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NEC・森田社長が語る「2030中期経営計画」のビジョン:「AI Native Company」への変革と海外利益比率50%への挑戦
2026年5月27日 06:00
日本電気株式会社(以下、NEC)の森田隆之社長兼CEOが、合同取材に応じ、5月12日に発表した「2030中期経営計画」の狙いなどについてあらためて説明した。
2030中期経営計画では、安全保障領域と、DX・AX(AI Transformation)領域を成長させるとともに、それらの分野への投資を積極化する姿勢を示している。また、BluStellarでは、2030年度には売上収益で1兆3000億円、Non-GAAP営業利益率では25%を目指すことになる。
一方、長期経営目標として、海外利益比率で50%という、125年以上の歴史を持つNECにとっては「未踏」となる高いハードルに挑戦する計画も明らかにしている。
森田社長兼CEOは、「海外利益比率50%以上の目標は、社内へのメッセージでもある。NECがサステナブルな企業を目指すのであれば、確保しなくてはならない水準である」との考えも示した。
「BluStellar」と「防衛・安全保障」を軸とした成長・投資戦略
NECが発表した「2030中期経営計画」では、2030年度に、Non-GAAP(調整後)営業利益率で15%以上、Non-GAAP OP(調整後営業利益)では、オーガニックな成長だけで2025年度比で2倍以上、Non-GAAP EPS(調整後1株当たり利益)の年平均成長率では15%以上を目指すことになる。
それに向けた成長エンジンとなるのが、BluStellarである。
BluStellarは、2025年度実績で7050億円だった売上収益を、2030年度には1兆3000億円に拡大。Non-GAAP営業利益率では2025年度に14.5%の実績を大きく成長させ、2030年度には25%を目指す。
同社では、Non-GAAP営業利益率を25%にまで引き上げるための収益性改善施策として、「コンサルを起点としたBluStellar Scenarioによる高付加価値化や、AIを活用した生産性向上の効果」、「NECを中心とするBluStellar Scenarioの売上増に伴う限界利益の増加」、「NECグループ会社や販売パートナーとの連携強化に伴う拡販効果および限界利益の増加」、「AXの自社実践によるSGA(販売費および一般管理費)比率の改善効果」の4点に取り組む方針を示している。
森田社長兼CEOは、「私のイメージでは、現在、サービスモデルの構成比は10%くらいであるが、2030年度には半分を占めたい。そのなかの3割は、お客さまでの価値創出をベースにしたものにしたい。それにあわせて、お客さまも予算の取り方も変えていく必要がある。0か1かで、サービスモデルだけに移行するとは考えていない」と述べた。
また、2030中期経営計画では、防衛領域の拡大を重要なポイントに挙げている。
日本の防衛予算は、2027年度までの5年間で43兆5000億円が想定され、前5年間の2.5倍規模となっている。
森田社長兼CEOは、「NECは、防衛ICT領域におけるトップ企業として、領域横断作戦能力、指揮統制・情報関連能力といった注力分野での事業拡大を図る」とする一方、「安全保障の定義が変わってきている。例えば、NECが関わっている宇宙や海底ケーブル、通信インフラなどのインフラが止まってしまうと、実質的に国家の安全が脅かされることにつながる」と発言した。
また、政府方針に基づく装備移転やデュアルユース製品の拡販などにも取り組む姿勢を見せながら、「これからは、防衛を対象にするだけでなく、民生を含めたデュアルユースが当たり前となる。サイバーセキュリティを含めて、防衛技術の競争はグローバルで行わなくてはならない。テクノロジー領域においても高い利益率を出している企業は、将来にわたって研究開発投資、技術開発投資を続けることができる。NECは、中期経営計画では、ANS(Aerospace and National Security)で営業利益率10%台後半を目指すが、海外の防衛事業を行っている企業の利益率は、その水準に達している。この水準になることが、日本を安全な国として維持し、日々のインフラの安全も保持する上でも必要である」とした。
安全保障領域のひとつとなる海底ケーブルについては、「従来は、政府系通信事業者のコンソーシアムとの契約であったため、ある意味で不平等な契約条件が多かった。それがフェアな契約に改善してきている。海底ケーブル事業者は、中国を除くと世界には3社しかなく、太平洋におけるプロジェクトでは、NECに地理的メリットがある。また、船とケーブル、通信のすべてを理解し、コントロールできる強みも発揮できる。リスクマネジメントをしながら、グローバルで競争していきたい」とする。
さらに、「NECが取り組む太平洋の海底ケーブルは、安全保障の観点で見れば、日本だけでなく、米国やアジア、オーストラリアのほか、一部欧州の国にも関わるものになる。ケーブルが切断されるといったことが発生すると、平等な国際競争ができなくなる。日本が国際的な役割を果たすために、フェアな競争ができる環境を整えてもらうことが、日本の経済安全保障において大きなメリットがある」と述べた。
なお、NECでは、成長投資余力として、2030年度末までで最大1兆2000億円~1兆3000億円を確保し、買収検討や買収後のモニタリングにはCash ROIC評価を適用することを明らかにしている。
「2030中期経営計画では、安全保障領域と、DX・AX(AI Transformation)領域の2つに注力すると発表した。投資についてもこの2つの領域が中心になる」と説明。「海外のDGDF(デジタルガバメント/デジタルファイナンス)の領域では、欧州において、NEC Software Solutions UK(SWS)、KMD、Avaloqの3社を買収し、成果を上げている。今後は、BluStellar関連や、欧州3社、米国CSGやNetcrackerの周辺領域が投資対象になる可能性がある。また、国内は、これまではオーガニックな投資で対応できていたが、グローバルなパートナーとの連携、データセンターへの投資、AI向けスーパーコンピュータへの投資、海底ケーブルの敷設船の確保などの投資を進める」と語った。
その上で、「M&Aは特別なものではなく、経営のスピードを上げるという意味でも、ひとつの選択肢として常に頭のなかにおいておくべき選択肢である。大きな効果を出せる領域に投資を行っていく」と語った。
日本国内では、数十億円から1000億円規模のIT企業の買収を視野に入れる一方、海外のM&A案件は、欧米市場を中心に、1000億円以上の規模になると想定している。「海外では、マネジメントチームを含めた会社としての実態や、キャッシュフローが回っていること、カントリーリスクなどを考慮する必要がある」とした。
「海外利益比率50%」という高いハードルに挑む
なお、NECでは、2030中期経営計画とともに長期経営目標を発表。その中で、海外利益比率を50%とする目標を打ち出した。
2025年度実績におけるNECの海外売上高比率は約20%。海外利益率ではそれを大きく下回ると見られる。また、NECが売上収益で全社の3分の1を海外事業が占めていたのは1985年までさかのぼらなくてはならず、一時的には30%に戻したこともあったものの、2010年前後には15%程度にまで縮小している。つまり、NECにとって、海外利益比率50%という数字ははるかに高い水準であり、今回、示された指標のなかでは最も高いハードルだといえる。
森田社長兼CEOは、「この数字だけを見ると達成は難しいと思うかもしれない。だが、これは目標ではなく結果として位置づけているものであり、50%という数字は社外だけでなく、NEC社内へのメッセージという点でも思いがある」と前置きし、「NECがサステナブルな企業を目指すのであれば、日本国籍の企業として、海外利益比率50%以上を確保しなくてはならない。そうしなければ、ビジネスや戦略もゆがんでしまう」とした。
50%を構成する要素としては、安全保障領域と、DX・AX領域が中核になるが、「安全保障領域は、地政学的リスクもあり、数字のイメージを作るのは危険である。一方で、DX・AX領域では、BluStellarの海外展開などによる成長を見込む」という。
BluStellarは、2023年度までに、BluStellarの売上収益目標を1兆3000億円としているが、このなかには海外展開は含まれていない。海外利益比率50%に向けた取り組みを加速すれば、BluStellarの海外事業の拡大が必須であり、結果として、BluStellarの中期売上計画の上振れにも大きく影響する可能性が示唆されたともいえる。
だが、森田社長兼CEOは、こうしたグローバルでの数値目標とは別の見方も示してみせる。
「私自身のグローバル事業の考え方は、日本を抜きには考えていない。成長投資枠として設けた1兆2000億円~1兆3000億円の使い方においても、日本を特別扱いして、M&Aを検討するといったことをせず、グローバルで考える。地政学的な分断がある一方で、テクノロジーはボーダーレスになっている。そして、世界のGDPに占める日本の割合は10%を下回り、人口減少も進んでいる。そのなかで、NECが競争力を維持、確保するためには、事業を世界視点で考える必要がある。日本だけで事業を行っていればよいという考えから脱却しないと、今回掲げた『Empowered Humanity』で示した革新と安心を届けることはできない。日本だけに革新と安心を届けたいと思っていても、グローバルでビジネスをしなくては、それはなしえない。日本でだけビジネスをやっていればいいという考え方でいると、結果として、日本ではビジネスができなくなる。この志は絶対に忘れてはいけない」と強調した。
「AI Native Company」への変革と、2025中計達成で見えた手応え
NECでは、社会価値創造ビジョンとして「Empowered Humanity」を新たに打ち出し、「AIの社会実装」、「新たな安全保障の技術実装」、「文化と経営基盤の変革」を通じて、「世界に革新と安心を届ける」という姿勢を示している。
「NECは、日本とともに成長をしていく企業になりたい。日本に革新と安心をもたらすことによって、世界の革新と安心に貢献していくことになる。2030年には、それを真顔でいえる会社になりたい」と宣言した。
NECがここにきて発信しているもうひとつのメッセージが、「AI Native Company」である。
森田社長兼CEOは、「AIは、プロセスそのものを変え、教育や仕事のやり方、時間の使い方のすべてを変えるものになる。NECは、AIによって生まれる新たな価値観や新たな産業構造を理解した会社になることを目指す。これがAI Native Companyの意味である」と定義。「価値観や産業構造が変われば、これまでにはなかった産業が生まれる。NECはそこに関わっていくことになる」とした。
AIサービスによって、全世界で45兆円を超える市場が新たに創出されると予測している。その観点からも、AIへの取り組みを説明した。
森田社長兼CEOは、いまは半導体やハードウェアコンポーネント、データセンター、クラウド基盤がAI市場の中心となっているが、長期的には、アプリケーションやプラットフォーム、新たな技術によって生み出せる社会や産業が大きな市場になると予測。AI活用によるモダナイゼーション、データ for AI、AIプラットフォームサービス、コア業務のAIエージェント化、そして、フィジカルAIにおいて大きな市場が生まれると見ている。
「45兆円という数字は長期的には正しいと思っているが、問題はどれぐらいのスピードで進むかという点であり、そこが不透明である。企業経営の観点からは、リスクを考慮しながら保守的な対応を取る必要がある。ただし、人材の採用はいままで以上にしっかりと考えていかなくてはならない。だが、求められる人材要件が変わってくる。それを、実行しながら考え、対応していくことになる」とした。
また、「AIを駆使した圧倒的なシステム構築力の確保がこれからの強みになる。例えば、レガシーシステムにおいて、定義書や仕様書が残っていない場合でも、AIがこれらを作成したり、テスト部分を効率化したり、セキュリティ対策を行ったりできるようになる。NECでは、テクノロジーの能力や実装能力を持つ人材をそろえ、AIを駆使した圧倒的なシステム構築力や前工程への対応力を強化し、オペレーションまでを含めて、お客さまと成果を共有するビジネスへと広げる。そのためのタレントを育成していく」と語った。
コンサルティングやシステム構築、運用部分の組織や人材が分かれていたことを見直し、「NECが得意とするシステム構築の強さを生かし、システムのことを理解している人材が、AIを使い、分析し、モダナイゼーションの提案をしていくことで、圧倒的に競争力を高めることができる。サービス提供モデルまでを考えた提案をする人材を確保することも重要である」とした。
AI産業革命のポイントは、「脅威」よりも、新たに創出される「機会」にも向き合うことが重要であると、森田社長兼CEOは指摘する。
「我々が正しい行動をすれば、我々にはフォローの風が吹く。だが、待っていてもそこには到達はできない。構造が変化するなかで、その変化を先取りしないと敗者になる。NECは勝ち組になるための戦略を立てている」と語った。
一方で、森田社長兼CEOは、人材育成の考え方にも言及。「CHROの存在が大事になっている。M&Aを含めて、さまざまなバックグラウンドを持つ人が増えている。かつての人事部長の役割は、新卒を採用し、自社の文化に染めていくというやり方であったが、それが変わっている。ビジネスを推進するために、HRがサポートするといった動きがより重視される。人は勝手に育つというかつての考え方ではなく、経営の発想で人材の育成に取り組んでいかなくてはならない」とした。
かつてのNECは、中期経営計画の未達を繰り返してきた企業であり、営業利益率が5%に届かない期間が約30年間続いた。2020年度に営業利益率が5.1%となったときに、森田社長兼CEOは、「ようやく普通の会社に戻れた」と表現したことがあった。
2025年度までの「2025中期経営計画」では、営業利益率では10.1%、調整後利益率は10.8%と2桁を達成。掲げた主要指標はすべて達成してみせた。体質は明らかに改善していると言いたいのだろう。
だが、こうも語る。「中期経営計画を自分事として考えることができる社員がいるのか、変えることを常態化できているか、挑戦することを恐れない会社になっているのかと聞かれると、まだできているとはとてもいえない。ただ、この5年で大きく変わってきた手応えはある。このようなことを考えられたり、実行できたりする社員が少しずつ増えている」
進化はこれからも続くことになりそうだ。
Anthropicと戦略的提携
そうした中、NECでは2026年4月に、Anthropicとのグローバルパートナーシップを結んだ。これは日本企業では初となる。
ここでは、Claudeを活用して、データドリブン経営に寄与するためのソリューション開発を推進するほか、金融、製造、自治体といった領域において、日本固有の法規制に準拠した高品質で高セキュリティな製品およびサービスの開発を促進。さらに、NECグループ3万人の社員がClaude Codeを利用し、国内最大規模のAXエンジニア体制を構築することを目指す。
「セキュリティを含めた先端技術の継続的な協力関係を含んでおり、NECが注力する産業別特化型AIの開発についても、Anthropicと連携していくことになる。ソフトウェア開発やコーディングなど、社内で利用するものについては、ある程度標準化が必要であり、現状の経営判断として、そこにClaudeを活用していくことになる」とした。
なお、顧客に対して提供するAIモデルについては、NEC独自のcotomiをはじめとして、さまざまなモデルを使用して最適化を図り、必要なときには複数のモデルを使うという。サービスによっては、最先端モデルではなく、軽量モデルをファインチューニングして活用することで、トークンあたりのアウトプットの最適化や効率性を目指す考えも示した。
Anthropicとの契約は、3週間という短期間で決定したという。「グローバルトップ企業のスピードは速い。トップ自らが動いて意思決定していくことに合わせた動きをしないといけない。今回は、スピーディで、気持ちのいい交渉であった。NECもそうした企業にならなくてはならない。世界をリードするメンバーのインナーサークルに入ることができるというメリットもある」とした。
話題を集めているAnthropicのMythosおよびOpusについては、「セキュリティの瑕疵(かし)や欠陥を見つけられることができる能力を持ち、この能力は、GeminiやOpenAIも備えている。これをセキュリティ強化の観点で活用していくことは必須である」と指摘。
「だが重要なのは、対応をしなければならない部分を特定し、対策を行い、実装することである。金融機関やクラウド事業者といった重要インフラを担う事業者と、その上で稼働する各種ソフトウェアやシステムを提供する会社、それを実装しているITベンダーが協力して、品質をチェックし、セキュリティレベルを上げていくことが必要である。すべてがネットワークにつながっているため、特定企業だけが安全を確保すればいいというものではないため、チームワークによって対応していかなくてはならない。国際的な連携が重要になる」と提言した。
また、ソブリンAIやソブリンクラウドに対する考え方も示した。
森田社長兼CEOは、「技術主権、システム主権、データ主権、運用主権の4つで考えなくてはいけない」と位置づけ、「特に日本は、技術主権とシステム主権をしっかりと確保していく必要がある。NECは、技術主権における自律性の確保と、双方向での国際連携において役割を果たしたい。また、データ主権は、データセンターと一律に考えるのではなく、用途に照らし合わせて、リソースを確保し、制御していくべきである。例えば、コンシューマ領域では、どこまでデータ主権が必要なのかといったこともとらえる必要がある。それぞれのお客さまに必要なデータ主権、システム主権、運用主権を用意していくことになる」と述べた。
なお、次期中期経営計画において、次代の経営トップへの考え方がどこまで盛り込まれているのかという質問もあった。
森田社長兼CEOは、「NECは、2023年度に指名委員会等設置会社に変更し、指名委員会を設置している。私はオブザーバーとなっている」としながら、「社長の重要な仕事として、次世代の育成がある。どういう形で、いつ変わってもよいという準備をしている。それは経営者としての重要な仕事のひとつである。どう判断するのかは、指名委員会のなかで、客観的に議論してもらっている」と述べた。








