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VAIO、マルチフリップ機構を採用した法人向けPC「VAIO T work」を発表
「信頼される道具」から再び「驚きを与える存在」へ――新生VAIOの挑戦
2026年9月11日 11:45
VAIO株式会社は10日、新たなPC製品群「VAIO Nextシリーズ」を発表。その第1弾として、マルチフリップ機構を採用した法人向けPCの「VAIO T work」と、個人向けPC「VAIO T」を発売する。
従来の法人向けPC「VAIO Proシリーズ」と個人向けPC「VAIOシリーズ」を「品質と信頼を土台に、着実な進化を続けていく基幹シリーズ」と位置づけたのに対して、「VAIO Nextシリーズ」は、「これまでの進化の枠を超え、新しいスタイルと顧客体験を提案するシリーズ」と定義している。今後は「VAIO Nextシリーズ」において第2弾以降の製品を投入するほか、既存シリーズに関しても継続的な製品投入を行う計画だ。
ノジマの現場の声とAI時代がもたらした「マルチフリップ機構」の復活
新製品のVAIO T workおよびVAIO Tは、マルチフリップ機構を採用し、机に置いたまま変形させ、ノートPCモード、タブレットモード、ビューモードの3つのスタイルで利用できるのが特徴だ。
タブレットモードでは、「見る」「触れる」「考える」という使い方に適しており、ノートPCモードおよびビューモードでは、「書く」「共有する」という使い方を提案。これにより、どんな場所でも、タブレットモードによって資料全体を確認し、気になる箇所をその場でチェック。ノートPCモードに切り替えて要点を書いて送るといったように、作業や動作が自然につながり、操作できる点を強調した。
VAIO 取締役執行役員 開発本部の林薫本部長は、「いま、VAIOは、大きな節目を迎えている。新たなVAIOに向けて一歩を踏み出す決意をした。その決意を形にした製品である」とし、「ノジマチームとの連携によって開発した初の製品となる。日々お客さまに接しているノジマが得た販売現場の声や、利用実態を踏まえて、企画、開発したものであり、どんな機構にするのかという根っこの部分から一緒に考えた」とする。
VAIOは、2025年1月からノジマチームの1社となり、事業を展開している。
ノジマ M&Cソリューション推進部 情報ソリューショングループ長の益田巧氏は、「ノジマは、お客さまの用途を聞いた上で最適な商品を提案するコンサルティングセールスを積み重ねてきた。一方でVAIOには、薄さや軽さを犠牲にせず、独自の機構を成立させる設計力と、品質を作り込む生産現場力、選んでもらえるブランド力がある。ノジマとVAIOの強みを組み合わせることで、これまでにない製品を生み出せると考えた」と話す。
そして、「私は、PCのマーチャンダイザーとしてVAIOを扱ってきた経験があり、かつてのマルチフリップ機構は店頭でも評判が高かったが、後継機種が途絶えてしまったことを残念に思っていた。そこで今回は、迷うことなくマルチフリップ機構の復活を提案した。当時は今ほどタッチ操作が普及しておらず、Windowsの親和性も発展途上の中にあった。だが、今ではタッチ操作は当たり前になり、タッチパネル搭載モデルが増えた。もう一度挑戦すれば、惜しくも届かなかった体験を成立させられると考えた。完成した製品を見て、期待は確信に変わっている。これまでにない1台を届けることができる」と、VAIO Tへの自信を示した。
VAIOの林取締役執行役員も、それを補足するように、「私自身も、マルチフリップ機構をいつかは復活させたいと考えていた。今は、AIとコミュニケーションを取りながら作業を行うことが増えたり、新幹線での移動中にも動画コンテンツを視聴したり、キーボードを使用せずに資料を作成したりといったことができるようになり、マルチフリップ機構の意味合いが変わってきた。つまり、AIの登場によって、PCでは新たな体験の進化が始まっており、マルチフリップ機構はAIと対話するためのインターフェイスとして、PCの新しい体験を実現できる」と述べ、今の時代だからこそ、マルチフリップ機構が重要な役割を果たすことを強調した。
また、「当時、ノジマの店頭でマルチフリップ機構が高い評価を得ていたことは意外だった。それは、ほかの販路との手応えが明らかに違っていたからだ。これは、マルチフリップ機構そのものの問題ではなく、それを必要とするお客さまに価値が伝わらなければ広まらないことの証しであり、製品の良さを伝えきれていなかったことが問題だったのではないかと考えた。ノジマチームならば、価値が伝えられる。この思いが製品開発を始めたきっかけになった」と述べた。
ノジマでは、全国7店舗で「VAIOショップインショップ」を展開。さらに、「VAIOマイスター」認定制度を独自に開始し、ノジマ店頭でVAIOの販売強化を進めており、こうした販売体制の整備も、今回の新製品の販売促進を下支えすることになる。
Core Ultra シリーズ3やAIヘルスケア機能を凝縮した製品仕様
「VAIO T work」および「VAIO T」は、13.3型ワイドWQXGA(縦横比は16:10)の液晶タッチパネルを採用。ディスプレイをフリップさせることで、3つのモードでの使用が可能になる。
VAIO 開発本部 プロダクトセンター シニアプロダクトマネージャーの渡辺玄氏は、「マルチフリップ機構は、スムーズな形態変化が最大の利点である。アプリケーションやシチュエーションで形を切り替えるということだけでなく、思考を遮ることなく形を変え、最適なスタイルで作業を進めることができる」とする。
インテル Core Ultraシリーズ3プロセッサーを搭載し、Copilot+PCに対応。独自技術であるVAIO TruePerformanceが性能を引き出すほか、PCIe 5.0 対応SSDを搭載し、大容量ファイルコピーやアプリケーション起動など、日常的な作業を快適に行える。広帯域メモリー規格LPDDR5Xを採用したメインメモリーは、最大64GBまで搭載が可能だ。動画再生時で最大約18.0時間の長時間駆動を可能にする大容量バッテリーも用意している。
またVAIOでは、ノジマチームとなって初めて開発した「VAIOウェルネスケア」を2026年8月から提供しており、これも新製品に搭載する。PCを活用して血管情報や心拍情報を非接触でAIセンシングできる世界初のサービスで、VAIOに内蔵したカメラを利用して、非接触で血管情報および心拍情報を一括で収集し、日々の健康状況を把握できる。
さらに、ウェブ会議を快適にできる「AIノイズキャンセリング」機能を搭載。周囲の雑音をカットし、自分の声だけを相手に届けられる。自宅のデスクや騒がしいカフェ、深夜のリビングなど、さまざまなシーンに最適化した4つのモードでビデオチャットが可能だ。
法人向けPCの「VAIO T work」は、筐体カラーとして、ファインブラックのみを用意。個人向けPC「VAIO T」は、ファインレッドとファインブラックの2色を用意した。VAIOストア限定販売モデルとして、「勝色」モデルも発売する。
VAIO T workは、オンラインサイトのVAIOストアビジネスで販売。VAIO Tは、ノジマ全店の店舗およびVAIO直営オンラインストアで販売する。今後の販路の拡大については現時点では具体化していない。
ゲストとして登壇したインテルの大野誠社長は、「VAIOは、画期的なデザインによりPCの常識を塗り替えてきた。今回のVAIO Tも、VAIOのDNAを詰め込んだ製品となっている。ノジマチームとなった新生VAIOに期待が持てることを象徴する製品である。インテルはAI PCを訴求しているが、VAIO Tの発表は心強い存在となる。VAIO Tに搭載したインテル Core Ultraシリーズ3プロセッサーによって、パソコンでもっとAIを使ってもらえるようになるだろう。AI活用時のトークン量を減らし、セキュリティ対策にも貢献する。VAIOとともにAIの新たな価値を提供したい」と語った。
独立から12年、法人事業の成長を経て、再び“ワクワクを創るブランド”へ
なお、VAIOは7月1日に創業記念日を迎え、ソニーからの独立後、12年が経過したところだ。
林取締役執行役員は、「12年の歩みをひとことで振り返ると、コンシューマ中心のビジネスから法人ビジネスへと軸足を移し、事業基盤を拡大してきたことになる。品質、信頼性、細やかな使い勝手といったスペックだけではない価値の創出に力を入れ、独自の立ち位置を築いてきた。その結果、2015年度に比べると、2025年度の法人向けPCの販売台数は約7倍に伸び、法人向けビジネスの構成比は、35%から85%に拡大した」と振り返る。
一方で、「法人ビジネスが順調に成長し、『信頼される存在』にはなったが、その一方で、『驚きを期待される存在』ではなくなってきた。法人市場に合わせた進化のなかで、『驚きのある体験』や『大胆な挑戦』への取り組みが抑えられ、このままでは、お客さまが持つ期待値と、VAIOの間にはギャップが広がっていくのではないかという不安が生まれた。法人のお客さまからも、VAIOに対する信頼の先には、ワクワクを期待していることが感じられていた」とも述べた。
その上で、「ノジマチームは、失敗を恐れずに挑戦することを最も大事にしている。VAIOは、その後押しを得て、大きく舵を切ろうとしている。これまで築き上げてきた信頼を維持しながら、再び驚きのある新しい体験の創出に挑戦していくことを決意した。これからのVAIOは、信頼される道具であり続けながら、新しい体験を提案するブランドへと進化する。どちらか一方ではなく、両方を成立させるのが目指す姿である」と、新たな姿勢を示した。
また、「VAIO T work」および「VAIO T」の開発に関しては、ノジマの野島廣司社長も強い関心を寄せていることを示し、VAIOの林取締役執行役員は、「野島社長は、日本のモノづくりの復権に強い意志を持っており、そのためには、ユニーク、スピードが重要な要素になると考えている。VAIOに対しても、ユニーク、スピードへの取り組みが問われており、新製品の開発でも、その点を強く意識した」と発言。ノジマの益田グループ長は、「VAIOの製造工程に関しては、もっとスピードを高めるように要請はあったが、プロダクトの開発や設計に関しては、現場に任せられた。大所から意見をもらっている」と述べた。












