特別企画

ソフトウェアの“カイゼン”活動が重要なワケ~ネオジャパンに聞く、新バージョンの作り方

 ネオジャパンは2012年12月、それまで主力製品として提供してきたグループウェア「desknet's」をリニューアルし、新製品「desknet's NEO」の提供を開始した。実に10年ぶりとなるこのリニューアルでは、新しいコンセプトに基づいた新機能が追加されたほか、さまざまな部分が改良され、この先を見据えた次世代の製品となって生まれ変わっている。

 そして、1年強が経過した2014年2月に、新バージョン「desknet's NEO Version 2」がリリースされた。大きくユーザーにアピールできる点としては、ワークフローやコミュニケーション機能の改良、グローバル対応などが盛り込まれているのだが、実は、細かいところを含めると100項目以上、文言やアイコンの変更などまで合わせると1000項目以上にわたる改善が行われたという。

 今回は、この新バージョンが持つ意味を、ネオジャパン マーケティング統括部 プロダクトマーケティング担当の山田志貴氏に聞いた。

必要があれば機能を戻してさらに進化させる

ネオジャパン マーケティング統括部 プロダクトマーケティング担当の山田志貴氏

 製品は「提供して終わり」ということはなく、基本的にはその後も改善を続けていくのが普通だ。ソフトウェア製品ではそれが顕著であり、ネオジャパンでも、メーカー側の新しい提案を盛り込みつつ、ユーザーからのフィードバックを受けた改善作業を続けている。desknet's NEOでも、製品提供後間もない2013年3月から、次のバージョンに向けた議論が始まっていた。

 特に今回は、desknet's NEOがそれまでのdesknet'sの延長線上にはあるものの、バージョンアップではなく、さらに先を見据えた新製品としてリニューアルされていただけに、こうした作業は非常に重要なものだったとのことで、実際に、ユーザーからもたくさんのフィードバックが寄せられていた。

 「例えば、desknet's NEOを提供してすぐ、お客さまから要望としていただいたのが、『ほかのサイトへのリンクはどこに消えたのか』という点でした。グループウェアをポータルとして使う、という位置付けで提供してきましたので、社内システムへのリンク集としての役割を担っているケースが多かったんですね。そこで以前のdesknet'sでは、画面上部にリンクメニューとして使えるタブを設けていたのです」(山田氏)。

 しかし、「『タブブラウザが主流になった今では、見せ方を変えてもいいのではないか』という判断で、desknet's NEOでは画面左側のメニューの奥にこれが隠れてしまった」(山田氏)ため、ユーザーからは強く改善を要求されるようになった。

 そこでVersion 2では、タブレット端末のタッチ操作も意識したわかりやすい「パレットメニュー」を画面左側に用意し、その中で、リンクにたどり着きやすくする工夫をした。「今のディスプレイでは、画面が横に広がり縦が狭まっているため、以前のように上部にタブを置きたくなかった。そこでたどり付いたのが、このメニューでした」と山田氏は話す。

 このように、以前とは同じものではないにしろ、ユーザーの要望に添って機能を『復活』させ、さらに、そこに追加のメッセージを載せることで、ユーザビリティの向上を図っているのだ。

旧desknet'sのリンクタブ。画面上部に位置している
desknet's NEO(Version 1)では、画面横のメニューの中に移動したが、場所がわかりにくくなってしまった
Version 2では、パレットメニューでは直感的になっており、探しやすく改善されている

 同様に、Version 2で機能を一部戻してさらに改善したものに、インフォメーションのアクセス権管理がある。もともと、インフォメーションの利用権限は「参照」「追加」「変更」「削除」に分かれており、「変更」「削除」については他の人が登録したものについても変更や削除を行えた。

 「これを、desknet's NEOでは『作成』『フルアクセス』の2つで足りると思ってまとめてしまったんです。しかし、変更してもらうために『フルアクセス』権限を与えてしまうと、他人のものもどんどん消せてしまうため、誤削除が頻発してしまった。メールと同じように、自分の目の前から消えるだけだと誤解されてしまったようなんですが、削除してしまうと大本からも消えてしまいます。そこでVersion 2では、『変更』『削除』の権限を復活させるとともに、メニューを改良して削除ボタンにたどり着くための手間を増やし、すぐには消せないようにしました」(山田氏)。

旧desknet'sの権限設定画面
desknet's NEO(Version 1、左)では、フルアクセス権限で削除ボタンを押してしまうと、簡単にインフォメーションを削除できてしまっていた。Version 2では、この画面から削除ボタンをなくすとともに権限設定を改善し、利用しやすくしている

 もちろん、メーカー側ではユーザーの使い勝手を良くしようと思って機能を改善しているのだが、実際のユーザーが必ずしもその通りに使うとは限らない。これは、どの製品でもよくあるケースだろう。しかし、それがまずいと思ったらすぐに対応する、こうした迅速さは評価できるところではないだろうか。

細かな改善の積み重ねで、さらなる使い勝手の良さを実現

 もちろん、これまで実現できていなかった改善を達成した部分もたくさんある。その好例が、インフォメーションを部署名だけで掲示できるようにした点だ。

 「特に規模の大きなお客さまで多かった要望です。従来は、インフォメーションを掲示する際には個人名が必ず表示されてしまったので、『経理部・石井』のように個人名が出てしまっていました。そうすると、本来は部署の代表に問い合わせてほしいものだったとしても、石井さんに連絡が集中しまうことがあるわけです。また、部長に頼まれて新入社員が通知する、といった場合でも、本来は頼まれただけの個人名が掲示されてしまいますから、都合が悪かったんですね」。

 これは、グループウェアが個人用のツールである、という設計思想に基づくものだろう。スケジュール管理が中心だった10年前のグループウェアは確かにそれで良かったのかもしれないが、利用法が変わってきている現在では、逆に不適切な部分になってしまっていた。それをあらためることで、より利用実態に合わせた使い方が可能になっている。

部署名でインフォメーションを掲示できるようになったのも大きな改善点。なお、インフォメーションの中に画像を簡単に張り込めるようにしたのも、今回のVersion 2からだ

 アドレス帳の改良についても、同じことがいえる。従来のアドレス帳では、共有しようとすると全社共有しかできなかったのだが、今回は部署ごとなど、細かい単位での共有が可能になった。

部署など、全社レベルよりも細かい単位でのアドレス帳の共有に対応した

 共同作業という点では、ポータル画面に、自分以外のスケジュールを張り付けられる仕様になったことも大きい。個人が仕事を進める上では、自分のスケジュールだけでなく、部署のキーマンや上司などの特定の個人だったり、あるいは部署全体のスケジュールや全社のスケジュールだったりを参照することがあるだろう。こうした他の部署・人のスケジュールの参照がひんぱんだった場合、いちいちスケジュール画面からたどって見に行くのではなく、自分のポータル画面に張り付けて見られるようにしておけば、仕事の効率がだいぶ改善される。

自分以外のスケジュールをポータル画面に張り付けられるように

 またdesknet's NEOの設備予約では、一般ユーザーからの申請を管理者や上司が承認して初めて予約できるようになる「承認機能」が搭載されている。ところが、申請が届いたことを通知する機能がなかったため、承認者は毎日、申請が来ているかどうかを見に行かないといけなかった。今回は通知機能が追加されたことで、この承認機能がずいぶんと使いやすくなっている。

 スケジュールでも、他人に登録されたスケジュールを消す機能が追加され、例えば会議から自分だけが抜ける、といったことに対応。

 文書管理では、最近更新されたファイルの一覧をポータル画面から確認することができる。これは一見、何でもない機能のようだが、「文書を直した時に全社にそのことを配信したい、という要望があり、メールで通知する機能を以前から搭載していていました。しかし、メールは見逃されやすいコンテンツですし『いちいちメールは送りたくない』という声もあったため、この機能を搭載したんです」と、山田氏は理由を説明する。

設備予約の申請(画面右上の黄色いメモ)が通知されるようになったため、格段に利便性が向上している
文書管理のところに、更新されたファイルが表示されている

 こうした機能は、言葉にすると地味で、本当にちょっとしたことのように見えても、すべて実際のユーザーからの要望をもとに検討し、改善された部分。そのため、グループウェアの使い勝手を向上させる上で、かなり役立っているのだ。

グループウェアは単なるスケジュール管理のツールではない

 ネオジャパンでは、当然のことながら、さらに先を見据えた取り組みをしている。ユーザーからのフィードバックを反映していくことはもちろん重要だが、それだけではグループウェアは進化しないからだ。

 山田氏は「成熟した市場といわれているグループウェアだが、実はまだ市場の半分程度にしか導入されていないのです。つまり、まだまだ可能性がある。それなのに、なぜ成熟していると思われているのかといえば、それは大部分の人にスケジュール管理ツールだ、と認識されているからでしょう。そうではなく、グループウェアとは人と人とのコミュニケーションを良くするツールなのです」と述べたが、desknet's NEOでも、この方向で機能強化が行われてきた。

 一番目立つものは「ネオツイ」だろう。一見、企業向けTwitterといった印象のこの機能だが、山田氏は「例えば同僚をお昼に誘う場合、メールで誘うことはあっても、グループウェアで誘うことは普通ないですよね。でも、管理者から見れば、どちらも管理できる同じものなのです。そこで、グループウェア利用にあたっての敷居を落とすために導入されたのがネオツイでした。グループウェアをあまり“フォーマルな場所”としてとらえてほしくなかったので導入された、緩いインフォメーション的な機能なのです」と説明する。

 この意図はうまく伝わったようで、実際に「結構、何気ないことでコミュニケーションに使っていただいている」といった手応えは得ているというが、さらに今回はこれを加速するため、ネオツイのDM機能において、LINEに似たスタンプや絵文字が導入された。とにかくグループウェアを使ってもらうための仕組みとしては取っつきやすいため、評判も上々だという。

ネオツイは、社内の何気ないやり取りに利用可能
LINEに似たスタンプや絵文字が導入された。ユーザーからの評判も上々という

 また、desknet's NEOでエンタープライズ向けの機能を中小向けにも取り込み、同一機能を提供するようになった点も、大きな変化だ。

 「以前のdesknet'sでは、300ユーザーで中小向けと大規模向けを分けていましたが、考えて見ると従業員数が300名の会社というのは大きいのです。拠点は1つではないでしょうし、海外部門もあるかもしれません。部署も20~30あって、役職者もいる。それなのに、以前の『desknet's スタンダード版』では組織の親子関係もなく、『同じ部屋で全員が見渡せる』ような企業向けの機能しか付けていなかったんですね」と、山田氏は以前を振り返って反省したが、今回は、機能面での差がなくなっているので、自社に合った使い方がこれまで以上にできるようになった。

 もちろん、その分複雑に見える部分も存在はする。しかし、使って見ると「これはうちの会社でも使える」というフィードバックを多くもらえるようになったそうで、これによって、よりさまざまな顧客を満足させることが可能になったといえそうだ。

 「このdesknet's NEOによって、『ネオジャパンの方向性が見えた』とパートナーからもよく言われるようになりましたし、『ようやく競合ベンダーとの違いが分かった』という声もいただきました。今回のVersion 2では、さらに使っていただいたお客さまの声を反映し、さらに完成度を高めています。新バージョンで、ぜひ“ワクワク感”を感じていただきたいですね」(山田氏)。

石井 一志