富士通、減収赤字の2011年度第1四半期決算~IAサーバーは国内外ともに好調な販売実績に
富士通 取締役執行役員専務の加藤和彦氏 |
富士通株式会社は28日、2011年度第1四半期(2011年4月~6月)の連結決算を発表。それによると、売上高が前年同期比5.8%減の9860億円、営業損失は前年同期の100億円の黒字から、マイナス171億円の赤字、経常損失は66億円の黒字からマイナス188億円の赤字、当期純損失は16億円の黒字からマイナス204億円の赤字となった。
「6月17日の経営方針で説明したように、第1四半期は震災影響が残り、リーマンショックの影響を受けた2009年第1四半期以来の赤字スタートになった。部材調達の遅延や、ITシステム投資の延伸、凍結といった動きが顕著に見られた。第1四半期での震災影響は売上高で440億円、為替の影響で170億円。ただし、震災は一部を除いて収束しつつあり、6月を見ると前年並みに回復。7月の受注状況も第2四半期以降は回復しており、上期は計画通りにいくだろう」(富士通 取締役執行役員専務の加藤和彦氏)とした。
第1四半期の特別損失として、災害による損失を75億円計上。東北5工場における操業休止期間中の固定費で58億円、顧客の復旧支援費用などで17億円を計上した。
「第1四半期では440億円の震災影響となり、通期では800億円の影響を想定しているが、第2四半期以降は、震災影響を折り込むと正しく判断できなくなる可能性がある。震災の影響は残るが、第2四半期以降は震災影響という言葉は使わない」とも語った。
一方で、「ボリュームビジネスにおける低価格化の進展と、素材価格の高騰により部材のコストダウンが図れないという課題がある。また、クラウドに対する先行開発投資は計画通りに進めており、それが販売費および一般管理費の増加と売り上げ総利益の減少につながっている」などと語った。
セグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上高が前年比1.0%減の6591億円、営業利益は70.5%減の25億円。そのうちサービス事業は売上高が1.58%減の5340億円、営業利益が68.7%減の20億円。システムプラットフォーム事業の売上高は1.1%増の1251億円、営業利益は76.8%減の4億円。
サービス事業のうち、ソリューションSIの売上高は2.3%減の1685億円、インテラサービスの売上高は1.1%減の3655億円となった。
サービス事業では、国内および英国が低調。特に英国でのコストダウンへの取り組みが遅れているとともに、政府系案件の予算削減が継続しており、商談が小ロット化しているのが懸念材料だという。だが、その一方で第2四半期以降は、国内におけるAzureビジネスの加速を期待しているとした。
「クラウド関連ビジネスでは、第1四半期に3けた(=数100億円)の数値を達成している。Azureの顧客数は増えており、当初の予定よりも多いが、まだ特定の顧客が本格的に活用しているにすぎず、1社あたりの売上金額は少ない。まだ『お試し』のレベルにとどまっており、本格化するには時間がかかるだろう。ただ、採算性から見れば、マージン率は高い。ボリュームが増えれば、確実にサービス事業の下支えをするビジネスになる。いまは安定したインフラを提供するための投資を進めていく」とした。
またシステムプラットフォーム事業では、システムプロダクトの売上高が15.7%増の628億円、ネットワークプロダクトの売上高が10.3%減の622億円。この分野では、震災影響は回復基調にあり、システムプロダクトでは国内外ともにUNIXサーバー、IAサーバーが堅調。欧州やオーストラリアでは、IAサーバーの販売が好調で、20%近い成長になったという。「IAサーバーに関しては第1四半期の拡販施策がうまくいった」と語った。
ネットワークプロダクトでは、減収となっているものの、4月から5月にかけて部材調達力が回復しているほか、スマートフォンやタブレットPCの利用増に伴うトラフィックの増加に対応したデマンドが強まっている。6月は前年同月比30%増と回復してきた。国内のNGNの落ち込みをカバーできなかったが、「第2四半期以降は、国内LTE事業の本格化が期待される。この分野での懸念は北米市場向けプロダクトにおける為替だといえる」とした。
ユビキタスソリューションは、売上高が前年同期比15.0%減の2354億円、営業利益は106億円減となりブレークイーブン。そのうち、PCおよび携帯電話の売上高が前年同期比5.8%減の1908億円、モバイルウェアの売上高が39.9%減の445億円。
PCは国内外ともに弱含みの展開となっているが、4月に投入したWindows搭載タブレットが米国、欧州において強い引き合いがあるという。また、ロシア、中東をはじめとする新興国での需要増があり、第2四半期からは増収を計画。携帯電話は部材調達の遅れが影響しているが、第2四半期からの巻き返しを計画しているという。
デバイスソリューションは、売上高が前年比11.1%減の1408億円、営業損失は、前年の60億円の黒字から10億円の赤字。そのうち、LSIの売上高は前年比4.3%減の770億円、電子部品は18.3%減の640億円となった。