日立、階層仮想化機能を備えたエンタープライズディスクアレイ
柔軟に拡張できる「3Dスケーリング構造」も採用
Hitachi Virtual Storage Platform |
株式会社日立製作所(以下、日立)は28日、エンタープライズディスクアレイの新製品「Hitachi Virtual Storage Platform(以下、VSP)」と、ストレージ管理ソフト「Hitachi Command Suite 7」の提供を全世界で開始した。併せて、ストレージのシステムライフサイクル全体を支援するサービス「Hitachi Virtual Storage Service(以下、VSS)」も発表した。
VSPは、企業の基幹システムやデータセンターなど幅広いシステムに利用できるエンタープライズディスクアレイ。
今回発表した新製品・サービス | 新製品・サービスの特長 |
新機能として、ストレージ階層仮想化機能「Hitachi Dynamic Tiering」を実装。高速なSSD、高性能なSAS HDD、大容量のSATA HDDが混在した仮想ボリュームの中で、42MBのブロック単位でデータアクセスを監視し、そのアクセス頻度に応じて最適な記録媒体にデータを割り当てられる。
加えて、スケールアップ、スケールアウト、スケールディープ(既存資産の有効活用)を無停止で実行できる「3Dスケーリング構造」も採用。スケールアップなら最大1024HDD、80ポート、4プロセッサ、256GBキャッシュまで、スケールアウトならコントローラを連結することでシステムを2倍に拡張できる。スケールディープでは、異機種ストレージを255PBまで仮想的に統合可能。
ハードウェア面では、コントローラアーキテクチャを強化。データアクセス負荷の自動平準化やプロセッサ間通信のオーバーヘッドの大幅削減を実現し、従来比で1ポート性能を最大3.5倍に、システム性能を最大2.3倍に向上している。加えて、システム設定操作ステップ数を約65%削減し、2.5型SSD/SAS HDDの採用で消費電力を約50%削減している。
Hitachi Dynamic Tieringの概要 | ハードウェアも強化 |
管理ソフトのHitachi Command Suite 7では、従来比約40倍、100万個のボリュームも1台のサーバーで管理できる「ダッシュボード」を提供。ストレージ利用・構成状況の把握や装置のアラート監視、使いやすさを徹底したGUIにより、クラウド環境などデータセンターでの運用管理コストを削減するとしている。
VSSは、仮想化機能・新製品の導入効果を可視化し、効果的な活用を実現するサービス群。仮想化機能の導入効果を可視化する「エコノミックスサービス」、仮想化技術活用の最適構成を提案する「アセスメントサービス」、仮想化技術を活用し、安定したシステムを実現する「ストレージ仮想化設計・構築サービス」、稼働状況の定期レポートや構成変更など継続的な改善を支援する「維持運用サービス」の4種を提供する。
Hitachi Command Suite 7の概要 | VSSの概要 |
情報・通信システム社 RAIDシステム事業部長の岩崎秀彦氏 |
「Data Drives Our World」ビジョンとそれを実現するための「One Platform for All Data」新基盤を提唱 |
これら新製品・サービスにより、プラットフォームソリューション事業の基盤を固め、情報・通信システム事業の中核としてグローバルな成長戦略を推進する考え。具体的にストレージソリューション事業戦略として、「強いストレージ製品を核としたさらなるグローバル事業の拡大を図る」と情報・通信システム社 プラットフォーム部門CEOの佐久間嘉一郎氏は語る。
2009年度のストレージソリューション事業売上は3040億円(海外売上比率8割)。これを2012年度に3300億円、2015年度に4000億円(海外売上比率9割)まで引き上げたい考え。「外付けストレージ国内市場で当社は14年連続でトップシェアを獲得している。今回の新技術や今後の機能拡張により、このポジションを維持・拡大していく」(佐久間氏)としている。
VSPの価格は7715万2950円から。ストレージ階層仮想化機能のライセンス価格が220万5000円から。いずれも10月4日より出荷する。
なお、同目標に向けて今回、「Data Drives Our World」というストレージソリューションビジョンを新たに策定している。その心は「データは増え続けている。その管理には膨大なコストがかかるが、データには世界を動かす力がある。データに息吹を吹き込むことで情報に生まれ変わり、情報は通貨のように世界中で交換・格納され、使われることで新しい価値を生み出す」(情報・通信システム社 プラットフォーム部門COOの小菅稔氏)というもの。
クラウド基盤などにいまこの瞬間にもデータが蓄えられている。その膨大なデータから価値ある情報を創出するため、社会イノベーションを実現する情報基盤「One Platform for All Data」を提唱し、今回の新技術をその重要なプラットフォームの1つとする方針だ。
今後はさらに仮想化技術を進化させ、「コンテンツクラウド向け仮想ファイルプラットフォームの投入や、プラットフォーム運用管理コストを低減する統合プラットフォームの開発を進める」(小菅氏)としている。