ワークライフバランスと効率化を実現する「ファストワーク手法」のススメ【第3回】

手法を定着させるために守るべきこと


サイボウズ株式会社 毛海直樹氏

 共働き、子育て、介護、そのうえに長時間労働――。全てをこなすのは極めて困難です。昭和の時代は専業主婦やパートが多かったので、亭主が会社入り浸りでも何とかなりました。しかし、少子高齢化が進んだ平成の今は無理。板挟みになって心の病気になってしまう人も珍しくありません。連載でご紹介する「ファストワーク手法」を導入すると、ワークライフバランスの実現が可能になり、働きやすい職場に変える事ができます。と同時に、効率化をも実現でき、担当者にも経営者にもおすすめの作業手法です。

 第3回は、「ファストワーク手法を運用に乗せて定着させるたった1つの守るべきこと」。ファストワーク手法を運用に乗せて定着させるには、絶対に守るべきことがあります。それは「決めたことの順守」です。一度決めたことでもだんだん守られなくなり、目的を果たせなくなることはよくあります。

 ファストワーク手法による働きやすさ・効率化を実現するには、現場の実態に即した業務フローやマニュアル通りの作業の徹底が不可欠です。作業依頼ルールを順守し、作業計画やルールを変更する際は、現場の判断ではなく、決裁者などのしかるべき人間が判断するようにします。属人化した組織では、ここが苦しい所ですが乗り越える事で、従業員にも組織にも嬉しい業務改善効果が生まれてきます。



守ることは難しい

 「自然消滅」。こうなってしまった組織内ルール、皆さんの組織でも沢山あるのではないでしょうか? 出張旅費のルール、身上変更申請のルール、勤怠締めのルールなどの業務上取り決めたことから、上司部下の業務報告ルールのようなローカルルールまで、皆さんの組織は決められたルールに基づいて運用されているでしょうか? 個人が勝手にルールを守らないのはもってのほかとしても、業務上の都合から守られなくなるケースもあります。

 給与部門にいて、よくあったのはルール破りを承知で依頼されること。

 曰く「従業員に迷惑がかかるから」
 曰く「まだ間に合うでしょ、何とか対応して」
 曰く「これだけだからお願い」

 こういうことは対応せず、ルール通りに運用すれば、その分、担当者は余裕が生まれます。計算結果のチェックももう一度、もう二度できたかも知れません。もちろん依頼する側もそれを承知なのですが、組織人なので無理を承知で依頼してきます。受ける方も依頼者の気持ちがわかるので無理して受けてしまいがち。こうしてムリが蓄積していくのです。


決めた事を守らない恐さ

 「先方の担当者から無理に依頼された事項、残業頑張って処理したよ」

 これは筆者は大問題だと考えます。部下がこうしたら怒ります。なぜだと思いますか?

・時間外労働のリスク
・人件費増のリスク
・例外的にやることによるミスのリスク
・ムリが蓄積して周囲に悪影響を及ぼす程のモチベーション低下リスク

 などのリスクがあるからです。

 依頼したい作業があるのなら上司を通じてキチンと依頼する、上司のマネジメントのもとで部下が作業する、それなら問題ありません。でも、実際の現場ではマネジメントが機能せず、担当者どおしで物事を進めてしまう傾向があります。一見スピード感があるように見えますが、大間違い。数年もしないうちに、疲弊した従業員が発生しだし、心の病気になったり、退職したいという若手が出だしたりします。仕事の品質も上がりません。目の前の作業をこなすことに精一杯でやっつけ仕事にになるからです。

 決めた事を守らないことにはこんな恐さがあるのです。


決めた事の順守

・マネジメントをしっかり機能させ、本当に必要な作業の遂行に部下の工数を集中させる。
・部下は与えられた作業をしっかり考え、高品質な成果を挙げる。
・整理整頓・業務フロー・作業マニュアルをしっかりやる。

自分あての依頼作業を確認する画面(サンプル)

 これがファストワーク手法を運用に乗せ定着させるために守るべき事です。

 ファストワーク手法による働きやすさ・効率化を実現するには、現場の実態に即した業務フローや、マニュアル通りの作業の徹底が不可欠です。作業依頼ルールを順守し、作業計画やルールを変更する際は、現場の判断ではなく決裁者などのしかるべき人間が判断するようにします。属人化した組織ではここが苦しい所ですが、乗り越える事で従業員にも組織にも嬉しい業務改善効果が生まれてきます。働きやすさと効率化が同居する素晴らしい組織として――。




 次回は「働きやすさを実現した、その先に――」がテーマです。第3回までのファストワーク手法が運用に乗っている組織では、「従業員にとって→勤務に自由度がありプライベートとの調整がしやすいので助かる」「会社にとって→残業が減ることによる人件費削減、整理整頓による事務所費の削減」といった効果が生まれます。その先の取り組みについて紹介する予定です。

 詳細は筆者(サイボウズ株式会社 毛海 直樹 naoki-keumi@cybozu.co.jp)までお気軽にお問合せください。

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