表。「クラウドを構築するのではなく、ハイブリッドクラウドとハイパーコンバージドインフラを購入せよ」などと助言した。同時にベンダーロックインを回避するオープンなアーキテクチャの重要性を強調している。

 一方で、単一ベンダーというのは、まだ最終決定ではないのかもしれない。Washington Postは、「完全にオープンなコンペとなること」「DoDのニーズを満たすには何件の契約が必要か」を評価している、と国防総省の代表者が述べたと報じている。