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NEC、2030中期経営計画を発表――AIネイティブ企業への変革で利益2倍以上、利益率15%以上を目指す

 日本電気株式会社(以下、NEC)は12日、2030年度を最終年度とする「2030中期経営計画」を発表した。

 2030年度に、Non-GAAP(調整後)営業利益率で15%以上、Non-GAAP OP(調整後営業利益)では、オーガニックな成長だけで2025年度比で2倍以上、Non-GAAP EPS(調整後1株当たり利益)の年平均成長率では15%以上を目指す。

中長期経営目標

 そのうち、ITサービスでは、売上収益の年平均成長率で3~5%、Non-GAAP営業利益率では20%程度を目標とし、BluStellarでは売上収益で1兆3000億円、Non-GAAP営業利益率25%を目指す。社会インフラでは、売上収益が年平均成長率で3~5%、Non-GAAP営業利益率では10%台後半を計画している。

 また非財務指標として、エンゲージメントスコアで上位25パーセンタイル(Percentile)の水準を目指す。

 NECの森田隆之社長兼CEOは、「長期的には、Non-GAAP営業利益で年率15%の成長を継続し続ける会社、Non-GAAP EPS成長では年率15%以上を継続できる会社を目指す。また、グローバル事業の拡大により、海外利益比率を50%にまで高める。時価総額では、グローバルトップティアとしての認知を確実に得られる企業を目指す」との考えを示した。

NEC 取締役 代表執行役社長兼CEOの森田隆之氏

 さらにAI時代において、競争力強化と成長投資を実施できる態勢を確保し、企業価値の向上を目指す考えも示した。成長投資余力は、2030年度末までで最大1兆2000億円~1兆3000億円を確保。買収検討や買収後のモニタリングには、Cash ROIC評価を適用するという。

 「M&Aは、事業効果が出る領域を明確に定め、フォーカスした形での買収を執行している。フォーカス事業から外れた領域については、タイムリーな事業整理を徹底している。成長領域の取り込みやノンコア事業の対処を通して、NECの強みを生かす事業ポートフォリオマネジメントを、2030中期経営計画でも継続することになる」との方針を示した。

キャピタルアロケーション方針

 新たな事業モデルであるBluStellarについては、「引き続きITサービスの成長を牽引することになる」とし、「すべてのBluStellar ScenarioにAIを適用し、実装する速度を飛躍的に加速する。また、グローバルアライアンスによる最新AI技術や、自社保有のAIスパコンを活用した特化型AIモデルを備えたAI Platform Serviceをフルスタックで提供する。安全なAI実装を支えるガバナンスとセキュリティにも対応する。さらに、クライアントゼロの実践や、人材育成、知財DXの外販など、NECならではの強みを生かした価値創出と競争力の向上を実現していく」との戦略を明らかにした。

NECのAIトランスフォーメーション(AX)の実践知・最先端テクノロジーを結集し、AIを前提とした顧客の価値創出・競争力の向上を実現

 BluStellarでは、Non-GAAP営業利益率を25%にまで引き上げるための収益性改善施策として、「コンサルを起点としたBluStellar Scenarioによる高付加価値化や、AIを活用した生産性向上の効果」、「NECを中心とするBluStellar Scenarioの売上増に伴う限界利益の増加」、「NECグループ会社や販売パートナーとの連携強化に伴う拡販効果および限界利益の増加」、「AXの自社実践によるSGA(販売費および一般管理費)比率の改善効果」の4点を挙げた。

AXで顧客価値創出、コスト最適化を両立し、収益性を改善

 また、「国内ITサービスでは、民需、公共の両方でシェアを拡大し、トッププレイヤーになるとともに、海外ITサービスでは、DGDF(Digital Government/Digital Finance)やNetcracker、CSGを軸に、欧州と北米を中心に特定業種でのDX、AXを拡大する」とした。

 ITサービスでは、アビームとBearingPointとの戦略提携により、グローバルでのサービス提供力の強化、BPOを含むオペレーション領域への進出などを明らかにした。また、AIやセキュリティに対する統制能力の強化などを通じて、ソブリンクラウドにも対応し、オペレーション領域でのケイパビリティを拡大する。NESICホールディングスとのシナジー創出にも注力し、日本全国にAXを展開する考えも示した。

 「ITサービスにおいては、実システムを本番で動かしてきた構築力を、コンサルティングとオペレーションにも拡張する。これにより、『コンサルティング』、『システム構築』、『オペレーション・運用・保守』の3つの領域が一体となり、AIネイティブ時代に即したエンドトゥエンドの価値提供が可能になる。顧客のアウトカムを創出することができる存在になる」と述べた。

実システムを本番で動かしてきた構築力をコンサルティングとオペレーションへ拡張 AIネイティブ時代に即したエンドトゥエンドの価値提供により顧客のアウトカムを創出

 一方、社会インフラサービスでは、NECが、経済安全保障領域において「防衛×デジタルインフラ」によるフルラインサービスを整備している強みを生かし、BluStellarを中心としたITサービスの技術を掛け合わせることで、さらに、ユニークなポジションを確立できることを強調した。

 「NECは、防衛ICT領域におけるトップ企業として、領域横断作戦能力、指揮統制・情報関連能力といった注力領域での事業拡大とともに、政府方針に基づく装備移転やデュアルユース製品の拡販、グローバル展開を進める。さらに、海外も含めた革新的技術の発掘や獲得によって競争力を強化する。NECが得意とする海洋、通信インフラ、航空・宇宙などのデジタルインフラについては、フルラインを備えている特長を生かし、事業拡大を図る。サイバーセキュリティについては、2025年度に立ち上げたCyIOC(サイオック)をグローバルに展開するほか、アクティブサイバーディフェンス(ACD)関連法による新たな市場に対してもアプローチする」という。

 その上で、森田社長兼CEOは、「NECは、AIの社会実装と、新たな安全保障の技術実装を併せ持ち、これらの相互作用による継続的な進化を強みとし、成長を実現していくことになる」と前置きし、「AIの社会実装」では、クライアントゼロと顧客との共創による「ドメインナレッジ」、ミッションクリティカルな業務を支えてきた「知見」、構想から構築、運用までを担ってきたエンドトゥエンドの「実装力」、AIネイティブな価値創造モデルである「BluStellar」を強みとしていることを示した。

 また、もうひとつの「新たな安全保障の技術実装」では、海洋、通信、宇宙、サイバーを横断する安全保障ドメインナレッジを持つ稀有な企業であること、安全・安心を長期にわたり支え続けてきた信頼と実績、「防衛×デジタルインフラ」によるフルラインサービスを持つこと、インテリジェンスとAIを融合したサイバーセキュリティの機能を持つことが特徴となっていることを示した。

経済安全保障における防衛×デジタルインフラによるフルラインサービスを整備 さらにITサービスの技術の掛け合わせにより、ユニークなポジションを確立

 さらに、森田社長兼CEOは、「AIによる社会変革と新たな安全保障環境が重なり合う時代においても、NECは変革を加速することになる。誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会を実現するというPurposeの実現に向けて挑戦する。2030年に向けてNECが目指す姿と役割を『Empower Humanity』というビジョンに込めた。AIの社会実装によって、人間の可能性を拓き、革新をもたらし、新たな安全保障の技術実装を通じて、人々が安心して暮らせる社会を作る。革新と安心を届けることで、誰もが人間性を最大限発揮できる社会が訪れると確信している」と語った。

AIネイティブ企業への変革と事業環境の認識

 2030中期経営計画では、「文化と経営基盤の変革」にも取り組む。

 森田社長兼CEOは、「新たな中期経営計画の期間中に、価値を創ることができる人と文化へと転換を図り、NEC自らをAIネイティブ企業に変革させる。また、AI活用による経営基盤の高度化と効率化も実現する」と述べた。

 権限委譲を行いながら、NECグループとしての規律と、各社の独自性や自律性のバランスを最適化。本社機能を、AIを前提に高度化、効率化するという。

 また、「中計達成の重要なミッション」と位置づけるソートリーダーシップに関しては、国際社会経済研究所(IISE)を、プラットフォーム型シンクタンクに進化させ、有識者の知を統合し、社会実装の加速を支援する考えを示した。

 新たな「2030中期経営計画」に向けた現状認識についても説明した。

 森田社長兼CEOは、「AIによる社会変革と新たな安全保障環境が世界秩序を変容させ、脅威と機会が同時に拡大している」と指摘し、「AIが、生活や仕事の在り方、産業構造、社会制度を抜本的に変革する一方で、世界の分断が加速するなかで、日本が、米中に次ぐ、第3の選択肢になる可能性が出てきた」と提言した。

 「AIによる社会変革」では、AIの非連続的な進化により、テックサービス企業の将来性を懸念する「アンソロピックショック」が発生。主要なテックサービス企業の時価総額の合計が、年初に比べて約80兆円消失し、約20兆円の事業機会が失われた可能性があるとの見方を示しながら、「NECもその例外ではない。自動化や効率化によるシステム構築の価値の低下、内製化の拡大によるSIerの事業機会の減少、ベンダースイッチングコストの低下、AIの普及による運用責任の不明瞭化により、ベンダーのリスクが増大するという懸念がある」とする。

AIの進化に伴う構造的変化

 だが、その一方で、「AI産業革命においては、『脅威』よりも、新たに創出される『機会』にも向き合うことが重要である。いまは半導体やハードウェアコンポーネント、データセンター、クラウド基盤がAI市場で注目を集めているが、過去のテクノロジーイノベーションの歴史を踏まえると、長期的には、アプリケーションやプラットフォーム、新たな技術によって生み出せる社会や産業が大きな市場となる。グローバルで45兆円を超える規模のAIサービス市場が新たに生まれることになる」と予測した。

 ここでは、AI活用によるモダナイゼーション、データ for AI、AIプラットフォームサービス、コア業務のAIエージェント化、そして、フィジカルAIにおいて大きな市場が生まれると予測した。

AI産業革命が本格化し、優勝劣敗が鮮明に

 「AI産業革命が本格化すると、企業の優勝劣敗が鮮明になる。NECはそのなかで勝つ企業になりたい。そのための鍵になるのは、価値の重心の変化を適切にとらえることである。これまでのIT産業には、コンサルティング、システム構築、オペレーションという3つの領域があったが、それぞれの市場が分断し、個々のプレイヤーが活躍していた。だが、AIネイティブ時代は、3つの領域が一体となり、シームレスに顧客価値を創出する必要がある。構造変化のなかで勝者となるためには、ドメインナレッジ、システムアーキテクチャ、ファウンデーションを一体として兼ね備え、アウトカムを顕在化できることが不可欠であり、NECもその姿へと変わっていくことになる。これが、2030中期経営計画における戦略の中核になる」と断言した。

価値創出の構造が変化

 また、地政学的緊張が常態化していることや、AIの進化を背景として、経済安全保障の定義が拡大していることを指摘。「日本の防衛予算は、2.5倍に拡大しているが、さらなる防衛予算の拡大、民需への転用も期待され、安全保障の裾野が拡大することになる。その背景には、平時と有事の境界が曖昧化していること、民生と防衛の技術や市場が融合していること、NECが得意とするデジタルインフラの重要性が高まっていることがある。経済安全保障に日本の自律性を持たせるためには、デジタルインフラの安全性や信頼性の担保、高度化するサイバー攻撃に対処した社会システムを守るサイバーセキュリティの強化が求められており、NECにとっては大きな事業機会が生まれることになる」とした。

安全保障環境の変化

「2025中期経営計画」の総括と企業変革の成果

 一方、2021年度から2025年度までの「2025中期経営計画」についても総括した。

 NECの森田社長兼CEOは、「Purpose、戦略、文化の三位一体の取り組みを柱に、企業変革を推進してきた。中期経営計画の目標を達成し、2025年度には過去最高益を達成した」と振り返った。

 NECが発表した2025年度(2025年4月~2026年3月)の連結業績は、売上収益が前年比4.7%増の3兆5827億円、営業利益は同40.3%増の3599億円、調整後営業利益は同34.7%増の3868億円、税引前利益は同66.1%増の3981億円、Non-GAAP営業利益は同27.6%増の3972億円、当期純利益は同54.3%増の2702億円、Non-GAAP当期利益は同24.0%増の2797億円となった。

 同計画では、EBITDAの年平均成長率で9%の目標を掲げたのに対して、実績値は12.4%。ROICは6.5%の目標に対して9.1%と、いずれも目標を上回った。だが、非財務指標のエンゲージメントスコア50%の目標に対しては、48%と若干の未達となった。それでも、「グローバルでのトップティアに相当する水準に達している」と自己評価した。

2025中期経営計画の実績

 また、「2025中期経営計画では、『戦略』と『文化』の両面において、企業価値の最大化に向けた施策を推進してきた」とし、それぞれの観点から成果と課題を示した。

 「戦略」では、価値創造モデルと位置づける「BluStellar」を発表し、成長ドライバーとして展開したほか、自社開発の生成AIである「cotomi」をいち早く市場に導入し、DXの進展を図ったことを挙げる。

 一方、「新たな時代の安全保障領域を重点事業として再定義し、テレコムサービスおよび海洋事業を、ここに組み込むとともに、防衛領域に対して大規模なリソースシフトを実施した。さらにサイバーセキュリティ事業の強化を進めた」と成果を述べた。

 また、海外IT事業においては、欧州3社(NEC Software Solutions、KMD、Avaloq)のPMI推進と継続的な改革を実行。さらに2025年度には、米CSGの買収により米国事業拡大に向けた布石を打ったという。

 さらに、グローバル5G事業は、事業環境の変化をとらえて、成長事業から課題事業にシフトする一方で、低収益事業だった国内ITサービスのベース事業はモニタリングを強化して正常化。加えて、上場子会社を再編し、親子上場の解消を図るなど、グループ経営の進化にも取り組んだ。

 だが、今後の課題としては、DGDFの本社機能を欧州に移し、意思決定の迅速化や、トップラインの成長速度を向上させることと、NetcrackerおよびCSGのPMIを着実に実行することで、北米でのITサービス事業のプレゼンスを拡大することを挙げた。

 「文化」に関しては、ジョブ型人材マネジメントの導入や多様性の強化、女性役員および外国人役員比率の向上などによって、人とカルチャー改革の進展を図ったほか、指名委員会等設置会社への移行によるコーポレートガバナンス改革、組織の大括り化やフラット化による意思決定の迅速化、セグメント変更やNon-GAAPおよびCash ROIC評価の導入による経営管理制度の高度化、自社をゼロ番目の顧客として、先端技術を徹底的に活用するクライアントゼロによるデータドリブン経営の実践、自社の価値向上、市場競争力の向上に取り組んだという。

 「今後は、AI時代が本格化する。AI時代の人材ポートフォリオのさらなる強化、グローバルグループガバナンスの強化が課題になる」と述べた。

Purposeの実現を追求し、企業価値の最大化に向けた施策を推進

 さらに、森田社長兼CEOは、2010年~2015年までを「NEC再成長の礎づくり」、2016年~2020年までを「カルチャー変革の推進」の期間としたのに対し、2021年以降の5年間を、「企業価値の最大化」を実現するフェーズととらえながら、「NECは、15年を超える経営変革を経て、2025年度は時価総額で市場最高値を達成した。だが、目の前には、AIの本格化、それによる産業革命を迎えており、これまでの延長線上にはない新たなフェーズが訪れることになる。この変化をどうとらえ、どう勝ち抜いていくかがポイントになる」と、これから取り組む「2030中期経営計画」の方向性を示した。

NECの現在地