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Universal Windows AppsやOSの一部無償化で逆襲なるか? Build 2014からMicrosoftの戦略を見る

無償化が大きなターニングポイント

 基調講演では、さらりと説明されたが、今後のMicrosoftにとって大きなターニングポイントとなるのが、OSの無償化だ。Microsoftは、Windows PhoneやWindows 8.1(Windows RTも含む)に関して、画面サイズが9インチ未満の携帯電話、タブレットに関しては、OSを無償で提供することにする。さらに、無償で提供されるOSには、Office 365の1年間のサブスクリプションが付属する。

 Microsoftにとっては、メジャープレーヤーになれていない、携帯電話やタブレットに関して、ギャンブルに出たといえるだろう。

 今までは、ソフトウェアを有償で提供することがMicrosoftの基本戦略だった。しかし、アップルのiOS(iPhoneやiPad)、GoogleのAndroidがメジャープレーヤーとなっている携帯電話とタブレットのマーケットで追い上げていくためには、OSのコストを無償にしても出荷台数を増やしていく必要がある、という判断だと思われる。

 携帯電話やタブレットの出荷台数が増えれば、Microsoftのアプリストアを経由して、多くのユーザーがアプリを購入することになる。アプリが購入されれば、価格の約30%が手数料としてMicrosoftに入るので、そちらでの収入を見込んでいるのかもしれない。

 また、無償版のWindows Phone/Windows 8.1にOffice 365の1年間のサブスクリプションが付いているのは、次年度は有償で利用してほしいという戦略なのだろう(米国では、個人向けにOffice 365 Home Premiumや学生向けのOffice 365 Universityなどのエディションが用意されている)。

 日本国内では個人向けのOffice 365は提供されていないが、OSが無償化され、Office 365の1年間のサブスクリプションが付いた9型タブレットが日本国内でも販売されるようになれば、Office 365の個人向けサービスも国内で始まることになるだろう。

 Microsoftでは、Office 365の魅力を増すために、iPadで利用できるOffice for iPadを提供したり、iPhoneやAndroid携帯電話(タブレットも)などに向けたアプリも提供したりしている。OfficeがiOSやAndroidをサポートすることで、Office 365を利用するユーザーを増やし、ひいてはWindowsタブレットやWindows Phoneを利用するユーザーを増やしていこうという戦略だろう。

 なお、OSの無償化に関しては簡単に発表されただけのため、いつごろから始まるのか、無償化されるOSに制限はあるのかなど、分からないことが多い。一部では、Microsoftが展開している広告ビジネス(Microsoft Advertising)と連携して、OSやブラウザなどに広告を表示することを考えているという話もある(GoogleによるAndroid提供の条件として、Googleの検索エンジンやGoogle Mapなどのサービスをインストールすることになっている)。

 ただ、「現在負けているマーケットで戦うためにOSを無償化して、シェアを広げていくため」とはいっても、OSがずっと無償とはいかないのではないか、と筆者は考えている。まだまだわからないことばかりだが、継続して動向を見ていきたい。

画面サイズが9インチ以下の携帯電話やタブレットに対しては、Windows OSは無償で提供される

(山本 雅史)