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AI時代へElon Musk氏の回答か 脳・コンピューター接続のベンチャー

 電気自動車のTesla、民間宇宙ロケット打ち上げのSpace X、と壮大なプロジェクトを次々に打ち上げてきた起業家のElon Musk氏が新しいベンチャーを立ち上げることが分かった。次の分野は脳。人間の脳とAIを融合させる「Neural Lace」技術の開発を目指すという。まるでSFの「攻殻機動隊」のような技術の目的は、人間がAIの進化に追いつくことだという。

Musk氏の次なるベンチャーは「脳」

 「Elon Muskが人間の脳とコンピューターを結ぶNeuralinkをローンチする」という見出しでMusk氏の新しいベンチャーを報じたのは、3月27日付のWall Street Journal(WSJ)だ。同紙は、消息筋からの情報としてNeuralinkというベンチャーを報じたが、Musk氏も翌28日にツイートでこれを認め「Neuralinkについての長い情報を、約1週間後に(彼のアイデアの発表の場となっている解説サイト)WaitButWhyが扱う」とした。

 WSJによると、NeuralinkはMusk氏が追求してきたNeural Lace技術の可能性を探るベンチャーという。Neural Laceとは「人間の脳に小さな電極を埋め込み、思考のアップロードやダウンロードができる技術」だ。Financial Timesは「脳が外部のコンピューターとやりとりするための神経系のリンクを提供する人工的な頭蓋内メッシュ」と定義している。

 どんな製品を開発するのは分からないと断りながら、WSJは、まずは鬱(うつ)や、てんかんなどの脳疾患の治療に使われるものではないかと予想する。実際、Neuralinkは医療分野の研究をする企業として登録されているという。

 消息筋の話では、Neuralinkの事業概要は不明ながら、「Musk氏は(Neuralinkの)立ち上げにあたって重要な役割を果たしており、リーダーとしても大きな存在になる」。また、Neuralinkの立ち上げチームの一員というMax Hodak氏は「まだ初期で、計画は流動的」と話しているという。Hodak氏は、ライフサイエンス分野の研究者らがインターネットからアクセスできるロボットラボを提供するTranscripticを創業した人物だ。

 Neuralinkには、Hodak氏のほかにも同じ分野の研究者が参画しているようだ。ローレンスリバモア国立研究所のエンジニアでフレキシブルな電極の専門家であるVanessa Tolosa氏、脳による動作の制御を研究しているカリフォルニア大学サンフランシスコ校のPhilip Sabes氏、ボストン大学のTimothy Gardner氏の名前が挙がっている。Gardner氏は小鳥(フィンチ)の脳に小型の電極を埋め込む実験で知られており、WSJに対してNeuralinkにかかわっていることを認めたという。

 WSJはまた、NeuralinkにはFounders Fundから投資を受ける可能性があるとも記す。Founders Fundは、かつてMusk氏とPayPalを立ち上げ、さまざまなベンチャー投資を行っていることから“PayPalマフィア”とも言われるPeter Thiel氏のベンチャーキャピタルだ。