特別企画

子どもの学ぶ意欲への影響は?――筑波大附属小の公開ICT授業を見てきた

算数「図形を敷き詰められるか」に挑戦

 引き続き行われた算数の授業では、他クラスの生徒40名と入れ替え、教師も算数担任の中田寿幸先生にバトンタッチ。授業の内容は、平面上に多角形をすきまなく敷き詰められるかを考えるというもので、いわゆる「平面充填」と呼ばれる問題だ。

 公開授業前に三角形と四角形については学習済みで、三角形と四角形であればどんな形でも敷き詰められるということを子どもたちは学んだ。では、五角形、六角形……と敷き詰めることはできるだろうか。生徒たちが「正五角形、正六角形なら変の長さが等しいのだから敷き詰められるのでは」「偶数角形はできて、奇数角形はできないのでは」といった考えを出したのが、前時までの状況。

 公開授業は、タブレットと電子黒板、さらに「スクールプレゼンター」というツールを使って実際に確かめてみようという内容だった。「スクールプレゼンター」は内田洋行が提供する、授業で試用できる教具スタンプなどを多数収録したペイントのようなツール。この画面上に正五角形をコピーして敷き詰めていく。

 「正多角形」に限定してこの問題の答えを先に書くと、実はすきまなく敷き詰められるのは正三角形、正四角形、正六角形のみで、それ以外の正多角形は敷き詰められない。一生懸命、正五角形を敷き詰めようとする生徒たちだが、うまくいかない様子が電子黒板上にも表示されている。

正五角形を敷き詰めている様子
正六角形を敷き詰めている様子
正五角形はすきまができてうまく敷き詰められない

 なぜ、正五角形は敷き詰められないのか。ある生徒が前に出て、こんな説明をした。「正五角形の内角の和は540度。1つの角は108度。これを敷き詰めようとすると、3つ並べたところで108×3=324となって、36度のすき間ができる。ここに108度は入らないので、すきまなく敷き詰められない」。

 360÷108=3……36。余りが出るから敷き詰められないと考えたようだ。一方、正六角形は1つの角が120度。3つ並べるとちょうど360度となるため、きれいに敷き詰められる。ここで「でも、正八角形や正十角形のような、偶数の図形なら敷き詰められるんじゃない?」と意見が出た。

 再びスクールプレゼンターでの試行錯誤の後、ある生徒が「敷き詰められるためには、360÷1つの角度が割り切れなくてはダメ。60度(正三角形)、90度(正方形)、120度(正六角形)以外で360を割り切れるのは180しかないけど、180度は直線だから(論外)。なので、偶数でも奇数でも他の図形は敷き詰められない」と論破してみせた。これには会場からも思わず「すごい」と感嘆の声が漏れていた。

ある生徒が理論を展開した時の板書

(川島 弘之)