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ラクス、「メールディーラー」「配配メール」を「楽楽クラウド」ブランドへ統合
AI時代でのSaaSベンダーとしての強みもアピール
2025年10月22日 06:15
株式会社ラクスは、クラウド型メール共有・管理システム「メールディーラー」とメール配信サービス「配配メール」の2製品を、10月23日から「楽楽クラウド」ブランドに統合すると発表した。メールディーラーは「楽楽自動対応」に、配配メールは「楽楽メールマーケティング」へと名称変更する。ラクス 上級執行役員 楽楽クラウド事業本部長の吉岡耕児氏は、名称変更理由を、「楽楽というブランドの認知度が高く、(2製品の)認知拡大が課題となる中で、楽楽ブランドの採用を決定した」と説明した。
また、「SaaS is dead論に対するラクスの答え」として、AIエージェント時代となっても、SaaSはAIエージェントと役割を分担しながら共存・進化していくことを強調。「SaaSは死なない。AIと共にラクスはこれからも進化していきたい」(ラクス 取締役兼CAIO 本松慎一郎氏)とアピールした。
2つのメールサービスを「楽楽シリーズ」にリブランド
ラクスは、経理、人事、労務など企業のバックオフィスといわれる業務を対象としたサービスを、「楽楽シリーズ」として楽楽ブランドで提供してきた。
一方、セールスやマーケティング、またはカスタマーサポートやカスタマーサクセスのお客さまに向けたサービスについては、バックオフィスではなくフロントオフィス向けとしていることから、バックオフィスサービスに利用している楽楽ブランドを使用していなかった。
しかし今回、問い合わせ・メールの共有管理システムである「メールディーラー」は「楽楽自動対応」へ、メールマーケティングサービス「配配メール」は「楽楽メールマーケティング」へ、それぞれの名称変更を10月23日から進めていく計画だ。
吉岡事業部長は、「メールディーラー」を取り巻く環境について「今後、AIが市場を大きく変えていくことは間違いない。メールディーラーは、メールの対応状況を可視化できる、メールを共有、管理するシステムとして提供してきた。AI利用が進むことで、問い合わせ、回答文などを自動生成することや、顧客からのメールでの問い合わせに対し、自己解決手段を提示するなど対応方法が変わってきている」と説明。
また「配配メール」について、「配配メールは、お客さまに対し一斉にメール配信を行い、マーケティング支援をしていくツールとして利用されてきた。こちらに関しても、メール配信だけではなく、さまざまなメールマーケティング領域の機能提供と、継続的に成果を出すための運用・構築サポートなどがAIを活用しつつ広がっている状況になっている」したうえで、「メールにとどまらない対応業務の高度化が進んでいる中、メールと名前がつくだけの名称では正しく私たちがお客さまに提供している価値を表現しきれなくなっていると、強く感じていた」と述べ、これが両製品の今回の名称変更の背景となっていると説明した。
なお、メールディーラーは2002年から提供している、ラクスにとっては創業から間もなく誕生したサービスだが、「楽楽という名称をつけることによって、お客さまにはより親しみを持っていただき、認知拡大を実現できればということで、楽楽クラウドブランドの中に入れて展開していくことを決定した」(吉岡事業部長)とのことだ。
今後は機能アップデートを進め、ブランド認知を推進するとともに機能面の評価向上を進めていく。
AIエージェントが台頭しても“SaaSは死なない”
また今回の発表では、本松取締役が「AIエージェントが台頭しても、SaaSは死なない」ことを強くアピールした。
「SaaS is dead」は、米Microsoft サティア・ナデラCEOのイベントでの発言が発端となっている。一時期、SaaSベンダーの記者発表会では、「AI台頭によってSaaSは今後どうなるのか?」という記者からの質問が相次いだ。
これを受け本松取締役は、「AIエージェントが進化することでSaaSが不要になるのではないかという見方があるが、AIエージェントには得意なこと、不得意なことがある。具体的にいえば、AIエージェントはやること・手順が決まっていることをやるのは得意で、間違ってもすぐ修正できる、必要な情報がそろっている、例外が少ない作業をやるのに適している。一方、状況に応じて考える必要があることは苦手で、間違えると影響が大きい、情報が足りないことや曖昧な部分が多いこと、例外が多い処理をするには向かない」と、現時点ではAIエージェントは万能ではないと指摘した。
その上で、ラクスではSaaSの中にAIエージェントを取り込み、両方を利用していくと説明した。
「SaaSとAIエージェントの役割がだいぶ整理され、SaaSの中にAIエージェントを内蔵した埋め込み型、AIエージェントが司令塔として複数SaaSを横断して利用するハブ型の二つのパターンに収斂していくのではないかと考える。現在、進んでいるのが埋め込み型だが、将来的にはもっとハブ型が増えていくことが考えられる。現在、ラクスでは埋め込み型アプローチでAIエージェント開発を進めている。利用者の方から見た場合には、インターフェイスはSaaSとなる。SaaSのインターフェイスを使って作業を行い、その裏でAIエージェントが必要に応じて働いてくれるようになるのではないか」(本松取締役)
こうしてSaaSとAIエージェントが役割分担をしながらユーザーを支援していくことで、「SaaSとAIエージェントは役割を分担しながら共存、進化していく」と本松取締役は強調した。