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いまさら聞けない、NTTが推進する「IOWN」って何?

 NTTによる次世代通信技術「IOWN」(Innovative Optical and Wireless Network)。クラウドWatchの読者であれば、一度は耳にしたことのある名称ではないだろうか。よく聞く名称であるにもかかわらず、どんな技術で何ができるのか、筆者はよくわかっていなかった。NTT西日本株式会社が開催した説明会にてその詳細を聞くことができたので、ここでIOWNが目指す世界を整理しておきたい。

技術の肝は「光と電子の結合」

 説明にあたったNTT西日本 デジタル革新本部 技術革新部 IOWN推進室 担当課長の鬼頭岳之氏によると、IOWN構想とは、これまで主に通信の伝送で使われてきた光技術を、コンピューターの処理にも組み込む「光電融合技術」によって、さまざまな課題を解決するというものだ。

NTT西日本 デジタル革新本部 技術革新部 IOWN推進室 担当課長 鬼頭岳之氏

 「映像の高精細化や3D化、IoT機器の急増、そしてAIの普及に伴い、データ量と電力消費量が爆発的に増えている。また、ロボットや自動運転などのサービスでは通信の低遅延化が求められる。こうした課題に対応し、環境負荷ゼロと経済成長を同時に実現するのがこの光電融合技術だ」と鬼頭氏は説明する。

IOWN構想とは

 そこでNTTは、IOWNの開発目標として、「電力効率100倍、伝送容量125倍、遅延200分の1」を達成することを掲げている。

 IOWNのロードマップにおいて、現在はIOWN 2.0のフェーズにあるという。2025年に開催された大阪・関西万博では、NTTパビリオンにて光電融合デバイスを用いたシステムを実際に稼働させてAI推論処理を実施、「消費電力を8分の1に抑えたシステムを運用した」と鬼頭氏。2026年度末には光電融合デバイスの商用化を予定しており、「今後IOWN 3.0、IOWN 4.0へと進むことで、2032年ごろにはコンピューティング領域においても光電融合技術を採用し、消費電力100分の1を達成したい」としている。

IOWNのロードマップ

 IOWNが寄与する領域は、アプリケーションサービス、コンピューティング、ネットワークの3つだが、今回鬼頭氏が焦点を当てたのはコンピューティング領域だ。

 IOWNを支える要素技術のひとつが「オールフォトニクスネットワーク(APN)」だ。従来の通信では、通信ビルでデータを電気変換して伝送していたが、APNではデータの送信から受信まで光のまま伝送する。「電気変換を挟まず光のまま伝送することで、変換時のエネルギーを使うことなく消費電力を下げ、ほぼ光の速度で送れるため低遅延化も実現する」と鬼頭氏は説明、遅延200分の1という目標はすでに達成済みだと明かした。

オールフォトニクスネットワーク(APN)とは

IOWN APNの新たなチャレンジ

 IOWN APNの新たなチャレンジとしては、「これまでAPNの実証は人同士のリモートコミュニケーションが中心だったが、今後は社会実装を見据え、計算機同士のリモートコミュニケーションに重点を置いて開発を進める」という。

 また鬼頭氏は、APNの大容量・低遅延という特長を生かすことで、分散配置された複数のデータセンターを、仮想的にひとつの大きなデータセンターとして扱う構想についても触れた。

 分散データセンターのメリットとして鬼頭氏は、「大都市圏での用地不足や電力逼迫を避け、郊外や地方にデータセンターを建設できる。また、データセンターが社会インフラになりつつある中、障害が発生すると生活にも影響が及ぶが、APNを活用した分散データセンターであれば障害からの迅速な復旧も可能だ」とした。

分散データセンターで得られるメリット

 昨年は、博多~大阪間という長距離データセンター間をIOWN APNで接続し、地域の電力状況を考慮した処理配置最適化の実証を行った。

 九州では再生可能エネルギーの発電量が需要を上回り、出力を制御することがあったという。そこで、再エネが余っている地域で優先的に計算処理をするという最適化を実施。その詳細について鬼頭氏は、「福岡で電力が豊富な時は、福岡側でアプリケーションを処理した。大阪側は処理が移動したため電力を消費せず、福岡の余剰再エネが有効活用できる。これにより、終日均等に負荷分散する場合と比較して、福岡で発電した再エネの利用率が最大31%向上した」と説明する。

 こうした取り組みを踏まえ、鬼頭氏は「物理的に分散しているデータセンターをひとつのデータセンターとして扱い、再エネをうまく活用しながらリソースを提供できるようにしたい」と、将来像を語った。

再生可能エネルギー利用最適化の実証実験
将来的な分散データセンター