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【OpenWorld 2013】Oracle DB In-MemoryオプションとSAP HANAとは競合するのか?

 Oracle OpenWorld San Francisco 2013(以下、OpenWorld 2013)において、米Oracleのマーク・ハード プレジデントが記者会見を行った。ハード氏は、OpenWorld 2013の初日に発表したOracle Database In-Memoryオプションなどの新製品に触れながらも、記者との質疑応答に多くの時間を割いた。そのオプションについては、「HANAと競合するものではない。そして、インメモリはわれわれの方が早い時期から取り組んできた」と語った。質疑応答の内容を紹介する。

In-Memoryオプションではプログラムをリライトする必要がない

――OpenWorld 2013において、ラリー・エリソンCEOがOracle Database In-Memoryオプションを発表したが、これは、SAPのHANAとはどこが違うのか。

質問に答える米Oracleのマーク・ハードプレジデント

ハード氏
 私はOracle Database In-MemoryオプションとHANAが比較されることは適当ではないと考えています。それは比較ができないからです。SAPでは、HANAと同じであるというようなことを言っているようですが、大きく異なる部分があります。

 というのも、HANAはプログラムを書かなくてはなりませんが、Oracle Database In-Memoryオプションは、すべてのアプリケーションがデータベースの下にありますから、リライトする必要がなく、アプリケーションを動作させることができます。

 ソフトウェアを新たに書かなくてはならないということは、大変に複雑なものであり、ユーザーにとっても負担が多い。全世界40万件のOracle Databaseのユーザーであれば、Oracle Database 12cにマイグレートして、スイッチをオンにするだけで、この機能を使うことができる。SAPの顧客がこちらに移行すれば大きなメリットを得られると考えいてます。

 もうひとつ誤解しないでいただきたいのは、インメモリの技術は、HANAが登場する以前からOracleは取り組んでいます。すでに、ExadataやExalyticsではインメモリの技術を採用していることからもそれは明らかです。

垂直統合のメリットは?

――新たなEngineered Systemsも発表しているが、垂直統合システムに対するニーズは高まっているのか。

ハード氏
 一般的なPCでも、本体だけを購入したのちに、あとから周辺機器などを購入すると大変な手間がかかります。統合していた方が、より簡単ですし、手間もかからない。価格面でも安く購入できるというメリットがあります。

 これと同じように、OracleのEngineered Systemsは、企業が求めるものを垂直統合のソリューションとして提供しています。こうしたニーズは高まっています。特に、OracleのEngineered Systemsに対する需要が高いのは、R&Dに多くの投資を行い、ハードウェアとソフトウェアのそれぞれの部分がうまく働くように開発されているという特徴があるからです。

 また、Oracleの垂直統合製品は、多くの実績がありますし、サポート体制もしっかりしているからだといえます。

――ハードウェア市場全体が縮小するなかで、Oracleは、Engineered Systemsで収益をあげることができるのか。

ハード氏
 確かにサーバー市場全体は伸びていません。しかし、OracleのEngineered Systemsは、2014年度第1四半期(2013年6~8月)には、前年同期比60%の成長を遂げたことからもわかるように、市場に浸透しています。また、Engineered Systemsを導入した顧客の40%が、初めてOracleを導入したユーザーであり、大きな成果があがっています。

――しかし、2014年度第1四半期のハードウェア全体の売上高は減少している。価格下落が影響しているのではないではないか。

ハード氏
 価格が下がったのではなく、ユニットの構成比が変わったといえます。Oracleは、2倍のパワーを提供するときに、コストを2倍にするのではなく、価格は同じで、性能は2倍。それがEngineered Systemsです。

――Engineered Systemsでは収益は出ているのか。

ハード氏
 Engineered Systemsは、比重の大きなビジネスへと成長してきており、収益もあがっています。ざっくりというと、収益の半分がハードウェアから、残り半分がソフトウェアからといなっています。積極的に市場シェアを取ろうとしていますし、今後のOracleのビジネスのなかでも大きく成長していく領域ととらえています。

ビッグデータ時代の到来はOracleにとって良いこと

――IT産業全体の成長が鈍化しているが。

ハード氏
 1年前の2013年度第1四半期には、ソフトウェアライセンスビジネスは17%の成長を遂げました。しかし、これが2014年度第1四半期は前年同期比6%増となりました。競合他社では、マイナス成長となっているところもあり、Oracleよりもはるかに低い数字です。Oracleには、すばらしい製品ポートフォリオがあり、今回も新たな製品や、機能の拡張を発表している。来年度のIT予算のなかに、こうした製品が組み込まれることを期待しています。

――Oracleは、ビッグデータ時代にどんな役割を果たすのか。

ハード氏
 ビッグデータの時代が到来することは、Oracleにとっていいことです。非構造型のデータが増加することで、Oracleの役割を果たす領域が増加する。エアバスは、100ほどのセンサーを1台の飛行機に設置し、さまざまなデータを収集しているわけですが、収集したデータは分析しないといけない。Oracleの第1四半期業績でデータベースビジネスが成長しているのは、データの圧縮を図りたい、データを管理したいという需要が増大していることの証しであり、ここで成長しています。

――クラウドビジネスにおける、HR(ヒューマンリソース)についての強みはどこにあるのか。

ハード氏
 Oracleは、HRに関して、さまざまなソリューションを提供しています。従業員を管理する機能を持った中核となるHRのソリューションとともに、それを補足する形でパフォーマンス管理の機能なども提供しています。そしてリクルートに関する機能も提供している。仮に1割の離職率があるとすれば、約10万人の社員がいる企業においては、1万人が離職し、新たに1万人を雇用する必要があります。

 このときには、単なる人事情報だけを管理するのではなく、財務部門の情報との連携も必要です。そうした機能をトータルで提供する強みというのがOracleにはある。単に垂直型の機能強化ではなく、水平型の連携ができる点がこの分野では重要だと考えています。

Oracle on Oracleによるトータルの価値

――Oracleの製品の上で、Oracleの製品を動作させる「Oracle on Oracle」の取り組みを開始しているが、この成果はどうか。

ハード氏
 Oracle Databaseを活用している企業のなかには、異なるサーバーや異なるOSの混在環境で動作させている例もあり、こうした企業がOracle on Oracleによって提供されるひとつの環境に統合することは、さまざまな観点でプラスになるはずです。

 そして、Oracle on Oracleは、サーバーとデータベースという関係だけでなく、E-Business SuiteやPeople Soft、JD Edwardsといったアプリケーションを最適な環境で動作させることにもつながるといえます。

――Workdayのような新興企業が成長するなかで、Oracleはどう対抗するのか。

ハード氏
 新興企業が成功するのは大変いいことであると考えています。人事および財務管理のクラウドサービスを提供するWorkdayとSalesforce.comが機能連携を強化しましたが、それに対してOracleは、セールスの自動化の分野においては、Eloqua(エロクア)を買収し、Oracle製品との連携を強化することになります。セールスフォースの分野は、シンプルな操作性が求められているが、逆に複雑性が増している状況にあります。

 一方で、ブランドに対する忠誠心も変わりつつあります。また、いずれは企業が求めるすべての要素をまとめ上げなくてはいけないという動きも出てくるでしょう。いかに効率性をあげるかという点がこれからの課題であり、それをもとに、ユーザーの革新を手伝わなくてはならないと考えています。

大河原 克行