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パナソニック コネクト、Blue Yonderの最新AI戦略を発表 NVIDIAと共同で「Model Training Factory」を構築

 パナソニック コネクト株式会社は、Blue Yonderに関する新たな取り組みについて説明した。同社では、2026年5月17日~19日の3日間、米サンディエゴで開催したBlue Yonderの年次イベント「ICON 2026」において、新たな方針やソリューションを発表している。

ICON 2026――主な発表

 パナソニック コネクトグループ シニア・ヴァイス・プレジデント・CTOの榊原彰氏は、「ICON 2026では、全世界から多くのお客さま、パートナーが集まり、基調講演や数多くのセッションが行われ、新機能や新たなパートナーシップなどを発表した。生成AIやAIエージェントの活用によって、開発の優先順位や投資対象もダイナミックに変化している。今後は、フロンティアAIの技術も取り入れて、Blue Yonderの機能を拡張し、包括的なオートノマスサプライチェーンの実現に取り組む」と述べた。

パナソニック コネクトグループ シニア・ヴァイス・プレジデント・CTO兼技術研究開発本部 マネージングダイレクター、知財担当、クラウドエンジニアリングセンター担当、SaaSビジネスユニット担当の榊原彰氏

「ICON 2026」での6つの主要な発表

 「ICON 2026」の発表のなかで最も注目を集めたのが、NVIDIAと共同で構築する「Model Training Factory」である。サプライチェーンの専門家と同等の水準で高い付加価値を持つタスクを安定的に実行するよう学習し、オートノマスサプライチェーン向けに特化したAIエージェントの開発を加速できるのが特徴だ。NVIDIA Nemotronを基盤として活用。倉庫向け専用モデルでは、GPT-5.5に比べて60分の1の軽量化、高速化、低コスト化、最適化を実現するという。

 榊原シニア・ヴァイス・プレジデントは、「昨今では、AIを積極的に活用している企業において、トークンへの課金が問題となっており、その解決策のひとつとして、トークンの最適化を図ることができるNVIDIA Nemotronが注目されている。Model Training Factoryを通じて、お客さま自身が、独自のサプライチェーン特化型AIモデルを構築してこれらの課題を解決できる。また、データを学習させる上での機密性も維持できる」とし、「すでにいくつかのお客さまと取り組みを開始している」と述べた。

 2つめは、AIエージェントとUXの大幅な強化だ。独自のAIエージェントを、倉庫、計画、輸配送、コマースなどの全領域に拡大。これまでBlue Yonderが買収してきた企業の製品は、それぞれにUXがばらばらだったが、これを統一。カスタムアバターやコマンドバーなどを一本化するとともに、モバイル端末でも同一の環境を実現した。多言語対応も図っている。

 「モバイルアプリケーションを充実させたほか、AIエージェントの活用により、自然言語でのやりとりが増え、画面の操作数を削減できている。AIエージェントは、オーケストレーションやコーディネーションに効果があり、例えば、貿易業務では、最適な輸送手段の選定や、通関に必要な書類を簡単に用意することができる。これらは、Blue Yonderの弱い部分であったが、AIエージェント化により、改善を図ることができた」とした。

 3つめが、新たな導入モデルである「Frictionless Outcomes」の適用だ。専用の移行ツールを用意したほか、AIエージェントを活用することで、ソリューションの導入から価値創出までの時間を大幅に短縮できるのが特徴だ。WMS(Warehouse Management System)の移行では、これまで11週間かかっていたものを7日間に短縮できるほか、データの取り込みは2週間から8時間に、プランニング設定は1週間から4時間に短縮する。Blue Yonderでは、Frictionless Outcomesにより、従来のオンプレミス環境からコグニティブソリューションへの移行を一気に促進する考えだ。また、将来的にはFrictionless Outcomesを活用することで、中小企業への導入を促進する考えも示した。

 「従来システムは、オンプレミスで稼働したり、Blue Yonderがホスティングしているデータセンターで利用したりといった活用だった。これを、パブリッククラウド上で動作するコグニティブソリューションへと移行を図ることになる。SaaSへのマイグレーションは予定よりも進んでいる。また、新規に開発するソリューションは、すべてパブリッククラウド上で動作させる。将来的には、オンプレミスやパブリッククラウドによるサービス終了に向けたロードマップを公表することになるだろう。サプライチェーンマネジメントは、ミッションクリティカルシステムであるが、クラウドリフトではなく、クラウドシフトでの提案をしていく」と語った。

 4つめが、コグニティブソリューションにおける新たな機能の提供である。コグニティブソリューションは、2025年5月に第1弾を発表しているが、新たなコグニティブソリューションとして、従来は分散していた流通・小売分野向けの棚割、補充、輸配送までのワークフローを、統合ソリューションとして提供。また、生産計画では、現実的な制約を加味しながら実行可能な計画を生成できるように進化させたという。

 Blue Yonder Platformにより、データを一元管理することで、さまざまなデータ間の整合性を実現。トータルのビジネスプランから、工場現場のスケジューリングまで、アプリケーション同士がデータを連携。計画から実行までを現場の状況にあわせて柔軟に変更させながら遂行する。これにより、アプリケーションごとにサイロ化していた環境を改善することができるという。

 そして、5つめが、製品のアップデートである。IQON 2026では、計画や倉庫、コマースのすべての領域での強化を発表している。具体的には、需要計画やIBP(Integrated Business Planning)、倉庫オペレーション、輸配送管理、注文管理・返品機能を拡張したほか、買収したOne Networkの機能をBlue Yonder Platform上に移植。これにより、ネットワーク上のリスク管理機能の向上や、ネットワーク業務エージェントの強化を図ることができたという。

 さらに、同じくBlue Yonderが買収した独フレクシス(flexis AG)の製造業向けSCP(Supply Chain Planning)のソリューションを統合。ファーストマイルからラストワンマイルまでを網羅した最適化ができるという。

 「フレクシスは、数理モデルを活用したアルゴリズムやソルバーを提供している企業であり、配送ルートの最適化や、個品流しの製造ラインにおける効率化も図ることができる」(榊原シニア・ヴァイス・プレジデント)とした。

 6つめが、サステナビリティへの注力として、計画ソリューションのなかに、サステナビリティを組み込み、効率とビジネス成長を促進。物流の最適化により、GHG排出量を最大32%削減できるようになるという。買収したプレッジ・アース・テクノロジーズのサステナビリティソリューションをBlue Yonder Platform上に展開。計画策定時点から、サステナビリティを盛り込むことができるようになった。SDGsへの対応と、物流の効率化が両立できる点を強調した。

 パナソニック コネクトグループ サプライチェーン事業総括部 エグゼクティブコンサルタントの勝川宏明氏は、「3年前に、Cognitive Networkの実現を目指す将来戦略を発表したが、これが、ソリューションとして提供できるようになった。すべてのソフトウェアをコグニティブソリューションとして提供することになる」とした。

パナソニック コネクトグループ サプライチェーン事業総括部 エグゼクティブコンサルタントの勝川宏明氏

 コグニティブソリューションは、クラウドネイティブで設計され、データの統合を図るAI Data CloudおよびBlue Yonder Platformを提供。アプリケーション同士がやりとりできるInteroperable Solutionsや、サプライチェーンに関わるさまざまな企業がネットワーク上で連携するMulti-Enterprise Networkを実現している。また、一元化したデータをもとにして判断が行えるUnified Decisioning、AIの活用によるIntelligent & Agentic、さらに、Blue Yonderが持つ知見を生かしたReimagined Experiencesを特徴としている。

コグニティブソリューション

 また、Blue Yonderが取り組むAIエージェントは、「SADAループ」をベースにした設計思想になっていることに言及。SADAとは、See(見る)、Analyze(分析する)、Decide(決定する)、Act(行動する)の頭文字を取っており、これを循環させることで、AIエージェントを進化させるという。

SADAループ

 「数年前のスエズ運河での座礁、今回のホルムズ海峡の閉鎖などの不測の事態が発生しても、コグニティブソリューションであれば、状況をいち早く察知し、どのサプライヤーやどの販売店に影響が出るのかを瞬時に判断し、AIエージェントが対応策を提案する。別のサプライヤーから調達した場合の商品の値上がり率や、納期遅れに対してどれくらいの期間でカバーできるのかといったこともわかる」とした。

AIで進化するオートノマスサプライチェーン

 一方で、榊原シニア・ヴァイス・プレジデントは、Blue Yonderが掲げてきたオートノマスサプライチェーンの実現に向けた進捗についても説明。「Blue Yonderは、データを正しく入力しなければ、正しく機能しないという大前提がある。パナソニックグループが持つエッジ技術を活用して、正しいデータを適切なタイミングで入力し、この前提を実現することを考え、カメラの映像や、現場のセンサーから収集したデータを活用できる環境を整えてきた。北米の大型物流拠点では、トラックやコンテナを、画像やデータを活用しながら管理するヤードマネジメントを実現し、2社の導入実績がある。また、約60のユースケースを想定し、実装しているところである」とする。

 その一方で、「エッジソリューションと、クラウドソリューションをつなげて、すべての領域を網羅するオートノマスサプライチェーンを実現するシナリオを描き、それを最優先としてきたが、AIの登場により、戦略の変更を余儀なくされている。生成AIやAIエージェントの活用によって、どれだけスピードアップを図れるかが重要になってきた。開発の優先順位や投資対象もダイナミックに変化した」とコメントした。

 また、「これまでは、不測の事態が発生した際の需給調整、生産調整、在庫調整は、数理モデルで計算し、最適化した対策を提案し、状況が再び変化した際には、また再計算して、対応策を提案していた。だが、これではバッチ処理に近いものになる。生成AIを活用することで、シナリオ立案に柔軟性が生まれ、Blue Yonderも大きく進化した。ホルムズ海峡が閉鎖された場合に、AIエージェントが輸配送ルートの変更を提案したり、倉庫の在庫状況と組み合わせて、必要な量を短期間に納品するための最適解を提案したりできる。不測の事態が発生した際の柔軟性は高まっている」とも述べている。

 その上で、「生成AIだけだと、人がプロンプトを入力したり判断したりする必要があったが、AIエージェントによるコーディネーションにより、対応スピードが速くなる。さらに、フロンティアAIの時代になり、モデルの可搬性が高まり、ソブリン環境のもとで、自社に最適なモデルを構築できるという点でも柔軟性が生まれる。Blue Yonderは、現場をサポートするソリューションを提供しており、この領域でここまで速い動きをしているベンダーはない。包括的なオートノマスサプライチェーンはまだ完成していないが、フロンティアAIの技術を取り入れて、Blue Yonderの機能を拡張し、オートノマスサプライチェーンの実現に取り組む」とした。

 さらに、「話題となっている『SaaSの死』の対象となるのは、ワークフローを自動化したり、書類を生成したりといった領域であり、ここはAIエージェントが得意としている部分である。Blue Yonderは、お客さまのデータを預かり、SoRという側面を持ちながら、AIエージェントで効率化を図ったり、シナリオを創出したりできる点が強みだ。攻め方としては、盤石な考え方を持つ。『SaaSの死』からは、確実にサバイブできる」と断言した。