純国産クラウドサービス「ニフティクラウド」が取り組む、“普及への次の一手”


 ニフティがクラウドブランド「ニフティクラウド」を2010年1月に立ち上げてから、1年10カ月が経過している。その間、バズワード扱いされることもあった「クラウド」という言葉は、しっかりとIT業界に定着してきた。

 しかし、「当社の調査などでも、実際にクラウドを活用している企業は、まだ一部にとどまっている」(クラウド事業部 クラウド営業部の新井直樹課長)のが現状で、クラウドの普及のために、今後も継続して取り組んでいく必要があるという。

 では、ニフティは具体的にどんな方策を考えているのだろうか。その“次の一手”を聞いた。

 

パートナーとのエコシステムにより、必要な要素をすべてそろえていく

クラウド事業部 クラウド営業部 新井直樹課長(左)、クラウド事業部 クラウドビジネス部の渡邊太郎氏(右)
ニフティクラウドのポータル画面。イメージ配布機能では、この中のカスタマイズイメージを配布可能になる

 ニフティクラウドでは、2010年1月のスタート以来、ファイアウォール機能の追加、APIの拡充、管理用コントロールパネルの機能強化、SDKの提供拡大、ネットワーク転送料金の見直しなどなど、多くの強化や見直しを実施し、ユーザーによりよいサービスを提供できるようにしてきたという。

 そうした中で、2011年8月に発表された「イメージ配布機能」は、これまでの強化とは毛色の異なるものだった。この位置付けを、ニフティでは「これまでの拡張は、ニフティクラウド自身の魅力を深めるためのもの。しかしイメージ配布機能は、パートナーが付加価値を高めるための仕組みとして拡張した」(クラウド事業部 クラウドビジネス部の渡邊太郎氏)と説明する。

 現在、ニフティクラウドではIaaS、つまりインフラ部分を中心にクラウドサービスを提供している。しかしITシステムを動作させるためには、OSやハードウェアリソースといったインフラだけでなく、さまざまなミドルウェアやアプリケーションが必要になるのは、いうまでもない。

 もちろんニフティ自身でも、こうしたミドルウェアやアプリケーションを提供することは可能だが、「当社1社ではできることが限られている」(新井課長)のもまた事実。そこでニフティでは、パートナーとの“エコシステム”を作り上げ、「IaaSだけでなく、ミドルウェアやアプリケーションなど、システムで必要な要素を含めてサポートすることで、エンドユーザーの支援とビジネスの拡大を図っていこう」(新井課長)と考え、イメージ配布機能を用意したのだという。

 この機能は、ニフティクラウドのパートナーが、設定情報などを含んだサーバーイメージをテンプレートとして保存しておき、それをニフティクラウドのユーザーへ配布できるようにするもの。例えば、ISVが自社の商用パッケージを含んだイメージを用意しておき、ユーザー企業、あるいはインテグレーションを担当するSIerなどへ提供できるようになる。

 こうした展開が可能になると、ISV側では商用パッケージの販路としてニフティクラウドを使えるようになるし、ユーザー側では、導入や設定など、環境構築にかかる手間を省けるようになるため、双方にメリットを提供できるのだ。またニフティにとっても、「お客さまがチューニングする必要なく、素早く構築できるといった、より付加価値の高いサーバー環境をお客さまに提供できる」(渡邊氏)ため、サービスの差別化につながる。


 現在、すでにディアイピィがメールアーカイブソリューション「MailArchivaパブリックイメージ for NIFTY Cloud」を提供しているほか、10数社と調整中。渡邊氏は「これまでニフティクラウドでは、インフラの調達までをスピード化するところまでにとどまっていたが、こうしたソリューションにより、カスタマイズされたサーバーがインストールされ、検証まで済んだ環境を5分でご用意できるようになる。よりスピードの速い構築作業が可能になるのは、(お客さまにとっての)大きなメリットだ」と述べ、今後の展開に期待を示していた。

 また別の側面では、クラウドインフラのOEMビジネスも展開を始めた。第1弾としては、ソネットエンタテインメント(So-net)へ「So-net クラウド」の基盤を提供することが発表されており、こちらもすでにサービスを開始している。加えて、クラウドストレージサービス「ニフティクラウドストレージ」においても、アプレッソ、ソルクシーズ、マクニカネットワークスとの連携が発表され、ビジネスが動き出したところ。

 こうした、パートナーとの取り組みにより、クラウドビジネスを活性化したいという取り組みはまだ始まったばかりだが、単なるインフラとしてのクラウドサービスではなく、さらなる価値が得られるのであれば、ユーザーにとっても損はない。今後のニフティクラウドの進化に注目していきたいところだ。

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