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リコー次期社長の三浦善司氏が記者会見、「本社が現場を100%信頼できる体制を確立したい」
(2013/2/22 19:35)
株式会社リコーは22日、2013年4月1日付けで、三浦善司 代表取締役副社長執行役員兼CFOが、代表取締役社長執行役員兼CEOに就任する社長人事を発表した。
近藤史朗 代表取締役社長執行役員兼CEOは、代表取締役会長執行役員に就く。また、取締役会長執行役員の桜井正光氏は、特別顧問に就任する。
道半ばの改革を社長としてやり遂げる
午後4時30分から都内で記者会見に臨んだ三浦次期社長は、「近藤社長とはずっとコンビでやってきた。そのため、社長就任の打診を受けたときにも、(社長を)やれるだろうなと考えた。改革も道半ばであり、これをやり遂げなくてはならないという責任がある」と、社長就任の理由を語った。
来年度が最終年度となる第17次中期経営計画については、「私自身が策定に関与したもの。方向性は変わらない。そして、これをなんとしてでも達成することが私の役割になる」と語ったほか、「ここ数年、構造改革に取り組むことで、リコーは筋肉質な体質になってはきたが、これは終わりがない話であり、まだ道半ばである。継続的に構造改革に取り組みながら、成長を目指したい。それにより、事業からきちっとキャッシュを生み出し、それをステークホルダーに還元したい」と、財務部門出身らしい方針を説明。
「リコーは、成長と体質改善の2つを同時に目指すとしてきたが、この取り組みについてはさらにステージをあげて、グローバルに展開していくことが私の役目であろう」とも語った。
その一方で、「販売、製造、開発の現場中心の経営を目指す。現場がセルフマネジメントを行い、そのなかでグローバルを意識した経営を心がけてほしい。そのためには本社と現場のコミュニケーションが大切である。私は、多くの優秀な人材がいることを理解している。本社が現場を100%信頼できる体制を確立したい」などとも話している。
さらに、「お客さまへの提供価値を次のステージに持って行くことが必要である。従業員がそれぞれの持ち場で、“想像力”を高め、結集し、変革を生み出すという決意を込めて、『imagine.change』というキャッチフレーズを使っている。これはしばらく使っていく。市場の変化にあわせてわれわれも変わる必要があり、基盤事業においては、『モノ+コト』へと変革し、プロジェクターやユニファィドコミュニケーションシステム、クラウドを活用したインタラクティブコミュニケーションボードなどの新たな商材を組み合わせて提供していく」との戦略を示す。
また、「ペンタックスの買収で得た光学技術を生かした、セキュリティカメラやインテリジェントセンシングカメラといった新たな事業を創出したい。これらの新たな事業は来年度以降、リコーの事業として、明確に示すことができるようになるだろう。ペンタックス買収後の成果は、当初の想定ほどでないのは事実だが、手応えは確実に感じている。リコーは、ここ数年、直売、直サービスといった体制を強化してきた。この直接的なネットワークに新たな事業を乗せることで、われわれの事業に競争力がつき、市場カバレージの範囲も広がる」とした。
そのほか、株主、顧客、パートナー、社員といったステークホルダーとの信頼関係の強化を掲げた。
経理畑からの社長就任はリコー初
三浦次期社長は、1950年1月、青森県出身。1976年3月に上智大学大学院経済学研究科修士課程修了後、同年4月にリコーに入社。1993年にRicoh France S.AのPRESIDENT兼CHAIRMAN、2000年にリコー執行役員経理本部長、2003年6月に上席執行役員、2004年6月に常務取締役、2005年6月に取締役専務執行役員兼CFO、2006年4月に総合経営企画室長を経て、2011年4月に代表取締役副社長執行役員に就任した。
また、2012年に、ペンタックスリコーイメージングの代表取締役会長、Ricoh Americas Holdings, Inc.会長兼CEO、リコー米州販売事業本部長に兼務で就任している。
生まれ年では三浦次期社長が1年若いが、三浦次期社長が早生まれのため同学年。リコーで経理部門畑から社長に就任するのは初めてのこととなる。
近藤社長は、「2007年に社長に就任して6年を経過し、2つの中期経営計画に社長として登板した。この間、リコーグループはプロダクションプリンティングに注力し、ペンタックスのカメラ事業をはじめとする大型買収案件に取り組んだり、MDS(マネジメント・ドキュメント・サービス)の整備などのサービス事業強化に力を注いだ。事業の入れ替えにより、新たな時代に生き残れる会社にする努力をしてきた」と、これまでの取り組みを説明。
「一方で、リーマンショックや東日本大震災、タイ洪水被害、超円高など大変な時代を迎えた。これに対してグループ一丸となって取り組んできたが、大変、エネルギーを費やした6年間だった。さらに痛みを伴う構造改革にも取り組み、事業構造、収益構造にメスを入れてきた。社員もよくやってくれた。投資家にとってはまだ満足できる状況ではないだろうが、結果として、円高でも収益が生める体質になるなど、その成果が一部に出ている。その点で、社長交代というけじめをつける節目に来ており、これはいましかないと、約半年前から考え、1カ月ほど前に社長を退任する決意を固めた。若返りではないが、違う視点で経営に貢献できるポジションを作りたいということ、その立場から次世代育成もきちっとやり抜きたいと考えた」と、社長交代を決断した背景を紹介している。
また、「心残りなのは、プロジェクターやカメラなど、ネットワーク時代に活躍すると期待される新規事業が芽を出しつつある段階である点。また新興国の事業についても成長が見込める。今後は新社長を支えながら、次世代の人材育成を含めて、リコーグループ全体を成長軌道に乗せたい」とも語った。
三浦次期社長については、「手堅い手法によって、きちっと成果を出すことが魅力である」と評価する。
時代が早すぎたquanp、終了しても培ったノウハウは生かされる
一方、近藤社長が、MFP事業本部時代に自ら肝入れで事業をスタートさせたオンラインストレージサービス「quanp(クオンプ)」は、今年7月31日に終了することが発表されている。これについて、「quanpは、時代が早すぎたという反省もある。だが、ここで培った技術やノウハウは違う形で、あらゆるところで生かされることになる。違う形になってサービスが生まれることになる」(近藤社長)などと語った。
笑顔で90周年、100周年を迎えられる会社にしたい
なお、三浦次期社長体制が始動する2013年4月からの事業計画については、2013年4月26日に予定している2012年度業績発表の席上に行う予定。さらに、「2013年度は第17次中期経営計画の最終年度であり、第18次中期経営計画の策定年度にあたる。社長として責任を持って次期中計を策定するには、1年の準備期間がある。リコーは、1936年創業であり、数年後に創立80周年を迎える。人間では傘寿になる。後輩がモチベートされ、笑顔で90周年、100周年を迎えられる会社にしたい。その礎を築く上で、今年から来年は重要な年になる」(三浦次期社長)と、抱負を話している。