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NTTが純国産LLMの最新版「tsuzumi 2」を発表、日本語性能がさらに向上
2025年10月21日 11:55
NTT株式会社は20日、同社が独自開発した大規模言語モデル(LLM)「tsuzumi」の最新版「tsuzumi 2」を同日より提供開始すると発表した。
NTTは2023年11月にtsuzumiを発表し、2024年3月より発売を開始した。NTT 代表取締役社長 社長執行役員 CEOの島田明氏によると、これまでに生成AI関連の受注が国内で521件、海外では1300件以上あったという。島田氏は受注金額についても触れ、「昨年1年間の受注額は435億円だったが、今年度は第1四半期ですでに670億円と急速に増加している。このペースで推移すると、今年度末には1500億円、2027年度には年間で5000億円を超える見込みだ」としている。
島田氏は、安全保障や産業競争力強化という観点から、「各国が自国開発AIを重視する傾向にあり、日本政府もAI基本計画で国産AI開発を強化する動きがある」とし、プライベートLLMとして活用可能な純国産モデルであるtsuzumiの存在をアピールした。
島田氏はtsuzumiについて、「良質な日本語学習データを活用し、日本文化や慣習を深く理解する能力を備えている上、GPUで動作するため、オンプレミスの環境でも経済的に利用できる。また、権利保護を意識した学習データのコントロールやアップグレードなどのリリースは、外部環境や情勢変化の影響を受けずに安定的に実施できる」と説明する。
tsuzumi 2では、顧客ニーズや市場動向をもとに基盤モデルをアップグレードし、業務適応力や特化性能を進化させた。企業内ドキュメントの長文読解や複雑な文脈、意図の理解といった業務対応力が向上したほか、特化型LLMの構築においても特定業界の専門知識を強化し、少ないデータでのチューニングが可能となった。
専門知識が必要な業務に関しては、特にニーズの高かった金融、医療、自治体といった業界を中心に学習を強化した。島田氏は、「今後も顧客ニーズに応じてその他の業界・領域についても強化していく予定だ」としている。
tsuzumi 2の進化のポイントとして、NTT 執行役員 研究開発マーケティング本部 研究企画部門長の木下真吾氏は、1)日本語性能がさらに向上したこと、2)特化型モデルの開発効率が向上したこと、3)低コストで高いセキュリティを維持した国産AIであること――を挙げる。
日本語性能については、世界的なベンチマークの平均値から、「日本語知識・解析力・指示遂行力・安全性の4項目で、同サイズ帯のモデルで世界トップクラスの日本語性能を発揮し、数倍以上大きなモデルにも引けを取らない性能を見せた」と木下氏。
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日本語性能がさらに向上
特化型モデルの開発については、RAGとファインチューニングによって開発効率が向上したという。木下氏は、「NTTの財務システムに関する社内ヘルプデスクに活用したところ、世界トップクラスのRAG性能を実現したほか、ファイナンシャルプランナー2級試験において、他モデルより少ないチューニングデータで合格ラインに達した」と事例を挙げた。
コストについては、「300億パラメーター、1 GPUで動作可能な設計のため、オンプレミスでの運用が可能。約500万円規模のハードウェアでも稼働できるのではないか」と木下氏。セキュリティについては、「ほかのLLMと比較しても、差別や誤情報、擬人化による心理的依存などのリスクが低いと評価されている」と、モデル自身の安全性をアピールした。
純国産AIとしてのこだわりについても、「海外モデルをベースに日本語を追加学習するケースとは異なり、tsuzumi 2では開発プロセスから著作権やライセンスまでを完全にコントロールできる」(木下氏)として、最初から国産AIとして構築することの重要性を強調した。