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VMwareが「vCloud Air」を売却 自社パブリッククラウドから撤退

 VMwareが自社パブリッククラウドサービス「vCloud Air」をフランスのホスティング企業OVHに売却することで合意したことを発表した。サーバー仮想化で圧倒的なシェアを持つVMwareだが、クラウドの時代の立ち位置が注目されてきた。自社データセンターで展開するvCloud Airの売却が意味するものは――。

ハイブリッドクラウドのための「vCloud Air」

 vCloud Airは、VMwareが2013年に発表したvSphereユーザー向けのパブリッククラウドサービスだ。2008年に掲げたハイブリッドクラウドサービスを再ブランド化したもので、CPU、メモリ、ストレージなどをリソースとして提供する。その由来からも、ハイブリッドクラウドを実現するためのパブリッククラウドという位置付けを持っていた。

 例えば2016年8月の自社イベントでは、企業のデータセンターとパブリッククラウド間のシームレスなアプリケーションの移植を実現する「Hybrid Cloud Manager」、オンプレミスで実現するセキュリティ、管理、アーキテクチャを拡張できる「Hybrid DMZ」、既存のIDソリューションとの連携によりパブリッククラウドへのアクセスを管理する「Identity Federation」のサポートなどを追加したところだ。

 また、vSphere、ストレージ仮想化のV-SAN、ネットワーク仮想化のNSXをバンドルする「VMware Cloud Foundation」との統合によって、同社が進めるソフトウェア定義技術へのアクセスをvCloud Airから可能にするなどの機能強化を図っていた。

 今回、そのvCloud Air事業をOVHに売却することになった。vCloud Airのデータセンター、運用とサポートのスタッフ、顧客を売却。中核のハイブリッドクラウド技術はVMwareに残すという。

 他方、OVHは欧州最大のクラウドホスティングプロバイダーで、米国への拡大を図っているところだ。同社はvCloud Air事業を取得することで、北米のデータセンターと顧客を獲得できる。両社は既に、VMwareがvCloud Airで展開するパートナープログラム「VMware vCloud Air Network」で提携関係にあり、数千社というvSphere Private Cloud顧客の20万以上の仮想マシンを動かしているという。

 取引は2017年第2四半期中に完了する見込みだ。売却額などの詳細は公開されていない。