ニュース
NTT西日本と大阪大学、IOWNの活用による5Gのモバイルフロントホール延伸化に関する実証実験を実施
2025年10月22日 08:30
NTT西日本株式会社と国立大学法人大阪大学は21日、共同で次世代通信「All-Photonics Connect powered by IOWN」を活用したモバイルフロントホール延伸化に関する実証実験を実施すると発表した。実際のフィールドでの実証実験を行い、光技術と移動通信システムの融合によって次世代通信インフラの強化を目指す。
第5世代移動通信システム(5G)の中で、モバイルフロントホールはRUとCU/DUを接続する重要な要素で、サービス品質や運用コストに直結する。現在はRUとCU/DU間でおよそ150マイクロ秒(30km相当)の遅延が標準とされており、これが制約となっているが、さらなる長距離化が求められている。
研究では、こうした制約を緩和するため、従来の限界を超える300マイクロ秒(60km相当)以上の延伸化を目標として、CU/DUの機能改修および60kmの距離を低遅延で接続可能とするAll-Photonics Connect powered by IOWNのモバイルフロントホールへの適用を通じて、光ネットワークとソフトウェア処理を融合させた新たなセルラー通信基盤の実現を目指す。
大阪大学とNTT西日本は2024年5月から、モバイルフロントホール延伸化に関する共同実験を、NTT京橋ビル内(大阪府大阪市)、NTT横須賀拠点内(神奈川県横須賀市)で実施してきた。NTT西日本は、予備実験において京橋ビルおよび横須賀拠点に、NTT研究所の技術協力を得て実験環境を整備した。京橋ビルでは、IOWN APN(All-Photonics Network)を含む接続環境を提供し、モバイルフロントホール延伸化に向けた接続試験や電波送出試験の実施を支援した。
大阪大学は、CU/DUの機能を担うオープンソースプログラムを独自に拡張し、ソフトウェアベースで実装した。予備実験で明らかになったスループット低下の課題に対する改善策を開発し、京橋ビルにおける再試験を通じて改善策が有効であることを確認した。
これにより、ソフトウェアによる柔軟さをもたらす5Gシステムと、NTT西日本が提供するサービスAll-Photonics Connect powered by IOWNを組み合わせることで、モバイルフロントホール延伸化の実現見通しを得たという。
この結果を基に、フィールドでの実証実験を、JR大阪駅北「グラングリーン大阪」にある大阪大学の拠点「大阪大学みらい創発・hive」で実施する。ここでは、大阪大学がO-RANフロントホール仕様(Split 7-2)に基づくローカル5G無線実験局を運用しており、無線信号の送受信を担うRU(LITEON製)が設置されている。この環境を活用し、RUと吹田市内の拠点に設置するCU/DUを、NTT西日本が提供するサービスAll-Photonics Connect powered by IOWNで接続することで、都市部におけるモバイルフロントホール運用を検証する初のフィールド実験を実施する。
実験期間は10月21日~31日を予定している。事前実験としてすでに拠点間でローカル5GがAll-Photonics Connect powered by IOWNと接続された状態で動作することは確認しており、実験では複数のアバターの同時制御を試行し、モバイルフロントホールの実用的な知見を得ることを目指す。
大阪大学は今後、IOWN APN区間以外を含む電気信号処理区間での遅延のゆらぎを計測し、通信品質のさらなる安定化を図る。また、CU/DUの冗長化や動的切り替えといった仕組みを導入することで、障害発生時でも継続的に利用可能な信頼性の高いシステムの実現を目指す。
研究を単なる技術検証にとどめず、電力や設置スペースに制約のある都市部において持続可能なモバイルフロントホール運用を実現する新たな通信基盤の構築を目指す。さらに、ソフトウェアによる拡張性を生かし、6Gを含む先進機能にも対応可能な柔軟なインフラへの発展に取り組む。
NTT西日本は、All-Photonics Connect powered by IOWNを活用したモバイルフロントホールの延伸化技術をさらに高度化し、仮想化や高信頼化技術と組み合わせることで、6G時代に求められる柔軟かつ持続可能な通信インフラの社会実装に向けた検討を加速していくと説明している。今回の取り組みを通じて、都市部における次世代通信インフラの省エネルギー化・高効率化を推進し、持続可能な社会の実現と地域の発展に貢献していくとしている。