富士通、2011年度上期の業績は減収減益に~タイ洪水は第3四半期のPCビジネスに影響へ


富士通 取締役執行役員専務の加藤和彦氏

 富士通株式会社は26日、2011年度上期(2011年4月~9月)の連結決算を発表した。それによると、売上高は、前年同期比2.6%減の2兆923億円、営業利益は同85.0%減の70億円、経常損失は前年同期から334億円減って20億円の赤字、当期純利益は前年同期比69.8%減の57億円となった。

 また、第2四半期(7~9月)の売上高は前年同期比0.6%増の1兆1062億円、営業利益は同34.9%減の241億円、経常利益は同33.6%減の168億円、当期純利益は同50.0%増の261億円となった。

 富士通 取締役執行役員専務の加藤和彦氏は、「為替の影響を吸収して、第2四半期の売上高は微増。震災の影響も限定的となってきた。7月に発表した計画通りにほぼ進行しているものの、セグメント別にいいところと悪いところがあり、営業利益では、テクノロジーソリューションとユビキタスソリューションでは、計画を90億円上回ったが、デバイスソリューションでは70億円悪化した」などとした。

 第2四半期(7~9月)のセグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上高が前年同期比1.2%減の7262億円、営業利益は同9.6%減の431億円。そのうちサービス事業は売上高が同0.4%減の5846億円、営業利益が同12.3%減の279億円。サービス事業のうち、ソリューションSIの売上高は前年同期比0.3%増の2077億円、インフラサービスの売上高は同0.8%減の3769億円となった。

 システムプラットフォーム事業の売上高は前年同期比4.2%減の1416億円、営業利益は同4.3%減の152億円。そのうち、システムプロダクトの売上高が同16.5%減の687億円、ネットワークプロダクトの売上高が同11.1%増の729億円。

 LTE向けなどが伸長した携帯電話基地局、PCサーバーのコストダウン効果がプラス要素となったものの、国内での大型システム商談の減少により、サーバー関連やネットワークサービスが減収。また、北米向けのUNIXサーバーが減収になったという。

 さらに、クラウドサービスやネットワークサービスでの先行投資やシステムインテグレーションでの減収が減益に影響。システムインテグレーションでは、製造分野やヘルスケア関連などの一部で回復の動きが見られるほか、海外でも回復基調にあるとしたが、公共分野での大型システム商談が減少しているという。

 また、加藤取締役執行役員専務は、「アウトソーシング事業が順調であり、震災後のデータセンターを活用したという要望に対して、着実に商談を獲得している」としたものの、「国内外でのデータセンター投資に力を注いだが、まだ利用が追いついていない。固定費の負担が大きくなっている」などとした。

 データセンター関連を中心に有形固定資産の取得による支出があったため、投資活動によるキャッシュフローでは926億円のマイナスになっている。

 「クラウドビジネスでは、年間1000億円を目指しているが、上期だけで前年の売り上げの9割を達成するなど、予定の半分近くまできている。下期はもう一段加速して、900億円規模は見込める」とした。

 さらに、「IAサーバーは国内外ともに順調であり、ロシア、中東などでも伸びている」と語った。

 ユビキタスソリューションは、売上高が前年同期比6.1%増の2803億円、営業利益は同1.7%減の43億円。そのうち、PCおよび携帯電話の売上高が同11.0%増の2074億円、モバイルウェアの売上高が同5.8%減の728億円。

 PCは個人向け市場において、市場販売価格の低下が買い換え需要を喚起したことで販売台数が増加したが、企業向けPCの需要回復が遅れているという。だが、PCの販売増加とドル安に伴う部材調達のコストダウン効果があったとしている。「PCでは、欧州ビジネスが2けたの成長。ロシア、中東、トルコで伸びているのが特筆できる。だが、価格下落が進展しており、金額ベースでは前年並みの水準となっている」と語った。

 携帯電話は、フィーチャーフォンの低価格化の進展があったものの、昨年10月の東芝との事業統合効果や、スマートフォン市場の拡大により増収。今後、スマートフォンの開発投資を強化していくという。

 なお、PCおよび携帯電話は黒字を維持しているという。

 モバイルウェアでは、オーディオ・ナビゲーション機器において第1四半期以降に車両の生産台数が上向いているものの、前年同期にエコカー補助金制度終了の駆け込み需要があり、その反動で減収となった。

 デバイスソリューションは、売上高が前年同期比8.4%減の1475億円、営業損失は、前年同期の52億円の黒字から38億円の赤字。そのうち、LSIの売上高は前年同期比3.4%減の857億円、電子部品は同14.5%減の621億円となった。

 LSIでは、スマートフォン向けの所要が増加したものの、デジタルAVやフィーチャーフォン、サーバー向けを中心に所要が減少。電子部品も半導体パッケージなどが伸び悩んだ。

 なお、2011年度上期累計のセグメント別業績は、テクノロジーソリューションの売上高が前年同期比1.1%減の1兆3854億円、営業利益は同18.9%減の457億円。そのうちサービス事業は売上高が同0.9%減の1兆1186億円、営業利益が同22.0%減の300億円。サービス事業のうち、ソリューションSIの売上高は前年同期比0.9%減の3762億円、インフラサービスの売上高は同1.0%減の7424億円となった。

 システムプラットフォーム事業の売上高は前年同期比1.8%減の2667億円、営業利益は同12.2%減の156億円。そのうち、システムプロダクトの売上高が同3.7%減の1316億円、ネットワークプロダクトの売上高が同0.1%増の1351億円。

 ユビキタスソリューションは、売上高が前年同期比4.7%減の5158億円、営業利益は同71.3%減の43億円。そのうち、PCおよび携帯電話の売上高が同2.2%増の3983億円、モバイルウェアの売上高が同22.5%減の1174億円。

 デバイスソリューションは、売上高が前年同期比9.8%減の2884億円、営業損失は、前年の113億円の黒字から48億円の赤字。そのうち、LSIの売上高は前年同期比3.8%減の1627億円、電子部品は同16.5%減の1262億円となった。

 

2011年度の連結売上高を下方修正、タイの洪水影響は反映せず

 一方、同社では、2011年度の連結業績を修正した。

 7月公表値に比べて、売上高は600億円減の4兆5400億円とし、テクノロジーソリューションでは欧州での為替の影響で300億円減の修正。デバイスソリューションでも300億円の下方修正とした。ユビキタスソリューションでは、PCおよび携帯電話で100億円減、モバイルウェアで100億円増加とする。

 また、営業利益は据え置いたものの、セグメント別では、PCのドル安に伴う部材調達のコストダウン効果などにより、ユビキタスソリューションで50億円増の200億円に上方修正、その他/消去でも全社ベースの費用効率化を高めることで100億円増のマイナス700億円とする一方、デバイスソリューションでは所要減により150億円減のブレークイーブンとした。

 PCの年間660万台、携帯電話の年間700万台の計画にも変更はない。

 なお、今回の修正には、タイの洪水による影響は反映していないという。

 加藤取締役執行役員専務は、「タイの洪水については、ハードディスクの調達面で、第3四半期のPCビジネスに影響が出てくるだろう。だが、震災後に、キーコンポーネントについては戦略在庫として増やした経緯もあり、若干部材を保有していること、第4四半期にはかなり生産が回復していくとみており、影響は軽微に収まると見ている。11月まではハードディスクの在庫を持っているが、それ以降はショートする可能性もある。単価の価格上昇にもつながる可能性もある」などと語った。

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