特別企画

実践的なシステム構築方法を網羅 ~Microsoft Azure実践ガイド 第4回

Azureアカウントとサブスクリプションの作成、Azureの契約

 2017年12月15日に発売されるインプレスの書籍「Microsoft Azure実践ガイド」。Azureの基本サービスの解説から実際の構築までをカバーした本書より、発売前に、第1章「Azureの概要」を5回にわたってお送りします。

 第4回はAzureアカウントとサブスクリプションの作成、Azureの契約についてです。

第1章 Azureの概要

 Microsoft Azure(以下Azure)は、マイクロソフトの提供するクラウドサービスです。2017年現在、クラウドコンピューティングはいよいよ本格的な普及期へ移った印象があります。そこで、この章ではまずクラウドコンピューティングとはいったい何かを簡単におさらいし、そのうえでAzureにどのような特徴があるのかを説明します。

1-7 Azureアカウントとサブスクリプションの作成

 Azureを利用するには、アカウントとサブスクリプションが必要です。まずはその概念を説明します。

アカウント

 Azureの利用者の単位です。アカウントの種類はAzure ADアカウント(職場または学校アカウント)とMicrosoftアカウントの2種類があります。個人として使う場合は、Microsoftアカウントがまず選択肢になるでしょう。この2種類のアカウントには、表1-3に示す違いがあります。

表1-3 Azure ADアカウントとMicrosoftアカウント
サブスクリプション

 Azureを利用する際の契約単位です。サブスクリプション単位で課金されます。

 Azureサブスクリプションの特権ユーザーは、Azure Active Directory(以下Azure AD)で管理されます(※1)。Azure ADの詳細は第8章で説明しますが、ここでは「マイクロソフトのオンラインサービスを支える、ユーザー管理のためのデータベース」と理解してください。

 AzureサブスクリプションとAzure ADの間には信頼関係があります。1つのディレクトリ(※2)は、複数のサブスクリプションを信頼できますが、1つのサブスクリプションは、1つのディレクトリだけを信頼します。たとえば、ディレクトリAはサブスクリプションAとサブスクリプションBを信頼することができます。一方、サブスクリプションAがディレクトリAとディレクトリBを信頼することはできません。

 なお、ユーザーには認証するホームディレクトリがあります。Azureサブスクリプションにサインアップする際に、このユーザーが所属するホームディレクトリが既定のディレクトリとなります。アカウント、サブスクリプション、Azure ADの関連性を図1-5に示します。

※1 ディレクトリとテナントは、しばしば同じ意味で使われます
※2 Azure ADは、AzureだけでなくOffice 365やIntuneでも使われています

図1-5 サブスクリプションとアカウントとAzure AD

 Azureのアカウントとサブスクリプションの検討事項をディシジョンツリーとして示します(図1-6)。

 組織としてAzureを利用する場合、アカウント所有者をMicrosoftアカウントにすることはお勧めできません。なぜなら、Microsoftアカウントで作成してしまうと、該当のMicrosoftアカウントに2年間サインインがない場合、アカウントが削除されサブスクリプションが無効になってしまうからです。Microsoftアカウントで作成する際は、その点にご注意ください。

図1-6 Azure ADディシジョンツリー

1-8 Azureの契約

 Azureの購入方法は大きく分けて2種類あります。オンライン契約(従量課金制、無償試用版)か、書面ベースで契約(ボリュームライセンスやエンタープライズ契約、通称EA)を締結する方法です。

 オンライン契約は誰でもWebで直接契約(購入)し、最小支払額などはなく、使用した分だけの従量課金での支払い、いつでもキャンセルすることができます。

 書面契約の場合は代理店などと契約を締結する必要があります。契約料金の前払いなどの条件がありますが、エンタープライズポータルで複数の契約を統合管理できる、部門別管理ができる、課金アラート機能が使える、などのメリットがあります。

 オンライン契約は理解しやすいため、ここではEA契約について解説します。個人で利用したい、まず試したい、という状況であれば、このような契約形態がある、ということだけ理解してください。

1-8-1 EAにおける管理者の種類

 EA契約の場合は、上述したサブスクリプションとアカウントの関係に、エンタープライズ管理者および部署管理者という概念が追加されます(図1-7)。

図1-7 EA契約における管理構造
エンタープライズ管理者

 EA契約の全体管理者。部署管理者やアカウント管理者を管理します。EAポータルにアクセス可能です。EA契約書上の「通知連絡先およびオンライン管理者」のメールアドレスが、既定のエンタープライズ管理者アカウントです。EA契約にのみに存在します。

部署管理者

 部署の管理者。アカウント管理者の作成や管理が可能です。課金の管理単位です。EA契約にのみ存在します。

アカウント管理者

 サブスクリプションとサービス管理者を管理します。課金の管理単位です。

サービス管理者

 Azureの各サービスを管理します。サブスクリプションごとに1アカウント作成できます。

共同管理者

 Azureの各サービスを管理します。サブスクリプションごとに複数アカウント作成できます。

 表1-4に各管理者で実施可能なオプションを示します。こちらでイメージをつかんでください。

表1-4 各管理者の利用可能なオプション

書誌情報

タイトル:Microsoft Azure実践ガイド
著者:水谷 広巳/横谷 俊介/松井 亮平/真壁 徹
判型:B5変型判
ページ数:400ページ
定価:3,500円+税
ISBN:978-4-8443-3647-1

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