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日立、企業のAIネイティブな基幹システム刷新を支援する「モダナイゼーション powered by Lumada」を提供

 株式会社日立製作所(以下、日立)は21日、企業のモダナイゼーションを支援する新サービス「モダナイゼーション powered by Lumada」の提供を開始すると発表した。計画フェーズの「グランドデザイン策定サービス」と、実行フェーズの「業務・ITモダナイゼーションサービス」で構成。AIネイティブな基幹システムへの刷新を支援する。

「モダナイゼーション powered by Lumada」の概要

 日立 アプリケーションサービス事業部 アプリケーション・モダナイゼーション本部の後藤恵美本部長は、「事業成長を推進するには、IT刷新だけでなく、組織や業務を含めて、AIをフル活用するAIネイティブな事業基盤を構築する必要がある。その推進のためには、業務、AI&データ、IT、組織の4つの観点から、AIネイティブな事業基盤を考えていく必要がある」と述べ、「モダナイゼーションを通じて、データとAIを、企業運営の中心に据えたデジタルセントリック企業への変革を支援する」と語った。

日立 アプリケーションサービス事業部 アプリケーション・モダナイゼーション本部の後藤恵美本部長

 「グランドデザイン策定サービス」では、変革に必要な投資の優先順位などを踏まえたグランドデザインと、システム刷新に必要な技術選定やリスク評価を含む実効性の高いロードマップを策定する。これにより、投資の優先順位に悩む経営層の意思決定を支援するとともに、AIを前提とした業務変革とシステム刷新を同時に推進し、業務変革の成果を早期に実現するという。

 具体的には、企業が描く成長戦略と現状の差分を、GlobalLogicが提供する「CAST Imaging/Highlight」などを活用して、デジタルセントリック企業への変革に向けた成長戦略、業務特性分析、システムの事業貢献度分析などを行い、優先して取り組むべきプロセスを選定するとともに、売上拡大に向けた要所の設定や、業務やシステム、人財の観点を踏まえたグランドデザインを策定する。

事業成長に貢献するモダナイゼーション実現に向けたグランドデザインを策定

 また、グランドデザインをもとに、ハイパースケーラーなどテクノロジーパートナーを含めた技術選定や、リスク評価、コスト管理の基準、スケジュールの試算などを行い、実効性の高いロードマップを策定する。

業務・データ・IT・組織で整合確保・検討し、AIネイティブな事業基盤の実現方法を策定

 「グランドデザイン策定サービス」の提供においては、日立コンサルティングが支援することになる。

 日立コンサルティング Chief Global Marketing Officerの苅山真樹氏は、「グランドデザインから策定するというフルスペックだけの提案でなく、すでにモダナイゼーションに取り組んでいる企業への対応、推進しているモダナイゼーションと並行してAIエージェント適用を進めたいといった企業にも、状況にあわせたサービスを提供できる。また、業務KPIとシステムKPIを一体化した、統合ROI管理にも取り組む。マイクロサービスやクラウドリフト/シフト、最新技術適用による技術的負債の解消、デジタル人財とIT推進組織の強化も支援する。難易度の高い課題についても検討していくことになる」と述べた。

日立コンサルティング Chief Global Marketing Officerの苅山真樹氏

 一方、「業務・ITモダナイゼーションサービス」では、「AIを活用した業務自動化による業務変革の推進」や「AI活用に適したデータの品質を維持するデータマネジメント」、「ITシステムのアーキテクチャを適切に刷新」、「組織変革と人財育成」の4つの観点からサービスを提供。重要データの特定やデータ品質の維持、最新アーキテクチャへの刷新の支援を行うほか、システム刷新のすべての工程にAIを活用するとともに、豊富なグローバル人財の活用により、開発を迅速化。グランドデザインに基づく実行体制の構築やデジタル人財の育成も支援する。

 具体的には、日立が蓄積している経営から現場業務までの200種以上のAIエージェントの開発、運用実績をもとに、顧客の幅広い業務ニーズの変革に対応。また、日立のドメインナレッジを生かして、業務上の意思決定や判断の背景となっている暗黙知も含めた「重要データ」を特定して学習させることで、AIの推論能力を高度化する。これにより、実効性の高いAIエージェントの開発を可能にし、AIエージェントの早期適用を支援する。

日立で開発・運用実績のあるAIエージェントの環境やノウハウを活用

 さらに、データマネジメントの知見をもとに、継続的にデータ品質を確保するデータ統合基盤を提供。既存の基幹システムなどから、安全で、リアルタイムに、データを収集および統合し、効率的にデータをインプットすることで、AI活用に適したデータの品質を維持するデータマネジメントを実現。AIエージェントが担う業務の精度と信頼性を向上させることができる。

 「日立が持つ200種以上の実績あるAIエージェントをテンプレートとして利用することで、クイックに業務変革を進めるベースを作ることができるが、正確性を満たし、業務に適用することが難しいという課題が残る。人がやってきた業務を、AIが正しく判断するために、重要データをAIが理解しやすい形でデータ化した上で、人がチェックを加え、AIの自動化精度を高めていく必要がある。重要データの特定と、AIの推論能力を高めることが、AIエージェントを活用した業務変革の鍵になる。同時に、データマネジメントも重要になる。ここに踏み込んだサービスを提供する」(日立コンサルティングの苅山氏)とした。

これまで人が遂行していた業務を、先にAIが判断し、人がチェック・育成する

 AIエージェントのデータアクセス制御などのセキュリティの課題に対しては、グローバルな専門家の監修のもと、業界や地域の規格に準拠したベストプラクティスに基づき、構築および運用を行うことで、データの収集、活用のライフサイクル全体を通じたデータガバナンスを実現する。

前処理でAIが理解しやすい形に変換、データの鮮度・信頼性・セキュリティを確保

 加えて、日立が行ってきた数百件以上のモダナイゼーション実績を活用することで、ITシステムを、迅速性を重視する領域と、安定性を重視する領域に切り分け、特性と優先順位に基づいて、コンポーザブルなアーキテクチャに刷新する。ここでは、日立の開発フレームワークにより、全工程において、AIを活用しながら、高品質な仕様書の再生から、適切なコード生成までを実現。すでに実績を持つモダナイゼーションツールを組み合わせることで、AIとの親和性や、メンテナンス性に優れた資産へと刷新することができるという。さらに、ITシステムの要件に応じて、拡張性や耐障害性の高い基盤、社会インフラ向けの堅牢な基盤も提供するという。

 日立の後藤本部長は、「変化に対応し、モダンに作り替える領域と、安定性を重視して、レガシー資産を有効活用する領域を切り分け、それぞれの領域の特性に応じたアーキテクチャを選び、システムを刷新する。環境変化が激しい領域には、日立のミッションクリティカル技術に加えて、GlobalLogicやHitachi Digital Servicesのグローバルな構築、運用ノウハウを活用し、モダンアーキテクチャを実現する。段階的なモダナイゼーションを提案できる点も特徴である。また、設計書のリバース、ナレッジの参照、ソースコード生成、テストコード生成など、モダナイゼーションの全ステップに生成AIを活用していく」と説明。

ITシステムの適切なアーキテクチャ刷新を加速

 さらに、「日立が持つ安全なデータセンター基盤に移行してもらい、日立が蓄積した方法論やツール、ソリューション、デジタル人財を活用して、そこで確立した結果を返して、モダナイゼーションを図るといったサービスの準備も進めている」とした。

日立のモダナイズ実行環境とグローバルなデジタル人財を活用した迅速な開発

 そのほか、デジタル人財の育成と組織文化の変革も支援。グランドデザインに基づく実行体制の構築や、AI活用やアジャイル開発を牽引する人財の育成、実践による定着化までを包括的に支援する。これにより、ROIやKPIの達成状況を可視化し、ビジネス部門とIT部門が共通目標に向けて継続的に改善できる環境づくりに伴走するという。

策定したグランドデザインに沿って、実行体制づくりや人財育成に伴走

 なお、日立がLumada 3.0のビジョンを体現するAIソリューションと位置づける「HMAX」にも、同サービスを活用するという。すでに、日立のビルシステム事業で提供する「HMAX for Building:BuilMirai(ビルミライ)」(以下、BuilMirai)の進化に向けて適用したという。

 ここでは、エレベーターなどのビル設備メンテナンスにおける人手不足に対して、ベテランの暗黙知をデジタル化し、AIによる業務の自動化を推進。業務変革と並行し、設備の集中管理を担う管制システムなどのIT刷新を進めるグランドデザインを策定している。

 「BuilMiraiは、AIを活用した業務変革と、基幹システムの刷新を同時に進めているものであり、AIが読めるデータ基盤の構築にも取り組んでいる。日立グループ内で実践するカスタマーゼロの取り組みと位置づけ、顧客変革のスピードを加速しながら持続的な成長を実現する」(日立の後藤本部長)としている。

デジタルセントリック企業に向けたAIネイティブな事業基盤を実現し、顧客とともに新たな未来を創造