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リコー・三浦社長が経営方針を説明、「ノンハードビジネスの拡大でモノ+コトを目指す」
(2013/9/6 12:19)
株式会社リコーは6日、2013年度経営方針および2014年度から始まる次期中期経営計画の方向性について説明した。
現在、同社では、2011年度からスタートした17次中期経営計画(中計)を推進しており、2013年度が最終年度となる。今年4月に社長に就任した三浦善司社長が、17次中計の総仕上げに取り組むとともに、来年度からスタートする次期中期経営計画の陣頭指揮を執ることになる。
三浦社長は、「これまでやってきた体質改造を、社内に深く刷り込む時期に入ってきた。ミッション(使命感)、パッション(情熱)、インテグリティ(誠実性)をもって、取り組んでいくことを徹底したい」としたほか、「中期経営計画は、短期の計画とリンクさせ、目標を達成することにこだわりたい。景気が悪いから業績が悪化するという体質から脱却する」などとした。
17次中期経営計画での取り組みと成果
リコーの2013年度の業績見通しは、売上高が前年比10.7%増の2兆1300億円、営業利益は同120%増となる1400億円を計画。営業利益率は6.6%を見込む。
2013年度の基本方針は、「体質改造の文化を定着させて成長を加速する」とし、「基盤事業の収益力の徹底強化」、「基盤事業における新収益モデルの確立」、「新規育成事業の成長加速」、「経営効率のさらなる向上」の4点に取り組むとしている。
一方、2013年度を最終年度とする17次中期経営計画の基本戦略は、「成長(Growth)と体質改造(Transformation)の同時実現」。基盤事業のシェアナンバーワンの獲得と堅持、先進国市場でのサービス事業への構造転換、新興国市場での事業成長、PP(プロダクションプリンティング)事業での収益貢献化の早期実現、および新規事業の拡大によって構成される「事業の創造と集中」と、成長戦略を展開するための筋肉質な経営体質を実現する「高効率経営の実現」を柱に展開している。
これまでは、海老名にあるリコーテクノロジーセンターへの設計開発機能を集約するなどの「開発プロセスの革新」、中国とアジア/太平洋地域の販売統括会社の統合などによる「販売・サービス体制の効率化」、国内生産会社の統合・再編による「生産拠点の統廃合」などを推進。
また、顧客起点として事業体制を推進するためのビジネスソリューション事業本部を設立したほか、ソフトウェア開発体制の再編などによる「オフィス向け事業体制の再編」、1万人規模の人員削減を含む「人員リソース改革」、グローバル購買本部の設立と購買機能の集約による「グローバル集中購買の促進」、販売プロセスの見直しなどによる「業務のリエンジニアリング」、カメラ事業の構造改革や計量器事業の譲渡などによる「不採算事業の見直し」に取り組んできた。
17次中計においては、プロダクションプリンティング事業の製品群の拡充とともに、ノンハード売上高が着実に増加。安定した事業基盤確立に向けた取り組みを推進しているほか、サービス事業への事業構造転換を加速し、ネットワークシステムソリューションズの売上高は年平均成長率が9%増となり、事業規模が拡大してきたこと、プロジェクションシステムやユニファイドコミュニケーションシステム、インタラクティブボードなどの新規商品を継続的に投入していることなどを示した。
「2008年度からの16次中計および現在の17次中計では、苦しい時期にも投資を打ち続けており、これが、今後成果につながると見込んでいる。インフォプリントの買収によるプロダクションプリンティングへの投資、プロジェクションシステムなどの新たな領域への進出、ペンタックスのカメラ事業の買収による光学技術との連携施策などがあげられる」としたほか、「ノンハードビジネスの拡大によって目指しているのは、モノからコトへではなく、モノ+コト。脱ハードウェアではない」などとした。
さらに三浦社長は、「カメラ事業は2013年度の黒字化が見えてきた」としたほか、人員最適化、BPR推進、設計・生産体制の再編、拠点統合・再配置などにより、「2013年度には体質改造で、660億円の効果を見込む」と述べた。
18次中期経営計画は来年5月ごろに発表へ
一方で、三浦社長は、中期的な経営の方向性についても言及した。これは2014年度から開始する18次中期経営計画策定のベースとなる考え方だ。
三浦社長は、「現在、18次中期経営計画の策定中であり、現時点では詳細を話せる段階にはない。来年5月ごろに発表することになるだろう。今回は、その方向性について報告したい」とし、「18次中計は、リコーグループの長期的発展を確実にするための3年間」とし、「18次中計の早い時期にROEの最高値を更新し、年間1000億円規模のフリーキャッシュフローを持続的に創出できる体質を確立する」と述べた。
「基盤事業である画像機器の周辺に大きな市場や成長率の高い市場が存在する。これまで基盤事業として取り組んできたイメージング市場の規模は全世界で11兆円。これに対して、ITインフラストラクチャーは96兆円、アプリケーションは37兆円、ビジネスプロセスは16兆円の市場規模がある。顧客のニーズに応えるには、ここに入っていかなくてはならない。ここに向けた具体的な戦略については、次期中計として、明らかにしていきたい」と語った。
また、「事業戦略、経営システム、体質改造、人材活用の4つの変革を実行する。これまでは製品ごとの事業体制となっており、これを顧客ごとの組織体制へとシフトする」などと述べた。
顧客軸による4つの領域で事業戦略を掲げる
事業領域の拡大および戦略実行の加速としては、「オフィス事業領域」、「インダストリー事業領域」、「コンシューマ事業領域」、「プロダクションプリンティング(商用印刷)事業領域」といった、顧客軸による4つの領域における事業戦略を掲げ、「基盤既存事業では収益力の徹底強化を進め、基盤成長事業では新収益モデルを確立する」と語った。
また、「基盤中の基盤であるオフィス事業領域では、複合機の新製品として、5機種19モデルを投入したが、今後も徹底強化していくことには変わりがない。一方で、クラウドを活用したサービスや、プロジェクターやインタラクティブホワイトボードを活用した新たな顧客価値の創造などに取り組む。ビジネスとして確立するにはまだ時間はかかるが、モバイル機器用のビジュアルサーチプラットフォーム『Ocutag(オキュタグ)』などのユニークな技術も展開している」とした。
オフィス事業領域においては、新興国市場開拓にも取り組み、中国、ロシア、インド、ブラジル、メキシコ、トルコ、ベトナムなどを重点市場として、これらの国における事業拡大、研究開発体制の強化、販売網の拡充、生産機能の増強を図るという。
さらに、インダストリー事業領域では、ペンタックスとリコーの技術を組み合わせて、赤外線カメラやセキュリティカメラ、デジタル双眼鏡などによるセキュリティ分野、FAレンズおよびカメラや被写界深度拡大カメラ、超小型ステレオカメラなどのFA(ファクトリーオートメーション)分野において、産業用途に新たな価値を提案。コンシューマ事業領域においては、レンズ交換式カメラを核にして確固たるポジションを確立し、ペンタックスが展開してきた中判デジタル一眼やミラーレスカメラ、リコーが展開してきた高級コンパクトカメラのほか、「英、仏、米向けに新たに投入した全天球カメラにより、B2Cだけでなく、B2B分野にも展開していくことができる」などと述べた。
「ドキュメント中心ではないビジネスにも展開し、未来のリコーの柱をつくり、これを確固たる基盤に育てたい」とした。
一方、グローバル経営システムの強化として、「お客さまを軸とした事業体制」、「商品、サービス利用情報などの活用」、「事業成長実現に向けた財務戦略」、「コア技術の強化と技術リソースの配分の最適化」、「グローバルITシステム・業務プロセス」の5つの観点から取り組み、さらに自律的な体質改造による不断の効率向上による体質改造の深化、グローバル人材とプロフェッショナル人材の強化による人材活用の高度化にも取り組むという。