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クラウド業界はAI開発フレームワークで協力するか? 手を組むAmazonとMicrosoft

 クラウドベンダーにとって、AIは開発にしのぎを削っている分野であり、次の覇権につながるカギだ。そんな中で、業界1位のAmazon(AWS)と2位のMicrosoftが手を組み、メディアを驚かせた。両社が共同で発表したAI開発のライブラリ/フレームワーク「Gluon」は、それぞれの推奨ディープラーニング開発フレームワークで共通に利用できる。ベンダーの枠を越えたAI開発を促進するのだろうか。

Gluonプロジェクト

 「(Gluonによって)開発者はシンプルなPython APIとあらかじめ構築された最適化されたニューラルネットワークコンポーネントを使用して、機械学習モデルを構築できる」と両社のプレスリリースは説明している。Gluonは、10月13日の発表に合わせ、ソフトウェア開発者向けWebサービスのGitHub上で公開された。

 ディープラーニングの開発には、機械学習モデルの構築と、データによるトレーニングという従来型のプログラミングとは異なる手順がある。その作業を支援するフレームワークは、ライブラリやインターフェイスを統合して、(1)多層ニューラルネットワークの定義、(2)メモリ上への「計算グラフ」(Computational graph)の構築、(3)データを用いた学習・予測――を行う。

 しかし、現在のディープラーニング・フレームワークは多くの開発者にとって敷居が高すぎると両社は言う。「現在、機械学習モデルを構築・訓練することは実際、大変難しく手間がかかり、特別な専門性を求める」(Amazon AIのバイスプレジデント、Swami Sivasubramanian氏)というのだ。

 両社にはそれぞれディープラーニング開発の推奨フレームワークがある。AWSは「Apache MXNet」、Microsoftは「Microsoft Cognitive Toolkit」(CNTK)だ。MXNetは、ワシントン大学とカーネギーメロン大学が開発したもので、2016年にAmazonが公式サポートしてAWSの推奨フレームワークになった。CNTKはMicrosoftが開発して2015年にオープンソース化した。いずれもスケーラビリティや並列処理への対応など、クラウドでの展開を重視している。

 Gluonはその両方に「抽象化レイヤー」を提供し、ニューラルネットワークに熟練してない開発者も「アプリケーションをつくる」ように開発ができるという。ネットワークの定義と修正の容易さが特徴で、その目標は「開発者が既存のスキルセットを活用しながらAIのトレンドに乗るのを助ける」(eWeek)ことだ。

 Gluonは最初のリリースでMXNetに対応。後続のバージョンでCNTKにも対応する予定だ。ちなみにもともとの意味は「物質の基本的な構成要素であるクォークを結びつける素粒子」だ。