特別企画
実践的なシステム構築方法を網羅 ~Microsoft Azure実践ガイド 第3回
Azureが提供するサービスの概要、操作方法
2017年12月15日 06:00
2017年12月15日に発売されるインプレスの書籍「Microsoft Azure実践ガイド」。Azureの基本サービスの解説から実際の構築までをカバーした本書より、発売前に、第1章「Azureの概要」を5回にわたってお送りします。
第3回はAzureが提供するサービスの概要、操作方法です。
【連載バックナンバー】
- 第1回 Azureを採用するメリット
- 第2回 コストの考え方、他社サービスとの比較
- 第3回 Azureが提供するサービスの概要、操作方法
- 第4回 Azureアカウントとサブスクリプションの作成、Azureの契約
- 最終回 サインアップ、まとめ
第1章 Azureの概要
Microsoft Azure(以下Azure)は、マイクロソフトの提供するクラウドサービスです。2017年現在、クラウドコンピューティングはいよいよ本格的な普及期へ移った印象があります。そこで、この章ではまずクラウドコンピューティングとはいったい何かを簡単におさらいし、そのうえでAzureにどのような特徴があるのかを説明します。
1-5 Azureが提供するサービスの概要
Azureのサービスを1枚の画にまとめると、図1-3のようになります。
多くのサービスがありますが、本書ではその中でも核となるサービスを取り上げ、解説します。まずは全体像だけ把握してください。図から分かるとおり、Azureのサービスは、Compute、Storage、NetworkingといったIaaSよりのサービスと、その他PaaSよりのサービスに分けられます。ですが、IaaS/PaaSごとバラバラに提供されているわけではなく、そのサービスや要素を組み合わせて提供しています。
たとえば、SQL DatabaseのようなPaaSでは、そのインフラは抽象化されていますが、その内部ではIaaSが使われています(図1-4)。
SQL Databaseの実体は、OSとSQL Severがインストールされたサーバーです。そしてフェールオーバー構成やデータの3重化など、データベースに求められる設定が施されています。また、ユーザーから見えない部分はマイクロソフトが管理、メンテナンスします。この抽象化によって、ユーザーはデータベースの操作に集中できます。
1-6 Azureの操作方法
Azureの管理・操作には、いくつかの方法があります。本節ではどのような種類があるのかを解説します。実際の使い方は以降の章で解説していきます。
1-6-1 管理ポータル
Azureは、ブラウザベースの管理コンソールで操作できます。サポートされているブラウザはEdge、Internet Explorer 11、Safari、Chrome、Firefoxです。主要な操作のほとんどをポータルで実行できます。
Azureにまだ慣れていない段階では、まずポータルで視覚的にサービスの概要を把握することをお勧めします。
1-6-2 コマンドラインインターフェイス(Azure CLI)
Azureコマンドラインインターフェイス(Azure CLI)を導入すると、CLIでAzure上のリソースを作成、管理できます。メジャーバージョンアップを経て、現在Azure CLIとAzure CLI 2.0、2つのメジャーバージョンがあります。本書は2.0を前提とします。
Azure CLIは、さまざまなOS向けに提供されており、Windows、macOS、Linuxで使用できます。また、端末にインストールせずとも、Azure Cloud Shellと呼ばれるブラウザベースのCLIがAzure管理ポータルで提供されています。ブラウザがあればどの端末でも使えるため、非常に便利です。
Windowsでのインストール
◇WindowsにCLIをインストールし、コマンドラインで使用するにはMSIをダウンロードして実行します。
◇MSIダウンロードリンク
https://aka.ms/InstallAzureCliWindows
macOS、Linuxでのインストール
◇curlコマンドでAzure CLI 2.0をインストールします。
(Linuxでは前提条件としてPythonのインストールが必要です。)
# curl -L https://aka.ms/InstallAzureCli | bash
再起動します。
# exec -l $SHELL
インストールできたら、コマンドプロンプトからazコマンドを使用して、Azure CLI 2.0を実行します。az loginコマンドでAzureサブスクリプションに接続(ログイン)すれば、コマンドラインから各種Azureのリソースを操作できます。複数のサブスクリプションを持つ場合は、az account setコマンドでサブスクリプションを選択してください。たとえば、次のコマンドで簡単に仮想マシンを作成することができます。
> az vm create -n MyVM -g MyResourceGroup --image UbuntuLTS
1-6-3 コマンドラインインターフェイス(Azure PowerShell)
もう1つのCLIとして、Azure PowerShellが提供されています。Azure CLIの拡充につれ、その機能差は少なくなっています。しかし、オブジェクトを操作しやすいスクリプト言語としてPowerShellの人気は高く、使い慣れている人も少なくありません。これまでPowerShellの利用環境に慣れ親しんでいるのであれば、使う環境や習熟度に合わせ選択してください。
Azure PowerShellは現在、PowerShellギャラリーからのインストールが推奨されています。以下に手順を紹介します。
Azure PowerShellのインストール
PowerShellGetが導入されているか確認します。入っていなければWMF 5やPowerShell 6へのアップグレードを検討してください。Windows 10には含まれています。
> Get-Module PowerShellGet -list | Select-Object Name,Version,Path
Install-Moduleコマンドでインストールします。管理者権限が必要です。PowerShellギャラリーからのインストールが初めての場合は、リポジトリとして信用するか確認されます。
> Install-Module AzureRM
最後にImport-Moduleコマンドで読み込みます。管理者権限は不要です。
> Import-Module AzureRM
これでAzure PowerShellを導入できました。サブスクリプションに接続するにはLogin-AzureRmAccountコマンドを使います。複数のサブスクリプションを持つ場合は、Select-AzureRmSubscriptionコマンドでサブスクリプションを選択してください。後の章でAzure PowerShellを使う際に実行してください。
1-6-4 SDK
Visual Studioのツール、CLI、ランタイム バイナリ、クライアント ライブラリが1つにまとまったAzure SDK for .NETが提供されています。Azureで実行するアプリケーションの開発、テスト、デプロイはもちろん、Azureのさまざまなサービスやリソースを操作するアプリケーションを開発できます。
Azure SDK for .NETには以下のものが含まれています。
Visual Studio Community エディション 2017
Microsoft Azure ストレージ エミュレーター
Microsoft Azure Storage Tools
Microsoft Azure Authoring Tools
Microsoft Azure エミュレーター
HDInsight Tools for Visual Studio および Microsoft Hive ODBC ドライバー
Microsoft Azure Libraries for .NET
Microsoft Azure Mobile App SDK
Microsoft Azure PowerShell
Microsoft Azure Tools for Microsoft Visual Studio
Microsoft ASP.NET and Web Tools for Visual Studio
Microsoft Azure Data Lake Tools for Visual Studio
なお、SDKは.NETだけでなく、Java、Node、PHP、Python、Ruby、Go向けも提供されています。
Azure SDK(英語)
書誌情報
タイトル:Microsoft Azure実践ガイド
著者:水谷 広巳/横谷 俊介/松井 亮平/真壁 徹
判型:B5変型判
ページ数:400ページ
定価:3,500円+税
ISBN:978-4-8443-3647-1