Infostand海外ITトピックス

着々と進むエンタープライズ攻略 「Google Cloud NEXT」から

マルチクラウドがカギを握る?

 GRE/SRE以外にも、効果を生んでいる取り組みがある。NetworkWorldはGoogleが改善したポイントとして、機械学習へのフォーカス、料金体系、SaaSとIaaSの統合などを挙げる。機械学習は他社との差別化にしたい部分で、会期中は動画コンテンツの識別を可能にする「Cloud Vision API」を発表した。買収を発表したKaggleも、機械学習分野のスタートアップだ。

 料金では、「Committed Use Discount」を発表した。1年/3年GCPを使うことにコミットした企業に対して料金を割り引くもので、AWSなどが提供しているものと同じだ。一方で、リージョンについては、14のリージョンに今回3リージョンが追加されたが、まだまだAWS(アベイラビリティゾーン42・リージョン16)やAzure(34リージョン)には及ばない。

 Gartnerのアナリスト、Michael Warrilow氏は「Googleは正しいことをやっており、これまで(AWSとAzureの)一騎打ちにおける3番手だったが、3社による戦いになる可能性は十分ある」とVAR Guyに述べている。Googleの今後の課題としては「エンタープライズに親和性のある存在になれるか」だと語っている。その点でSAPとの提携は重要な役割を果たすことになりそうだ。

 一方、Forbesは、Googleによるエンタープライズ拡大について楽観してはいない。「クラウドネイティブではないエンタープライズを巡る戦いは難しいものになる」「(NEXTに)参加してみて、エンタープライズがMicrosoft、AWS、IBMと比較してGoogleを選択する理由は特にないように感じた」と厳しい評価をしている。

 だが、複数のクラウドを利用する「マルチクラウド」のトレンドはGoogleを後押ししそうだ。Computerworldは「AWSは自分たちの周りにオーラを作り、大規模なパートナーエコシステムを作ることに成功した。Googleはそれを理解しているが、エンタープライズに対しマルチクラウド環境のメリットを訴えている」(Technology Business Researchのアナリスト)との見解を紹介する。このアナリストは、AWSの圧倒優位は当分揺るぐことはないとみている。

 とはいえ、クラウドは急ピッチで拡大・進化しており、ほんの数年で大きく状況が変わる可能性もある。それぞれが強みをどう生かすかの勝負だといえる。