特別企画

実践的なシステム構築方法を網羅 ~Microsoft Azure実践ガイド 第2回

コストの考え方、他社サービスとの比較

 2017年12月15日に発売されるインプレスの書籍「Microsoft Azure実践ガイド」。Azureの基本サービスの解説から実際の構築までをカバーした本書より、発売前に、第1章「Azureの概要」を5回にわたってお送りします。

 第2回はコストの考え方、他社サービスとの比較です。

第1章 Azureの概要

 Microsoft Azure(以下Azure)は、マイクロソフトの提供するクラウドサービスです。2017年現在、クラウドコンピューティングはいよいよ本格的な普及期へ移った印象があります。そこで、この章ではまずクラウドコンピューティングとはいったい何かを簡単におさらいし、そのうえでAzureにどのような特徴があるのかを説明します。

1-3 コストの考え方

 Azureは初期費用も解約手数料もかかりません。使用した分だけの支払いです。利用時間(分)またはデータ容量が主な課金単位で、請求は月次です。ポータルから、課金状況を確認できます。

 なお、事前にコストを算定したい場合、以下に示す「料金計算ツール」を使って月額料金を概算することができます。

料金計算ツール

https://azure.microsoft.com/ja-jp/pricing/calculator/

 また、「TCO計算ツール」を使ってオンプレミスの総保有コスト(TCO)と同等のインフラをAzureに準備した場合に実現可能な節約額を見積もることも可能です。

1-3-1 無料でトライアルが可能

 Azureには、試用目的でクレジット(使用権)付きのアカウントを作成できます。そのアカウントには30日間使える¥20,500のクレジットが含まれています。また、サービスによっては12か月無料で使えるものもあります。

 ¥20,500のクレジットでは、たとえば以下のことができます。

14台の仮想マシン、40個までのSQLデータベースまたは8TBまでのストレージを利用できます。
Redis CacheやSearch、Content Delivery Networkを使用するWebアプリ、モバイルアプリ、APIアプリを作成できます。
Machine Learning、Streaming Analytics、Hadoopを使ってデータ分析基盤を試用できます。

 試用で作成したアカウントは、トライアル期間が終わった後も、引き続き利用可能です。また、このトライアルとは別にVisual Studio Dev Essentialsに以下のURLから登録することで、1年間、毎月¥2,550のAzureクレジットが利用できます。

1-3-2 コストのサンプル

 一般的なWebシステムを例に、使用料のサンプルを計算してみます。構成例を図1-2に示します。

図1-2 サンプルシステム

 料金計算ツールを使って、このシステムを計算した月額料金の概算は表1-1のとおりです。

 この表の料金は、あくまで月額料金です。月にフル稼働させた場合の費用であるため、前述したとおり縮退運転や稼働停止時間を設けることで、費用を抑えることができます。

 また、このサンプル構成では、データベースソフトであるSQLサーバーをIaaSの仮想マシンで冗長化し、Premiumストレージを利用していますが、利用ケースによってはPaaSのSQL Databaseを利用したほうが費用を抑えられるケースもあります。たとえば、SQL DatabaseのパフォーマンスレベルElastic Pool、Premium、2000 eDTUで1か月利用した場合のコストは¥1,288,831.20ですが、これで要件を満たすことができれば、IaaSで冗長化した構成より費用を抑えられます。

 Azureにおいて、アーキテクチャや要件に合わせて適切なサービスを選択することは、コストの面でも非常に重要です。

表1-1 使用料のサンプル

1-4 他社クラウドサービスとの比較

 クラウドサービスの比較は簡単ではありません。ですが基本的な機能は類似しています。たとえばクラウドプロバイダーが提供する一般的な基本機能は次のとおりです。

仮想マシン
オンラインストレージ
ロードバランサー
データベース
GUI(Graphical User Interface)
CLI(Command Line Interface)

 例としてAzureとAWSのサービスを比較します(表1-2)。もちろん実装、仕様の差はありますが、同様のサービスが提供されています。強いて全体的な違いを挙げるとすれば、マイクロソフトはユーザーのデータセンターに導入できるAzure Stackや、統合管理製品スイートであるMicrosoft OMS(Operations Management Suite)を提供し、Azureとオンプレミスとの統合、ハイブリッドクラウドを意識していることでしょう。

表1-2 クラウドサービス比較

書誌情報

タイトル:Microsoft Azure実践ガイド
著者:水谷 広巳/横谷 俊介/松井 亮平/真壁 徹
判型:B5変型判
ページ数:400ページ
定価:3,500円+税
ISBN:978-4-8443-3647-1

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