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ティントリ、仮想化専用オールフラッシュストレージ新モデル「EC6000シリーズ」

クラウドをバックアップ環境として利用可能な新機能も

 ティントリジャパン合同会社(以下、ティントリ)は20日、仮想化専用ストレージの最新モデル「Tintri EC6000 オールフラッシュシリーズ」(以下、EC6000シリーズ)を提供開始し、ハードウェアラインアップを一新すると発表した。またOSのアップデートなど、ソフトウェア機能の強化も同時に行っている。

オールフラッシュの新モデル「EC6000シリーズ」

 ティントリではこれまで、仮想マシン(VM)を認識するストレージ(VM aware storage)として「Tintri VMstoreシリーズ」を販売しており、ハイブリッドストレージの「T800シリーズ」と、オールフラッシュの「T5000シリーズ」をラインアップしていた。

 今回発表されたEC6000シリーズは、オールフラッシュモデルながらもスケーラビリティを強化しており、1ユニットあたり最大32万IOPSのパフォーマンスと最大645TBの論理実効容量を提供。最大7500VMを1ユニットに収容できる。

 ラインアップは、1ユニットあたりの論理実効容量19~80TB、サポートVM数500の「EC6030」から、同77~645TB、サポートVM数7500の「EC6090」まで4つの製品を用意。さらに、搭載するSSDの容量と本数(13本もしくは24本)の違いで1製品あたり4モデルをラインアップしており、ユーザー企業のニーズにあわせて最適なモデルを選択可能にしている。なお搭載SSDが13本のモデルは、1本単位で最大24本までの拡張も可能だ。

 参考価格は、EC6030で1348万5000円(税別)から。

Tintri EC6000 オールフラッシュシリーズ

 なお、T800シリーズとT5000シリーズはしばらく併売されるが、今後は終息に向かうとのことで、ハイブリッドストレージはラインアップから消え、オールフラッシュモデルに一本化される。これについて、ティントリの職務執行者社長 河野通明氏は「確かに現状でもハイブリッド型を好まれる方はいらっしゃるが、フラッシュメモリの価格動向などを考慮し、今後はオールフラッシュに投資を一本化する判断だ。これによって、お客さまにより良い価値を提供していけると考えている」と述べた。

ティントリの職務執行者社長 河野通明氏

クラウドのオブジェクトストレージをバックアップ先として利用可能に

 また、ストレージOSの新版「TintriOS 4.4」と統合管理ツールの新版「Tintri Global Center 3.7」により、いくつかの機能が搭載・強化されている。

 まず、新たに「Tintri クラウドコネクター」オプションが提供開始された。これは、Tintriストレージ上で稼働するVMのスナップショットイメージを、パブリッククラウド環境へバックアップする機能で、現在はAmazon S3とIBM Cloud Object Storageをサポートしており、仮想環境はVMwareに対応する(対応環境は今後も拡充予定)。

 追加のソフトウェア、アプライアンスなどの導入は不要で、データ転送にあたっては重複排除と圧縮により容量を削減。セキュリティ面では、転送前に暗号化処理を行って安全を確保しているという。なお、リストアはバックアップ元だけでなく、任意のTintriストレージに行えるとのこと。

 Tintriストレージ上のデータ保護は、従来、Tintriストレージ筐体間でのレプリケーション、あるいはサードパーティのバックアップソフトを利用したバックアップが可能だったが、Tintri クラウドコネクターは「なるべくコストを抑えて長期保管する場合や、ディザスタリカバリ(災害対策:DR)サイトがない場合の保護に適している」(ティントリのSEマネージャー 鈴木宏征氏)とした。

 Tintri クラウドコネクターの利用には別途ライセンスが必要となり、参考価格は108万円(税別)から。

Tintri クラウドコネクター

 また、従来の2倍となる64台を1つのストレージプールとして扱えるようになり、最大2000万IOPS、40PBの論理実効容量、48万台のVMを1つの管理コンソールで運用可能にした。同一プールを構成するTintriストレージ間では状況に応じてロードバランスが行われ、自動的にVMの移動などが発生するが、この際の処理速度も改善しているという。

 さらに、サブマウントごとにクォータ設定を行えるように改善されたことで、テナントごとに必要な性能、QoS、容量などをすべてグローバルセンターから一括管理できる。鈴木氏は、「Tintriストレージでは、LUNやボリュームではなく、VM単位やサービスグループ単位での管理のため、テナントごとにデフォルトの設定を維持しつつ、特定のVMだけ性能やデータ保護ポリシーを変更する、といったことが簡単に行える」と述べ、メリットをアピールした。

 このほか、ティントリではこれまで、米Tintriが世界中で収集してきたデータを利用した分析・予測クラウドサービス「Tintri Analytics」を提供し、ユーザー企業のストレージ筐体で稼働するVMやアプリケーションについて、性能や容量の洞察と将来予測を的確に行えるように支援してきた。

 今回はこれも拡張され、従来提供してきたストレージ側の分析に加え、仮想マシンごとのCPU、メモリ使用率の分析・予測も可能になった。コンピューティングリソース側の将来予測が可能になったことから、ティントリ側では、「正しい投資判断をしていただくための機能強化だ」(鈴木氏)と強調している。

マルチテナント環境向けの機能強化
Tintri Analyticsの機能拡張

“エンタープライズクラウド”実現に向けた戦略

 なお、今回の新モデルやソフトウェアの機能強化について、ティントリ側では“エンタープライズクラウド”実現に向けたものと位置付けている。新モデルであるEC6000シリーズの“EC”も、エンタープライズクラウドの頭文字から取ったものだ。

 これに関して、米Tintri CTO兼共同創業者のキーラン・ハーティ氏は「パブリッククラウドの成長を後押ししていたのは、スケーラビリティと俊敏性だが、すべてのアプリケーションがパブリッククラウドに向くわけではない。価格面にも実は問題がある」という点を指摘。その結果、オンプレミスとパブリッククラウドのハイブリッドであるエンタープライズクラウドがその解決策として適しているとし、Tintoriでは製品・サービスによってエンタープライズクラウドの実現を支援していくとした。

米Tintri CTO兼共同創業者のキーラン・ハーティ氏
“いいとこ取り”のエンタープライズクラウド

 現在、同様のアプローチであるHCI(ハイパーコンバージドインフラ)も注目を集めているものの、ハーティ氏はTintriのユーザーであるShire社の実例を挙げ、「HCIを導入しても、ローカルオフィスやブランチオフィスのような小さなシステムではうまく動いたが、全社共通システムでは、性能が出ない、マルチデータセンターの環境をうまく管理できないなどの課題があった」と説明。

 「HCIをCisco UCSサーバーとTintriストレージの組み合わせに置き換えたことで、投資コストを1/3へ削減したほか、1人の選任管理者で管理できるようになったため、管理コストについても大幅に削減された」と、その効果を強調していた。