ワークライフバランスと効率化を実現する「ファストワーク手法」のススメ【最終回】

働きやすさを実現した、その先に


 第3回までにご紹介したファストワーク手法が運用に乗っている組織では、「従業員にとって→勤務に自由度がありプライベートとの調整がしやすいので助かる」「会社にとって→残業が減ることによる人件費削減、整理整頓による事務所・備品費の削減」などの効果が生まれます。まさに「従業員も会社もwin-win」という夢のような状態です。

 でも、ここで改善は終わりではありません。さらに目指す先があります。


雇用流動化を促進しよう

 属人化の問題が解決されているので、ある特定の人がやらなければいけないという状態ではないはずです。別の人でも作業が出来る訳ですから、非正規社員に作業してもらいましょう。それも、作業量に応じて確保する要員数を流動化させることがポイントです。

 難しく感じるかもしれませんが、スーパ-などでは何十年も前から行なっていることです。連載第3回で言及したように、マネジメントが効いているならば現状の作業量や短期的な予測は充分出来ます。よって、事務の現場でも行なえるはずです。

 組織に仕事を合わせるのではなく、仕事に組織を合わせる。こうして実現した全体最適化により、より少ない人数でのオペレーションを実現するのです。


余剰人員にも活躍の場がある

 雇用流動化をしようとすると必ず出てくるのが、余剰人員の問題です。特に自分が余剰人員になると心配している人は、ことさら抵抗します。管理監督職者に文句を言うのは当たり前。憶測の情報を周囲に言い回り、業務改善の促進の邪魔をすることもあります。当然ながら、管理監督職者や業務改善賛成派からみると邪魔者で、良い印象はありません。「あいつは使えない」などとレッテルを貼られてしまったりすることもあるかもしれません。

 でも、本当に「使えない」のでしょうか?

 私はそうは思いません。別の業務で活躍して頂ければ良いと思ってます。もっというと
新規顧客開拓、新規事業企画などを担当していただき、会社の業績向上・会社組織の存続を図るのです。

 日本国内はマクロ的には急速に市場が縮小しています。名目GDPは1997年の523兆円から、2011年は468兆円と、僅か14年で10%以上もの減少です。このような背景下では、コスト削減だけでは組織はもちません。新規顧客獲得、新規事業開発を行い、第2・第3の事業の柱を育てなければ企業が存続できないのです。そのための要員として尽力いただくことは大変意義のあることです。そのように理解して頂くようにコミュニケーションを図りましょう。


さらに組織をコンパクトに

 雇用流動化を実現し、余剰人員には別の仕事をして頂ける状態まできたら、いよいよ仕上げです。

 それは、仕事の依頼を営業や担当を通すのではなく、お客様から直接システム上で行なって頂くようにフローを変えるのです。

 例えば、給与業務でしたら以下のような状態です。

<従来>
 勤怠情報は紙に記入→給与担当者へ渡す→給与担当者はチェック後、給与システムへ入力→計算処理

<改善後>
 勤怠情報はシステムに入力→計算処理

 これはあくまで一例ですが、このように改善する事で必要な事務作業者はさらに削減できます。

 また、アウトソーサの積極活用も組織のコンパクト化には非常に効果があります。法律上自社で行なわなければいけないものを除いて、かなりの業務はアウトソースできます。筆者は、給与部門在籍時代、ブラジルに給与業務をアウトソースできないか考えました。

<従来>
 夕方変更情報を収集→深夜まで残業して給与計算を実施する

<ブラジルへアウトソースできれば>
 夕方変更情報をブラジルへ渡す→そのまま帰宅→翌朝には出来ている

 なんて夢のような状態が実現できるかもしれないのです。


おわりに

 繰り返しになりますが、共働き、子育て、介護、そのうえに長時間労働――全てをこなすのは極めて困難です。そして、多くの国民が大変な思いで働いている割には経済は成長していません。頑張りで実現できることも、たかが知れています。ならば、根性論や懐古主義はひとまず忘れて、ムリムダに起因する問題の解決を図ってみては如何でしょうか?

 本特集でご紹介してきた「ファストワーク手法」を導入すると、ワークライフバランスの実現が可能になり、働きやすい職場に変える事ができます。と同時に、効率化をも実現でき、担当者にも経営者にもおすすめの作業手法です。

 お客様や従業員間の情報共有には、最近はクラウドでセキュリティが確保され、かつ安価なサービスが出始めてます。サイボウズの「kintone(http://kintone.jp)」などはその一例でしょう。

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 詳細は筆者(サイボウズ株式会社 毛海 直樹 naoki-keumi@cybozu.co.jp)までお気軽にお問合せください。

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