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JAL、オンプレからSnowflakeへの移行を説明 さらにStreamlitを導入し社内データの可視化を実現
2025年5月20日 06:30
データクラウドサービスのSnowflake合同会社は、日本航空(JAL)におけるSnowflake Streamlit活用事例についての記者説明会を、5月19日に開催した。
Streamlitは、オープンソースのPython用Webアプリケーションフレームワーク。特に、データの可視化や分析などのWebアプリケーションを簡単に開発するのに強みを持つ。Snowflakeのデータクラウド環境にもStreamlitが用意され、Streamlitアプリを構築できるようになっている。
記者説明会では、日本航空株式会社の庄司稔氏(デジタルテクノロジー本部 デジタル戦略部 活用推進グループ長)が登壇し、同社でのSnowflakeおよびStreamlitの導入と活用について語った。
DWHをオンプレミスからSnowflakeに移行、2024年1月に本番稼働開始
Snowflakeを導入する前の2019年の時点で、日本航空では、オンプレミスのデータウェアハウス(DWH)やETLを使い、またAmazon Web Services(AWS)上でTableauを利用していた。一方、Snowflakeへの移行を想定してデータ分析をクラウドに移す意味で、Amazon Redshiftも採用していたという。
Snowflakeを採用した目的は、まず事業の変化がある。コロナ禍などもあって旅客機のFSC(フルサービスキャリア)事業の一本足だけでは事業が厳しい中で、ライフや、地域創生、貨物、LCCなどへの展開を強化していくにあたり、「これらの分野では多くの世界の技術を使っているので、オンプレミスは阻害要因になると考えた」と庄司氏は語る。
そのほか、DXの加速のために、SaaSなどのクラウドによって素早くビジネスにシステムを提供することや、データ活用にはツールがオンプレミスでは難しいことなどから、Snowflakeを選択したという。
そして、オンプレミス環境の更新期限が2024年3月に迫っていたこともあって、それを期限として移行を決めた。2023年3月ごろから、システム移行とデータ移行を経て、2024年1月に本番稼働を開始し、業務を順次切り替えていった。約3カ月の並行稼働期間を設けたこともあり、比較的スムーズに移行できたという。
Snowflakeの活用については「データシェアが魅力」だと庄司氏は言う。
現状では、JALグループ内でのデータ連携により、各事業のデータをしっかりとらえていく段階だ。
次の段階としては、提携している会社とのデータ連携により、特にアライアンスを結んでいる航空券のデータなどを取り込んでいくところを今進めているという。
さらに、国勢調査などの公開データや、販売されている人流・行動データなどを自社データと組み合わせてサービスをより良くしていくことを考えていると同氏は語る。そしてゆくゆくは、外部へのデータ共有により、マネタイズや社会の発展への寄与を考えているという。
データドリブンな意思決定に向けてStreamlitアプリ開発の体制を整備
さて、Snowflakeを導入したあと、「事業会社のIT部門としてはDXに貢献していくことが求められていた」と庄司氏は語る。
そんな中で、NTTドコモが全社規模でStreamlitを導入して活用していることを、Snowflakeから紹介された。そこで2024年4月にNTTドコモを訪問し、どうやってデータをビジネスにつなげていくか、どのような体制やツールが必要か、それをさらにどうやって広げるかについて話を聞いたという。
実際にStreamlitを活用するにあたっては、Streamlitからデータに簡単にアクセスできる環境を、グループのIT会社であるJALデジタルとともに構築した。アプリ作成のためのデータ環境を2024年10月から運用開始するとともに、Snowflakeでデータシェアのためのプラットフォームを作って、アプリを展開したという。
具体的な取り組みとしては、データ整備とStreamlitアプリの作成により、データドリブンな意思決定につなげることを目指した。
データ整備としては、まずさまざまな自社データの中から、課題解決に必要なデータを4種類に分類した。1)業務システムから抽出したファイル、2)担当者がPCで保管しているファイル、3)書類や面談などの記録にはなっているが、電子化されていない情報、4)課題解決のためにこういうデータが欲しいが、まだそのプロセスがない――といったものだ。
こうした社内データをStreamlitアプリを作ることで可視化したという。「一回可視化して終わりではなく、継続して反復していく仕組みが大事」という考えから、Streamlitを使うことで、最新のデータをミスなく利用でき、精度が上がって生産性が上がる効果がある、と庄司氏。また、意思決定をする人たちにも迅速かつ精度の高い情報を提供でき、右肩上がりか下がりかなど予測のためのデータをリアルタイムで見せることもできると語った。
こうした取り組みは、3カ月を1つのターンとして、初歩的な分析をして使ってもらうということを複数回繰り返した。具体的には、本部のKPIの可視化や、機内サービスの分析などに取り組んだ。
開発体制としては、「いきなりはStreamlitアプリを書けない」ということから、ビジネスの理解とデータの理解を元に、要件を明文化。それにより、現業部門、DX部門、開発部門の役割を整理し、Streamlitアプリの開発体制を整備して、数を増やしていきたいという。
DX部門は、現場に赴いて同じ空気の中で寄り添って、ビジネスの課題とデータをひもづけるための要件を書き、ゴールを描く。そして開発においては、自社の開発要員だけでなく、デジタル部門以外で開発スキルを持った人や、東京以外の地方の人にも開発に参加してもらうことを進めているという。