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VMwareが「vCloud Air」を売却 自社パブリッククラウドから撤退

マルチクラウド戦略を推進

 一方で、VMwareはパブリッククラウド企業との提携を進めてきた。大きなものは2016年秋のAWSとの提携だが、これに先立つ同年2月にはIBMと提携している。当時、Virtualization Practiceのアナリストは「VMwareは、つい最近までクラウドのなんたるかをきちんと理解していなかった」とし、ハードウェアベースのオンプレミスデータセンターの概念が抜けず、ドル箱であるvSphereとESXiを犠牲にすることをちゅうちょしてきた、と続けている。

 こうした流れの中でのvCloud Air事業の売却が決まった。パートナーの声を集めたCRNは「パートナーにとっては、VMwareのクラウド戦略で待望の転換点がやっと訪れた」と評する。あるパートナーは「AWSと提携した現在、vCloud Airを持つことは自社内での競合になる」と述べ、「vCloud Airの売却によって、あらゆるプロバイダーとハイブリッドクラウドを実現できるし、ソフトウェアの観点から見たベンダーロックインがない」とCRNに利点を語っている。

 辛口で知られるThe Registerも、VMwareの決断を評価する。「CiscoもHewlett Packard Enterprise(HPE)もパブリッククラウドから撤退した」とした上で、「vCloud Airの失敗はそこまで痛みを伴わない」と分析する。vCloud Airは2013年に開始したことから、そろそろサーバーと関連するインフラの入れ替え時期に差し掛かっていることに触れ、このまま維持していると赤字事業になりかねなかった、とする。この形であれば、4000社とも言われるvCloud Air Networkのパートナーとの衝突を避けられる点もプラス材料になるという。

 VMwareのCTO、Ray O’Farrell氏は売却が発表される直前に掲載されたZDNetの記事で、クラウド戦略について次のように説明している。「われわれは2016年後半にAWSと手を組むという大きな決断をした。最高のプライベートクラウドと最大のパブリッククラウドを合体させるもので、顧客の課題を受けてのものだ」

 VMwareは2016年8月の自社イベントで「Cross-Cloud Architecture」を発表している。異なるパブリッククラウドを組み合わせてサービスを構築する「マルチクラウド戦略」を明確に掲げたものだ。vCloud Airの売却は、これに向けた一歩であり、同社のマルチクラウド戦略に拍車をかけることになるだろう。