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「この提携は始まりにすぎない」~MicrosoftとOracleが記者会見、協業の進ちょくを説明
(2013/9/30 11:52)
米Oracleと米Microsoftによるクラウド領域における提携に関して、米Oracleのビジネス開発部門バイスプレジデントのJavier Cabrerizo氏と、米MicrosoftのWindows Azure担当ゼネラルマネージャのSteven Martin氏が、これまでの進ちょく状況などについて発表した。
会見は米Oracleが、米国サンフランシスコで開催したOracle OpenWorld San Francisco 2013(以下、OpenWorld 2013)の会場で行ったもの。当初は米Microsoft単独での会見が予定されていたが、急ぎ、米Oracle側からもバイスプレジデントが出席し、両社によって協業の進ちょく状況に言及した格好だ。
MicrosoftとOracleの4つの提携分野
2013年6月に米Microsoftと米Oracleによって発表された、クラウド領域における提携は大きく4つの分野に及ぶ。
ひとつは、Microsoftの「Windows Azure」および「Windows Server Hyper-V」で、Oracleの製品を稼働させること、2つ目には、Windows Server上でOracleのソフトウェア製品を稼働させている企業は、そのままWindows Azureでも、「ライセンスモビリティ」として活用できること、3つ目には、Oracle LinuxをWindows Azureに提供すること、そして、Microsoftは、フルライセンス、フルサポートのJavaをWindows Azure上で提供することだ。
会見の冒頭に、米MicrosoftのWindows Azure担当ゼネラルマネージャのSteven Martin氏は、「われわれは、2012年からこの提携に向けた話し合いを開始していた。顧客がすばらしい体験を得るためにOracleの技術を、MicrosoftのAzureの上で動作させるということは、自然な流れであった。重要なのは顧客中心であるということ。OracleのワークロードをHyper-Vで走らせたい、Microsoftのクラウドのテクノロジーを使いたいということは、まさに顧客が望んでいたことであった」とした。
また、米Oracleのビジネス開発部門バイスプレジデントのJavier Cabrerizo氏は、「OracleとMicrosoftは長年のパートナーシップを持っており、これをベースに提携を進めてきた。Windows AzureやHyper-Vは、Oracleにとっても重要なプラットフォームになる。JavaやLinux、Oracle Databaseといった技術をこうしたプラットフォームで走らせることで、顧客の選択権を増やすことができる」と述べた。
Windows AzureギャラリーからOracleの技術を提供す
今回のOpenWorld 2013では、開催3日目に、米Microsoft クラウド&エンタープライズ担当コーポレートバイスプレジデントのBrad Anderson氏が基調講演に登壇。そこでOracle Database、Oracle WebLogic Server、JavaといったOracleの技術を、Windows Azureギャラリーから提供することで、顧客が使えるようにしたことを発表した。
「windowsazure.comから、Oracle製品のイメージのリストを見ることができ、そこから導入が可能になった」(米MicrosoftのMartin氏)。
また、Windows Server上で稼働しているOracleソフトウェアのライセンスを、そのままWindows Azureで利用できる「ライセンスモビリティ」も正式に導入した。
「Azureの顧客は、バーチャルコアの分だけを稼働させることが可能になる。その際には自らが持つライセンスを活用できるとともに、仮想CPUごとにライセンス料金を支払うこともできる。これが両社の提携によって提供するクラウドライセンスモデルとなる。クラウドの環境のためにCloud License for Oracleというものがあり、これを通じて認定を受けてもらうが、オンプレミスとのライセンスモデルと基本的には変更がないと考えてもらっていい」(米OracleのCabrerizo氏)と語る。
一方、SQL ServerをOracleのクラウドで使用できるように検討しているのかどうかという将来計画については、「Oracle Public Cloudでは、現時点ではOracle Databaseを走らせるということになる。いまはそれ以上は話すことができない」(米OracleのCabrerizo氏)としたほか、Oracleが発表したばかりのクラウドサービス「Database as a Service」をAzure上で提供することについては、「これまでにも要望をとらえながら、変更してきた経緯はある。市場の状況を見ながら対応していきたい」とし、「Database as a Serviceのベースになるのは、Oracle Database 12cであり、マルチテナンシー機能を搭載している。その視点でとらえても、将来的には対応が可能といえる」(米OracleのCabrerizo氏)と前向きな姿勢をみせた。
また管理環境においては、「われわれにとって重要なのはヘテロな環境に対応することである。Windows Serverの上でOracle Databaseが動作するように努力をしてきたのもそのひとつである」とし、「管理ツールも同じである。ヘテロな環境において、多くのコンポーネントをSystem Centerで管理することになる。System Centerでは、Azure以外のクラウドもサポートすることができ、VMwareに関しても、Windows Server以外で動作するものまで、System Centerで管理することができる」(米MicrosoftのMartin氏)などとした。
この点については、米OracleのCabrerizo氏も回答。「Oracleも同様に、Oracle Databaseを走らせるときに、さまざまなプラットフォームに対応することを前提としている。Oracleとしても管理ツールを提供しており、それを活用することができる」と述べた。
今回の提携は始まりにすぎない
では、2社の提携は今後どうなるのか。
「この提携は始まりにすぎない。グローバルに展開し、顧客の要求に対して応えていかなくてはならない。マーケティングも重要である。お互いのインストールベースにどう提案していくかということも考える必要がある」と、米MicrosoftのMartin氏は語る。
続けて、「Microsoftは、クラウドの顧客に対して、Oracle Database、Oracle WebLogic Serverを使って、すばらしい機会を提供できると考えている。Microsoftから見れば、今後、どのようなペースでイメージが、どんな形で適用されていくのかを見る必要があり、これによって、Oracleに対するライセンスの支払いをどれだけ拡大できるのかがポイントになる」とする。また、Oracleでは、「Azure上でどれぐらいのライセンスが適用されるのかが鍵。多くの顧客に使ってもらうことで、インストールベースが増加し、収入が増加することになる」(米OracleのCabrerizo氏)と語った。
Microsoftにとっては、クラウドサービスにおけるAmazonへの対抗、仮想分野でのVMwareへの対抗という点で、Oracleとの提携は大きな意味がある。また、OracleにとってもLinuxやJava、Oracle Databaseの市場を広げ、顧客の選択肢を広げるという点でも意味があるものだといえよう。
発表から3カ月ということで、まだ提携の成果を推し量るには早いが、着実に協業が進展しているのは確かのようである。