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ジョンソンコントロールズ、データセンター事業を2024年度の重点事業のひとつに

 ジョンソンコントロールズ株式会社は、2024年度の事業戦略について発表。データセンター事業を重点事業の柱のひとつに位置づけた。

 同社では、2023年1月に設置したデータセンター戦略室を、2023年10月にデータセンター事業部に昇格させている。支店に分散していたデータセンターの設備設計や施工の専門家を集結。データセンターを対象にした独立専門組織として活動することになる。

 なお事業は、外資系ハイパースケールデータセンターを中心に展開。支店ごとに展開するほかの組織とは異なり、全国をカバーする独立した組織とすることで、データセンター側の要請にも迅速に対応できるとしている。

ジョンソンコントロールズ日本法人本社が入居する東京・笹塚のビル

データセンター事業部の設置によりビジネスを加速

 ジョンソンコントロールズは、中央監視をはじめとしたビルオートメーションシステムや自動制御機器、空調冷熱機器、産業用冷凍機、セキュリティ管理システムなどを提供するほか、建物の計画、設計、施工、保守、改修、コンサルティングといったライフサイクル全体を、ワンストップソリューションとして提供している。また、日立の家電事業を行う日立グローバルライフソリューションズとの合弁会社、ジョンソンコントロールズ日立空調は、ジョンソンコントロールズが60%を出資。ルームエアコン「白くまくん」の開発、製造、販売を行っている。

ジョンソンコントロールズの歴史

 ジョンソンコントロールズの吉田浩社長は、「国内においてはデータセンターの建設ラッシュが続いており、2026年までの国内データセンターサービス市場は、年平均成長率12.8%で拡大すると予測されている。当社の新築データセンター向けソリューションの受注量は、過去10年で10倍になり、旺盛な需要の波に乗ることができている。特に、外資系データセンターを中心とした引き合い件数が急増している」とし、「当社が得意する自動監視や自動制御などのシステム導入、サービスにおいては国内2位のポジションにあるが、外資系データセンターに限定すると国内No.1である。データセンター事業部の設置により、お客さまから選ばれる技術力、サービス力を持つことができ、データセンター向け事業を強力に推進可能になる。将来に渡って高いシェアを維持し、業界全体の上回る成長を目指す」と語った。

ジョンソンコントロールズ 代表取締役社長の吉田浩氏

 富士キメラ総研の調査によると、国内データセンターの中央監視市場においては、ジョンソンコントロールズは62.2%という高いシェアを獲得している。

 「データセンターが24時間365日の安定稼働が求められるなかで、自動化、自動制御は重要な役割を担うことになる。これまでの実績を生かした自動制御の提案に加えて、海外で実績を持つチラーも、大規模施設向けに日本で新たに提供を開始する。すでに、2024年に出荷する案件を獲得している。ターボ冷凍機であるYORK YZシリーズは、冷却能力が高い点に加えて、高効率運転やメンテナンスが容易であることが評価されている」などとし、「自動制御とチラーを提供するとともに、これを含めた幅広いサービスも提供していく。全国をカバーする組織として、首都圏、関西圏でも同じレベルのサービスを提供できる点も特徴になる。外資系データセンターに対しては、グローバル企業としての強みも生かせる」と述べた。

脱炭素化ソリューションが好調、コアビジネスへの社会的ニーズも高まる

 一方、2024年度の国内事業戦略についても説明。「2023年度の国内建設投資額全体は前年比2.5%増となったのに対して、ジョンソンコントロールズは、受注額、利益額ともに前年比2桁増を達成し、市場全体の成長を上回っている。オフィスビルや複合施設、工場などの建物における脱炭素化ソリューションへの関心が急速に高まっており、多くの受注を得ている」と総括。その上で、「2024年度は、コアビジネスであるビルの中央監視、自動制御に対する社会的ニーズが高まっている。デジタル技術の活用による人材不足支援、グローバルリーダーシップを生かしたデジタルインフラ整備の支援を進める」と述べた。

 複合施設を含めたオフィスビルや病院のほか、国内回帰が進む工場、旺盛な投資が進むデータセンターなどを中心に、コアビジネスである自動制御の設計および施工技術、先端技術を融合したサービスを提供することで、脱炭素化の推進を支援。オフィスビルや病院といった垂直市場ごとのニーズに特化したソリューションベースのサービスメニューも開発するという。

 「世界の炭素排出量の約4割が建物に起因し、東京都ではCO2排出量の約7割が建物に起因すると言われている。言い換えれば、当社の事業は、環境に貢献できる部分が大きい。国内でも脱炭素への動きが加速しており、特に東京都は、大規模事業所に対して、2025 年度までに、CO2削減義務を50%に引き上げる見込みである。こうした動きをサポートするシステムやソリューションに対する需要が高まると予測している」と述べている。

デジタルソリューションパッケージ「OpenBlue」の国内展開を加速

 また、「OpenBlue」の国内事業展開を加速する考えも示した。

 OpenBlueは、HVAC(Heating, Ventilation and Air Conditioning)や防災、情報セキュリティの各分野にわたり、カスタマイズ可能な20以上のサービスを統合したデジタルソリューションパッケージで、建物内の膨大なデータを収集し、AIを活用してエネルギーの効率化や最適化、エネルギー消費量を予測し可視化する機能も提供する。

 「OpenBlueによって、これまでのシステムや機器によるモノ売りから、環境や体験といったソリューションサービスをベースにしたコト売りへとシフト。サブスクリプション型のリカーリングサービスを含め、直接オーナーに提供するようなビジネスモデルによる受注を増やしていくことができる。いよいよ日本においても紹介できる導入実績が出てきた」とコメント。

 2022年10月には、大林組のスマートビルソリューション「WELCS place」にOpenBlueのテクノロジーを提供しており、これを、国内にサービスを拡大する足がかりになると位置づけている。また、製薬会社の国内工場において、OpenBlue Enterprise Managerと省エネコンサルティングサービスを導入する実績も出ている。「2024年以降は、国内におけるOpenBlueの採用事例を増やしていきたい」と、事業拡大に意欲をみせた。

OpenBlueの概要と制御する機器

 このほか、建設業界における人手不足の課題に対応するため、自動化や遠隔操作による省人化による生産性向上、業務効率の改善提案を加速。OpenBlue Remote Diagnostics and Reporting(OB-RDR)を通じて、データに基づいて、機器メンテナンスや保守運用を最適化するサービスを提供する。「2024年は、OB-RDR の営業体制を強化する。ビルのシステムが自動的にビルを診断し、データを活用して機器の予兆保全もできるようになる。OB-RDRが目指す世界を実現する機能としては、まだ初期段階であり、これから追加していくことになる。OpenBlueテクノロジーとビルデータに関する深い知見によって、自律的に進化するビルである『オートノマスビル』を実現を支援していきたい。これは、人材不足の課題にも貢献できる」と述べた。

 さらに、企業単位での総排出量を把握する「ネットゼロ・アズ・ア・サービス」をグローバルで開始しており、自動車部品や電気機器、食品・飲料メーカーなどの日系企業の海外工場を対象にした提案を進めていることにも触れた。

ターボ冷凍機 YORK YZシリーズ