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【OpenWorld 2013】米Oracle、クエリを100倍高速化するIn-Memoryオプションを発表~エリソンCEOの基調講演で
(2013/9/24 14:07)
米Oracleは22日(米国時間)、米国サンフランシスコのモスコーニコンベンションセンターで、Oracle Open World San Francisco 2013を開幕した。開催初日の午後5時からは、米Oracleのラリー・エリソンCEOが基調講演を行い、数々の新製品を発表した。
Oracle Open Worldは、同社最大のプライベートイベントで、全世界145カ国から約6万人が事前登録したという。
登壇したエリソンCEOは、この日開催中のヨットレースのアメリカズカップでOracleが勝利したことを報告して会場を沸かせたあと、「今日はいくつかの新しいものを発表する」と切り出した。
クエリを100倍高速化するIn-Memoryオプション
エリソンCEOが最初に発表したのは、Oracle Database 12cのオプションとして投入するOracle Database In-Memoryオプション。クエリが100倍高速化する技術だとした。
「Oracle Databaseが伝統的に行ってきた行(row)に変わる手法として、過去5年ほど研究が行われてきたのが列(column)であるが、もっといい方法があるのではないかと考えた。それが、rowとcolumnのデュアルフォーマットであり、これによって、驚くほど高速化することができる」とエリソンCEOは切り出した。
今回発表したOracle Database In-Memoryオプションは、インメモリ・アプリケーションの拡張を実現するもので、Oracle Database 12c向けOracle Database In-Memoryオプションにより、インメモリ・アプリケーションの分析、データ・ウェアハウジング、レポート、OLTPを迅速化できるほか、ライブ・トランザクション・データをリアルタイムにアドホック分析できるという。
Column Store部分をインメモリによって高速処理。Oracle Database 12c In-Memoryオプションの導入により、既存のすべてのインメモリ・アプリケーションの実行速度が向上し、インメモリオプションの新方式によって、1秒間に10億のデータをスキャンできる。
デモンストレーションでは、高速化の効果が具体的に示された。従来のインデックスによるクエリでは、20億行の検索に1秒、インデックス化していない検索作業では1秒間に500万行と、インデックス化されていない場合には大幅に遅くなる。これに対して、インメモリによる新たな方式では、インデックス化していない検索で、1秒間に71億行以上を処理できたという。
エリソンCEOは、「既存のアプリケーションはそのまま利用できる。また、セキュリティや信頼性も同等水準を維持し、クラウド対応も行える」などとした。
12コア、3.6GHzのハイエンドCPU「SPARC M6-32」
2番目の発表が、新たなハイエンドCPUとなるSPARC M6-32である。
M6-32は、現行のM5に比べて、2倍となる12コアを持ち、3.6GHzで動作。最大32TBのメモリにより、アプリケーションとデータベース全体をメモリ内で実行できるため、かつてないパフォーマンスを実現すると位置づける。巨大なメモリに加え、オーバーヘッドや追加コストが不要な総合的な仮想化機能を備え、ミッションクリティカルなワークロードに最適な統合プラットフォーム、とエリソン氏はアピールした。
また、ビジネスアプリケーションとデータベースをすべてメモリ内で実行できることから、インメモリコンピューティングを使用することで、データベースのパフォーマンスを7倍に向上できるという。
さらに、Engineered Systemsの新たな製品である「Oracle SuperCluster M6-32」を発表した。これは、Oracle Databaseのパフォーマンスに最適化したExadata Storage ServerをSPARC M6-32サーバーに統合した製品で、Oracle最速かつスケーラビリティに最も優れた製品とする。決算、コスト管理、予測、プランニングなどのビジネスクリティカルなアプリケーションにおいて、パフォーマンスが10~20倍に向上。データベースのクエリとレポート作成が10倍に向上するほか、データベースの圧縮率が10倍に向上する。
「M6-32 SuperClusterは膨大なメモリを搭載したサーバーの登場」と位置づけた。
そして、3つ目は、エリソンCEOが「世界一速いマシン」と表現するBig Memory Machine。圧倒的な性能と拡張性を持ち、IBMの最上位製品であるP795と比較して性能は2倍、コストは3分の1だと強調してみせた。
最後が、Database Backup Logging Recovery Appliance。「このひねりのない長い名称は私が付けた」と会場の笑いをとったあと、「Database Backup Logging Recovery Applianceは、ロギングに特徴がある。ログの変化だけをみているために、ネットワークに負荷がかからない。こうした製品はこれまでに例がなかった」とした。
Database Backup Logging Recovery Applianceはクラウドサービスとしても提供するという。
また、エリソンCEOは、データセンターの未来についても言及。「いまのデータセンターはあらゆる用途に対応することを前提としている。しかし、将来のデータセンターは、用途を細分化した形となり、これによって、性能強化とコスト削減、使い勝手向上を実現する。コストパフォーマンスに優れ、信頼性の高いハードとソフトを活用し、用途に最適化した製品を作り上げることができるのはOracleの強みとなる。コストを削減し、床面積が小さいOracleの製品を使えば、消費電力の低下、メンテナンスや管理性のメリットも生まれる」などと語った。
エリソンCEOの基調講演は会期3日目となる24日午後にも行われ、ここでは米マイクロソフトのブラッド・アンダーソンコーポレートバイスプレジデントのゲスト講演も予定されているほか、それにあわせて、ハードウェアの新製品や、アプリケーション製品群の発表なども見込まれている。
富士通はAthena+を発表
初日のエリソンCEOの基調講演を前に、富士通の豊木則行執行役員常務が基調講演を行い、SPARCベースの最新CPU、Athena+を発表するとともに、Fujitsu M10の今後のロードマップなどにも言及した。
豊木執行役員常務は、「ビッグデータから価値のある情報を導き出すにはパワフルなITインフラが必要になり、これまでのITとは異なる、ビッグデータシステムを持たなくてはならない。ここで求められるのは、ハイパフォーマンスであること、柔軟な拡張性を持つという2点。富士通では、これらの要望に最適化したものとして、Fujitsu M10を投入している。Fujitsu M10は、2013年4月の発売から6カ月間にさまざまな記録を打ち立て、14の分野でトップのハイパフォーマンスを実現している。IBMの最上位製品と比べて、プライスパフォーマスは2倍となっている」と前置き。
「さらなるパフォーマンスの向上を実現するために、インメモリデータベースを採用する。性能向上のためには、ハードとデータベースのコンビネーションが必要。メモリアクセスパフォーマンスを高めるためにソフトウェア・オン・チップを採用し、富士通のハードウェア技術と、Oracleのソフトウェア技術が高い水準で融合して実現した」などと語った。
また、豊木執行役員常務は、「ビッグデータを活用する際には、スループットだけでなく、レスポンスも重要となる。スループットとは一定時間内にどれぐらいの仕事を行ったかということ、レスポンスとはひとつひとつの作業にどれぐらいかかったかを示すものである。われわれはスループットだけでなく、レスポンスを重視している。また、拡張性も同様に大切な要素。Fujitsu M10では、CPUコアアクティベーションを持っており、ローエンドのM10-1を購入しても、SPARC 64Xのコアを最大16コアまで増やして利用できる。ビッグデータ管理用の最高のサーバーである」などとした。
さらに豊木執行役員常務は、2014年にはAthena+を投入すると発表。現行のAthenaに比べて、スループットで1.3倍とするなど性能を向上させたという。
Athena+では、CMI(Coherent Memory Interconnect)という技術を採用。システム間のメモリを共有化することで、スループットを改善し、InfiniBandの1/10でトランスファーできるという。
また、2015年には次世代のAthena++を、2016年には次々世代のAthena+++を投入するロードマップを披露。「SPARCベースのCPUを今後も継続的に投入する」と語った。
豊木執行役員常務の基調講演にゲスト出演した米OracleのOracleデータベースサーバーテクノロジーズ担当・アンドリュー・メンデルソンシニアバイスプレジデントは、「富士通とOracleは、共同で開発を続け、データベースを、より速く動かすことができることに取り組んできた。その結果、M10の進化により、データベースの高速化において、ベストなプラットフォームを育てあげることができた。インメモリデータベースの技術こそ、将来のSPARCの進化を示すものとなる。今後、30年間も進化させていくことができる」などと語った。
ビデオメッセージでは、富士通の山本正已社長と、富士通のコーポレートエクゼクティブバイスプレジデントのロッド・バードリー氏がコメント。山本社長は、「M10の進化は富士通のDNAの一部となっている。M10は、Oracle Database 12cに最も適したサーバーであり、Oracleの製品を強化することができる」などとした。
一方、基調講演前には、サンフランシスコ市のエド・リー市長が登場。Oracle Open World San Francisco 2013の開催がサンフランシスコ市との提携によって開催できたことを紹介。リー市長は、「Oracleは、革新のリーダーであり、革新は技術と雇用を生むことになる。サンフランシスコでは、1850社の技術を持った革新的な企業があり、4万5000人の雇用を生み、5.6%の失業率にとどまっている。技術は、さまざまな業界に貢献しており、この街の革新的なことを考えることができる企業である」と話している。