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最新版「RHEL 7」に搭載される特徴的な6つの機能、レッドハットが説明

CentOSとの提携理由にも言及

Red Hat プラットフォーム事業部門 シニアディレクターのMark Coggin氏

 レッドハット株式会社は2月6日、同社の商用Linuxディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」の製品戦略に関する記者説明会を開催。RHELクローンであるCentOSプロジェクトとの提携や、次期バージョンであるRHEL 7について、米Red Hat プラットフォーム事業部門 シニアディレクターのMark Coggin氏が説明した。

「OpenStackなどの開発にはCentOSがベスト」

 Coggin氏はまず、RHELのオープンソース開発プロジェクトの関係として、Linuxカーネルをはじめとする開発元(アップストリーム)プロジェクトに参加し、そこで開発された多数のソフトウェアを同社の開発版Linuxディストリビューション「Fedora」に取り込んでいるという過程を解説。Fedoraで各種ソフトウェアを評価し、品質保証を経て、サポートを含めてRHELとしてリリースしていると説明した。

 それを踏まえ、OpenStackのような新しく活発なプロジェクトでの開発において、ベースとなるOSとして、Fedoraは開発版であるため安定性(バージョンや仕様が固まっていること)が十分でなく、RHELでは有償のサブスクリプション契約が必要であることが問題となっていると語る。そのうえで「安定していて無償で使えるCentOSがそのニーズに応える」と、CentOSとの提携理由を説明した。

 この背景としては、OpenStackなどクラウド関連のオープンソースソフトウェアが、Canonical社のLinuxディストリビューション「Ubuntu」をメインのプラットフォームとして開発されることが多くなってきていることが関係していると想像される。

 Coggin氏は、「RHELが製品としてナンバーワンであることに変わりなはく、Fedoraがイノベーションのためにあることにも変わりはない。OpenStackのようなソフトウェアを開発するにはCentOSがベストであるということだ」と、同社におけるCentOSの位置づけを説明した。

 なお、同社のCentOSへの関与は資金援助などのみで、RHELのようなサポートや、バグフィックスなどの直接的な機能面への関与はないと説明。「あくまでもCentOSとRHELは別物」と強調した。

開発元(アップストリーム)からFedoraへ、そしてRHELへという開発の流れ。同じことはレッドハットが扱うほかのソフトウェアにもいえる
OpenStackなどの開発に向けては、FedoraやRHELだけではなく、新しくOSが必要という説明
Fedora、CentOS、RHELのそれぞれの位置づけ

RHEL 7の6つの主な機能を紹介

 Coggin氏は続いて、2014年度にリリースを予定されているRHELの次期バージョン「RHEL 7」について解説した。現在開発中であり、2013年12月にベータ版がリリースされている。

 氏はRHEL 7のハイライトとして、6つの機能を紹介した。なお、これらは必ずしも従来のRHELになかった機能ではないが、RHEL 7で特徴的なものだという。

 1つ目は、パフォーマンス改善のためのツールだ。パフォーマンスの計測や監視、チューニングのために、Performance Co-Pilot(PCP)やThermostatなどのツールが提供される。

 2つ目は、ファイルシステムの変更だ。デフォルトのファイルシステムが従来のEXT4からXFSに変更される。XFSでは最大容量が500TBになる。EXT4も引き続き利用が可能であり、最大容量も50TBまで拡張される。なお、RHEL 7では新しくBrfsにも対応する。

RHEL 7のハイライト1:パフォーマンス改善のためのツール
RHEL 7のハイライト2:デフォルトのファイルシステムがXFSに

 3つ目はコンテナ型仮想化の機能だ。cgroup、namespaceといったLinuxカーネルの機能を利用したLXCにより、、1つのカーネルの上で複数のOS環境を作り出せる。レッドハットは2013年9月に、LXCベースのコンテナ環境をデプロイするソフト「Docker」を開発するDocker社と提携し、すでにRHEL 6.5にも取り込んでいる。これにより、KVMのようなマシン全体を仮想化するのに比べて、すばやく軽く仮想環境を作れるため、アプリケーションレベルで分離する用途、特にOpenShiftのようなPaaSプラットフォームに有効と考えられる。

RHEL 7のハイライト3:コンテナ型仮想化

 4つ目が、Windowsとの相互運用性だ。認証メカニズムのSSSD(System Security Services Daemon)により、Active DirectoryでRHELのユーザー認証を一括管理したり、Active DirectoryとRHELのユーザー管理を同期したりできる。

RHEL 7のハイライト4:WindowsのActive Directoryとの相互運用性

 5つ目が、容易なインストールとデプロイ。新しいインストーラによりインストールのときの設定を容易にするほか、設定済みのテンプレートによりすばやくサーバーを配備できる。また、RHEL 6からRHEL 7へのアップグレードツールを提供し、再インストールせずにRHEL 6環境をRHEL 7に移行できるようにするという。

 さらに、システム初期化とサービス管理の仕組みとして新しくsystemdを採用。重要なサービスを優先して起動するなどの機能により、OSの起動時間を短縮するという。

RHEL 7のハイライト5:容易なインストールとデプロイ。さらに、systemdにより起動時間を短縮する

 6つ目が、システム管理フレームワークのOpenLMIだ。管理対象マシンにエージェントをインストールし、複数のサーバーをリモートから統合的に管理できるという。

RHEL 7のハイライト6:システム管理フレームワークのOpenLMI

 Coggin氏は最後に、「RHEL 7は今年(2014年)のローンチを予定しているが、イノベーションは続いていく」と語って説明を締めくくった。

【お詫びと訂正】初出時、ローンチを「今年度」としておりましたが、「今年(2014年)」の誤りでした。お詫びして訂正致します。

高橋 正和