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ジョンソンコントロールズがDC向け事業を説明、「日本の商流に合わせた受注形態で事業を拡大」

 ジョンソンコントロールズ株式会社は4日、データセンター向けソリューション事業の概要について説明した。

 国内および海外のデータセンター事業者の旺盛な需要に対して、テクノロジーコントラクティングと呼ぶ受注形態を通じて、データセンター向けにカスタマイズした統合ワンストップソリューションを提供。設計コンサルティングから日常運用まで幅広く対応している点が特徴であることを強調した。

 ジョンソンコントロールズ データセンターソリューション事業部長の吉田勝彦氏は、「外資系データセンターを対象にした、国内での空調制御などの機器導入および施工ではシェアナンバーワンであり、国内における新築データセンター案件の受注は、過去10年で10倍に増加している。2024年も受注売上高は120%の成長を遂げている。さらに、今後5年間の市場規模は上昇傾向にあり、10年以上のプロジェクト計画も見えている」と、国内でのデータセンター向けソリューション事業拡大に意欲をみせる。

ジョンソンコントロールズにおけるデータセンターソリューション事業

 それに向けた体制強化にも余念がない。2023年10月にはデータセンターソリューション事業部を新設し、これまでエリアごとに分散していたデータセンターの設備設計や施工の専門家を集結。拠点ごとにバラバラだった技術能力の差や、冗長化、ハブ、HVAC、セキュリティなどの提案が個別になっていたものを、エンジニアリングチームに知識を集約して、全国規模で提案できる体制を敷いた。

 「印西であれば東関東支店、東京エリアであれば東京支店、相模原では横浜支店、大阪では大阪支店の管轄により、データセンターに対する工事を行っていた。だが、データセンターの規模が大きくなり、案件数が増加したことで、支店ごとでの適切な判断ができなくなった。優先順位をつけて、最適にソリューションを提供できる体制へと移行し、国内全体をカバーしている」と述べた。

ジョンソンコントロールズ データセンターソリューション事業部長の吉田勝彦氏

 さらに、データセンター向けに設計したYORKチラーを、間もなく日本市場にも投入する予定も明らかにする。従来のHVACシステムよりも78%少ないエネルギーで同じ冷却効果を実現でき、効率的な冷却が可能になる。日本における事業領域を拡大することにより、データセンターソリューション事業の売上拡大に弾みをつける考えだ。

 また、主流だった空冷データセンターに加えて、需要が高まっている液冷データセンターに対する建設ノウハウを提供できること、日本における継続的な資材の供給やサポートが行える点も強みになると述べた。

 一方、グローバルでもデータセンターソリューション事業に力を注いでおり、2024年5月には、データセンターソリューションにフォーカスしたGlobal Data Center Solutions組織を設置。2018年4月に、米国ペンシルベニア州ニューフリーダムに設立したジョンソンコントロールズ アドバンストデベロップメント エンジニアリングセンター(JADEC)では、スマートデータセンターの実現に向けた技術開発拠点としては世界最大規模となる約2万8000平方メートル(約7エーカー)の敷地に、ビルド負荷、アプリケーション、気候をシミュレートするように設計した20 以上のラボを収容し、エネルギー効率の高いチラー、空調ユニット、ヒートポンプなど、AIデータセンターの急成長を可能にする、最も重要な機器の設計とテストを行っていることも紹介した。

ジョンソンコントロールズ アドバンストデベロップメント エンジニアリングセンター(JADEC)

 なおジョンソンコントロールズでは、システム設計などの「コンサルティング支援」から、技術評価や統合計画などの「設計支援・エンジニアリング」、プロジェクト管理や機器導入などの「建設」、システムの動作テストやパフォーマンスの最適化を行う「試運転・チューニング」、定期点検やシステムのアップグレードなどの「サービス・メンテナンス」まで、ワンストップサービスとして提供しているのが特徴だ。

テクノロジーコントラクティングという受注形態でワンストップサービスを提供

 具体的には、デジタルを活用して管理を行うOpenBlue、空冷チラーをはじめとした冷却ソリューション、日本では未投入の火災検知機器などの火災・防災ソリューション、入退室管理をはじめとしたセキュリティ、運用に関するサービス、ビル中央監視システムなどのビルオートメーションのほか、コンテナなどによるモジュラーデータセンターやモジュラー機器ルームも提供している。

ジョンソンコントロールズのデータセンター向けソリューション

 ジョンソンコントロールズ ソリューション開発本部プロダクトマネジメント部長の髙橋国大氏は、「日本では、ビルオートメーションシステムを中心としたデータセンターソリューションを提供している。グローバルに展開するオープンネットワークシステムであるMetasysと、より高速な処理速度と冗長性を併せ持つシステムであるBilWorksの、2つのビルオートメーションを用意し、お客さまの要望に合わせた理想的なシステムを提案している。Metasysでは、サーバーやクライアントPC、ネットワークに不具合が発生した場合には、冗長化により、データセンターの24時間365日の稼働を実現している」などとした。

ジョンソンコントロールズ ソリューション開発本部プロダクトマネジメント部長の髙橋国大氏

 また、同社のOpenBlueによる自動制御テクノロジーを活用することで、年間のエネルギー消費を5~15%削減できることも強調した。

 髙橋部長は、「エネルギーとパフォーマンスの最適化、アップタイムの担保、所有コストの削減、アセット寿命の延長、安全で健康的で、より持続可能な建物の提供を実現し、データセンターパフォーマンスを最適化することができる」と述べた。

日本における導入事例

 日本における導入事例についても紹介した。

 世界規模のデータセンター事業者による、50MWの5階建て国内大規模施設の建設プロジェクトに参画。グローバル標準の要件に準拠しながら、顧客の意向を設計に反映する一方、Metasysによる冗長化によって、システムの信頼性、安定性を向上させたという。

空調管理システムMetasysの導入事例(世界トップクラスのデータセンター事業者)

 国内最大級のAI向けハイパースケールデータセンターの建設プロジェクトでは、50MWの6階建てデータセンターの建設となり、BilWorksベースのBMSと、グローバルベンダーのEPMSによる電力管理システムを組み合わせることで、それぞれの強みを最大化。設計当初は、空冷データセンターを想定していたが、工事を開始して以降、液冷データセンターへの転換を決定。ジョンソンコントロールズのエンジニアが試行錯誤を行い、予定通りの完成を目指しているところだという。

BilWorksベースのBMSとグローバルベンダーEPMSの統合の導入事例(国内最大級のAI向けハイパースケールデータセンター)

 また、グローバルの大手データセンター事業者では、国内へのデータセンター建設において、包括的なソリューションを提案。中央監視だけでなく、コンピュータ室向け空調装置であるCRAHや、顔認証による入退室管理システムであるC-CUREの提供なとのほか、安定性や信頼性確保のために冗長性のあるシステムの導入を支援したという。

セキュリティシステムC-CUREとCRAHの導入事例(グローバル大手データセンター事業者)

生成AIへの投資拡大がデータセンター増加に拍車をかけているが…

 なお、国内においては、データセンターに対する需要が急拡大している。

 調査によると、2021年~2026年の国内データセンターサービス市場の年間平均成長率は12.8%増となっており、高い成長が続くと見込まれている。また、2023年にはハイパースケール型の新設データセンターが、リテール型データセンターの累積ラック数を追い越すほか、同社で現在進行しているプロジェクト案件では、約2割が液冷専用データセンター、3~4割が液冷と空冷の両方に対応したデータセンターになっているという新たな需要が生まれている点も見逃せない。

 吉田事業部長は、「働き方改革や新型コロナの影響により、リモートワークが増加し、クラウド利用が増加。さらに生成AIの投資が拡大していることがデータセンターの増加に拍車をかけている。日本では、AmazonやGoogle、Microsoftをはじめとした、大手IT企業によるハイパースケールデータセンターのほか、外資物流企業などの新規参入事業者が増加している」と指摘する。

デジタル化の加速に伴い、デジタルインフラ整備ニーズが急拡大

 だが、エネルギー問題の深刻化もはらんでいる。

 データセンターによるエネルギー消費は、2023年には7.4GWに達し、2022年から55%も増加している。また、AIデータセンターは米国のエネルギー消費の4%を占めると予測されており、2030年までには倍増するとの予測もある。日本においても、データセンターによるエネルギー使用量は、2050年には国全体の電力需要の10~20%を占めると見られている。

データセンターによるエネルギー消費

 ジョンソンコントロールズ データセンターソリューション事業部システム営業部長の須田征人氏は、「エネルギー消費の効率化、環境負荷の低減、安全性、堅牢性が、データセンター事業者が抱える課題となっている」とし、「特に、データセンターのエネルギー消費量の40%以上を冷却が占めており、CPUやGPU上で行われる処理が増加することで、発生する熱量が拡大。冷却が占めるエネルギー消費量はさらに増加すると考えられる。サーバーの高密度化や小型化に伴い、供給電力量が大幅に増加。これも想像をはるかに超えるスピードとなっている。これまでは、一般的な建物向けに生産している冷却システムを改修して、導入するケースが多かったが、今後は専用の冷却システムが主流になる」などと述べた。

ジョンソンコントロールズ データセンターソリューション事業部システム営業部長の須田征人氏

 また大手IT企業では、2030年までに再生可能エネルギーだけを利用した運用を目標に掲げるケースが多く、今後は、太陽光発電や風力発電、地熱発電、燃料電池などを利用したり、廃熱を地域冷暖房システムに供給したり、プールや養殖などの周辺地域施設に活用したり、といった動きが増加すると見ている。

クリーンエネルギー・廃熱の活用が進むと予測

 「データセンター事業者のマネジメント層の23%は、2030年までのCO2削減目標を達成に懸念を持っている。ジョンソンコントロールズでは、建物のシステムパフォーマンスを最適化し、エネルギーの節約や削減、高いセキュリティと信頼性を持ちながら、環境に優しいデータセンターを実現することが可能にできる」とも述べた。

 なお、同社の自動制御ソリューションは、世界を代表する高層ビルの90%で利用されており、日本では、あべのハルカス、表参道ヒルズ、東京ドームシティ、東京ビッグサイト、幕張メッセなどに導入されているという。