特集
中堅・中小企業向けビジネスを強化するSAPジャパンの戦略
パートナーとの協業による"今トク"キャンペーンも
2017年8月1日 06:00
SAPジャパンは7月21日、中堅・中小企業向けビジネスに関する説明会を開催し、4月に中堅中小企業向けビジネス市場への積極的な参入を表明してからのビジネスの推移や今後の事業戦略を説明している。
本稿では、その模様をレポートする。
なお、4月に開催された中堅中小企業向けの戦略の説明会においては、新たな組織の立ち上げや、クラウドサービスも含めた製品ラインアップの拡充などが紹介していたが、今回は「パートナー」および「マーケティング」の戦略が主な内容となっている。
中堅・中小ビジネスはSAPジャパン全体の成長を大きく上回る
SAPジャパン バイスプレジデント ゼネラルビジネス統括本部 統括本部長の牛田勉氏は、「SAPジャパンの2017年度第2四半期の売上は、前年度比で28%増だったが、中堅・中小企業向けのビジネスにおいては、28%を大きく上回る実績を残している。特にクラウドのサービスにおいて著しい成長がみられた」との実績を報告した。
そしてパートナー戦略について牛田氏は、「パートナー協業モデル」として、専任担当者による個別のパートナー支援、中堅・中小企業市場に注力している新規パートナーの発掘や育成、SAPジャパンとパートナーとの共同による営業・マーケティング活動、さらには新たなインセンティブプランなどを紹介した。
「単に新しいパートナーを開拓するだけではなく、パートナーに向けて技術支援や、マーケティングを支援したいと考えている」と述べる牛田氏は、6社のパートナーを対象に案件創出ワークショップを開催し、最新のデジタルマーケティング手法の共有、新規営業獲得手法の共有などを行ったことを報告している。
具体的なマーケティング活動として、すでに6社のパートナーと案件創出に向けたワークショップを開催したとのこと。さらに、今後も定期的に開催していくことを明らかにしている。
すでに、営業・プリセールス向けのトレーニングや、SAP Business ByDesignパートナー向けコンソーシアムなども開催しており、すでに170社1300名のパートナーが参加したという。
新規パートナーも確実に増えており、1~3月期で10社、4~6月期で10社が新たに加わった。今後の重点領域を「クラウド」「非ERP領域」「エリアカバレッジ」とする牛田氏は、「特にエリアカバレッジについては、北海道から九州、沖縄までしっかりカバレッジできるよう、今後も引き続きパートナーを増やしていきたい」と述べた。
SAPジャパンでは、各パートナーとの協業による"今トク"キャンペーンの展開も開始している。これは、各パートナーが展開しているSAP製品に関連したキャンペーンを、SAPジャパンがオンラインプロモーションやテレマーケティングなどで紹介していくという取り組みだ。
牛田氏は、「SAPのERPといえば、大企業向けの高価な製品というイメージが強い。そのため、中堅中小企業のお客さまから『結局いくらかかるんだ』とコストを心配する声をよく耳にする。この機会に明朗会計にしていきたい。われわれは中堅中小企業の市場では、まだまだチャレンジャー。これまでとはまったく違う取り組みで、多くのお客さまにSAPの製品やパートナーを知ってもらいたい」と述べた。
具体的には、「初期費用ゼロ」や「100万円キャッシュバック」「クラウドERP初年度半額」といった特典の付いたキャンペーンを紹介している。例えば、パートナーの1社であるCEGBの展開するキャンペーンでは、20ユーザー、標準機能、3年契約で1年間のベーシックプライスが500万となっており、さらに初年度は半額で利用できる。基本的にSAPは自社のソフトウェア製品の金額は明らかにしていないため、これらのキャンペーンは導入コストや導入期間の目安になるだろう。
また、新聞/雑誌/オンライン連動広告、デジタルマーケティング、セミナー開催などを通じて、中小企業向けの取り組みを紹介したことで、前年比でサイトへの登録が2倍、引き合いは3倍に増えたという。
パートナー4社が登壇
説明会には4社のパートナーもゲストで登壇している。
豆蔵グループのエヌティ・ソリューションズ 代表取締役 中原徹也氏は「15年前からSAP製品は扱っているが、昨今のデジタル変革やクラウド化の追い風を中堅中小企業の市場においても感じている。SAP Business ByDesignを使って、今後は中堅中小企業への直接アプローチはもちろん、豆蔵の既存顧客の事業会社や関連会社に対しても、グループ全体でアプローチする」と述べた。
さらに同氏は「SAP製品にAIやRPAを組み合わせ、産学連携で磨かれた最先端技術を『目に見える価値』としてお客さまに提供していく」と述べ、ほかのパートナーと差別化する新しい価値の提供をアピールした。
グッドスマイルロジスティクス & ソリューションズは、『ねんどろいど』というフィギュアを製造・販売しているグッドスマイルカンパニーのグループ会社で、ECサイトの開発、運営、物流、カスタマーサポートなどを担当している。
同社 藤井直人氏は、「当社は2014年から自社のECサイトにSAP Hybrisを導入しているユーザー企業。2012年から海外への販売を開始したが、1、2年ほどで壁にぶつかった。日本から海外への配送はサポートしていても、海外拠点からの配送をサポートしていない製品が多い中、SAP Hybrisには越境ECを行うために必要な機能がすべてがそろっていた」と述べた。現在、同社はECサイトの構築や運用の知見を生かし、他社のECサイトの運用を行うようになっており、新たにSAPジャパンのパートナーとなっている。すでに9件のSAP HybrisによるECサイトの運用実績があるという。
SAP ERPのコンサルティングや開発を長年行ってきたCEGBの常務執行役員 福田嘉一氏は、「SAP Business ByDesignの登場には衝撃を受けた。早速自社でSAP Business ByDesignを導入し、45日で本番稼働を開始することができた」と述べた。
さらに同氏は「SAP Business ByDesignによって、ERPの導入期間とコストを大幅に削減できるようにはなったが、実際にERPを使って経営スピードの向上や、売上の拡大をするのはお客さま自身。当社のようなSAPのパートナーは、ERPをどのように使えばビジネスの価値につながるのかの知見を持っている。これを活用してほしい」と述べた。
FutureOne 代表取締役社長の櫻田浩氏は、「もともと当社はInfini Oneという自社のERP製品をお客さまごとにカスタマイズして導入していたが、グローバルで多言語多通貨に対応したいというニーズが多く、2015年よりSAP Business Oneの提供を開始した。しかし、企業が成長するにつれて、『SAP Business Oneでは小さい。もっと大きなERPが欲しい』という声が聞かれるようになり、SAP Business ByDesignを扱うことにした」と述べた。
なお、同社ではグローバルで活躍する成長企業向けにスピードを重視し、SAP製品については"No" Customize という基本方針をとっている。日本の商習慣などに合わせたカスタマイズが必要な顧客に対しては、Infini Oneを提供していくという。