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シュナイダーエレクトリック、AIデータセンター向け総合支援の新体制を発表

 シュナイダーエレクトリックは9月3日、AIデータセンタープロジェクトに特化した新体制を構築したと発表した。これまでは製品軸で分かれた事業部中心の体制だったが、新体制では各製品事業部を横断し、ソリューション提案、設計、プロジェクト管理から、現場での導入・保守を担うサービス事業部までがシームレスに連携して、AIデータセンターのライフサイクル全体を支援する。

AIデータセンタープロジェクトのための新体制

新体制構築の背景

シュナイダーエレクトリック カントリープレジデント 青柳亮子氏

 データセンターは、ホスティング向けからクラウドサービス向けへと変化した。これは主に規模の拡大という方向性だったが、現在のAIデータセンターはそれとは異なり、アーキテクチャが変化している。重視されるのは、高密度化による大量の電力消費と冷却だ。

 「AIデータセンターの立地条件として、土地や通信環境以外に、必要な電力を工期内に調達できるのか、高密度の熱を処理できるのか、そして完成後にも安全に動かし続けることができるのかが課題になっている」(シュナイダーエレクトリック カントリープレジデント 青柳亮子氏)

 シュナイダーエレクトリックは、グローバルで標準化されたAIデータセンターの設計・建設・運用・保守に関わるフレームワークが既にあるが、日本には固有の事情もある。例えば以下のようなものだ。

①電力接続
 50Hz/60Hzという周波数の地域差があるほか、系統接続や送配電容量に制約がある。

②日本市場への適合
 電圧区分や配電習慣、施工・保守・運用の慣習がグローバル標準と異なる。また、老朽化した設備も多い。

③実行人材
 設計、調達、建設、運用を横断してプロジェクトを動かせる人材が不足している。

 AIデータセンター建設では、GPUの調達が問題になることが多いが、日本のAIデータセンターのボトルネックのひとつは、「個々の製品の有無ではなく、世界標準と日本固有の条件をつなぐエンジニアリング能力」だと青柳氏は言う。市場が巨大化し、日本固有の制約が複雑化している今、データセンターの構想から運用まで責任をつなぐ体制が必要になったということだ。

 新体制では、C&SP(クラウド&サービスプロバイダー)セグメントキーのアカウントチームが顧客の要件から逆算して製品事業部を横断して営業提案し、Japan One Solution Centerが見積もり、エンジニアリング、プロジェクト管理を担う。最終的に、現場での導入、コミッショニング、保守、そして継続的な改善を担うのがサービス事業部となる。

 「お客様にとっての価値は非常に明確で、相談窓口が分かれず、設計と現場が切れず、問題が起きた時も責任が曖昧になりません」(青柳氏)

シュナイダーの考える次世代電力インフラ

シュナイダーエレクトリック C&SP セグメント ジャパンリードの原博紀氏

 現在、AIデータセンターは高密度化が避けられない状況だ。NVIDIAのチップ開発ロードマップでは、ラック当たりの電力容量は加速度的に上昇し、従来の数十kW/ラックの世界から、最近では100kW、さらには600kW~1MW/ラックの時代が近づいている。このような高密度化に伴う電力システムでは、直流800V給電が世界的に大きなトピックとなっており、欧米を中心に製品開発が進んでいる。

 「直流高圧は、既に太陽光発電や蓄電設備、EVなどでは使われている技術で、これからデータセンターの世界に入ってくると言われている」と、シュナイダーエレクトリック C&SP セグメント ジャパンリードの原博紀氏は言う。

 以下の図は、シュナイダーエレクトリックが業界のトレンドを見ながら、これからのアーキテクチャだと見据えているものだ。

これからの電源アーキテクチャ

 少し細かいが、緑色の線は交流、水色の線は直流を表している。系統電源は交流だが、コンピューターは直流で動作するため、従来はサーバーラック内にAC/DC変換ユニットが格納されていた。

 しかし高密度化が進むと、AC/DC変換ユニットをサーバーラックに収納するのが難しくなる。そこで、第1段階として、AC/DC変換ユニットをサーバーラックの外に出し、隣に専用のラックを配置するサイドカーという方法が現実的だ。シュナイダーエレクトリックでは、これに当たる製品を2027年に販売する予定になっている。

 さらに第2段階では、AC/DC変換をサーバールームよりも手前で行う、中央集約型へシフトすると見ている。ここでもうひとつ注目すべきは、丸が2つ重なった記号だ。これは電圧を下げる変圧器で、AC/DC変換をどこで行うかと共に、どこで変圧するかも変化すると見ている。

 最終的に、第3段階ではSSTによる変圧とAC/DC変換を行う中央集約型配電に到達するという見通しだ。SSTは半導体変圧器と呼ばれるもので、従来の鉄と銅線を使った変圧器よりもフットプリントが小さく、高効率であるのが特徴(多段階で変圧するとロスが出るので、理想は交流の系統電力を一発で直流800Vに落とす)。

 また、図では参考として日本と欧米の電圧区分を示している。日本では750Vを超えると高圧の区分になり、設計や施工の扱いが変わる。しかしシュナイダーエレクトリックでは、既に太陽光発電や蓄電設備などで高電圧の直流を取り扱っているため、業界関係者に丁寧にヒアリングしながら、取り組みを進めると原氏は言う。以下の図は、今後の製品開発ロードマップだ。

直流化に向けた今後の開発構想

安全・確実なデータセンター構築を支えるサービス

シュナイダーエレクトリック サービス事業部 中村圭佑氏

 最後に、シュナイダーエレクトリック サービス事業部 中村圭佑氏が、現場サポートを担うサービス事業部の役割について説明した。役割は大きく3つある。

①構築・立ち上げ
 顧客ニーズとしてはスピードが最も重要視され、プレファブリックの導入が進んでいる。ただし、コンテナ型やスキッド型として納入後、輸送中に不具合が生じていないか、他の設備と正しく連結できているかなど、現場での検証は必須だ。最終的な現場での検査は非常に重要な工程で、ここでつまずくと工期通りに立ち上がらない。その最後の部分を担っているのが、サービス事業部である。

 「設計の段階、工場での生産・検査に、サービスのチームを必ず送り込む。これにより、設計時点でどのような製品が組み込まれているかを、サービス側が正しく理解する」(中村氏)

 次に、実際の運用フェーズである、いわゆるアフターサポートの領域だ。顧客ニーズとしては「高品質のデータセンターを止めずに運用し続ける」ことが重要で、シュナイダーエレクトリック・ジャパンとしては、以下の2つを強みとしている。

1) 2007年に合併したAPCのサービスエンジニアリング体制があり、日本全国で迅速な駆けつけ対応が可能。この体制を生かし、新たなAIデータセンター向けサービスをアドオンする形で、AIデータセンター向けの体制を構築している。

2)グローバルで、どのエリアに、どのようなエンジニアが、どの程度必要かという試算を行うフレームワークや、エンジニアのスキル認定/トレーニングのフレームワークがある。

 この数年で、エンジニアは200名増員、業務提携パートナー数も2倍に増やしている。また、2026年3月に大阪に西日本のデータセンター向けサービス基盤となる大阪サービスチームのオフィスをオープンした。このような増強は、2028年まで同様のペースで進めるという。

③継続改善・拡張・診断・評価
 今ある設備を保全・修理するだけでなく、よりよい設備にしていく継続改善・拡張・リエンジニアリングを提供する。その際、受配電設備をデジタルツインとして再現する「ETAP」というソフトウェアを活用する。

 「サービス事業部のミッションは、データセンターを正しく安全に運用し、価値を落とさず、むしろデータセンターの価値を高めていくというところにコミットして、お客様を支援すること」(中村氏)