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日立が2015中期経営計画を発表、売上高10兆円・最終利益3500億円以上が目標
(2013/5/17 06:00)
株式会社日立製作所(以下、日立)は16日、2015年度を最終年度とする「2015中期経営計画」を発表した。
イノベーション、グローバルなど3点を経営のフォーカスポイント
2015中期経営計画では、「成長の実現と日立の変革」をテーマに掲げる一方、サービス事業を強化し、イノベーションを実現する「イノベーション」、社会イノベーション事業をグローバルに提供し成長する「グローバル」、業務のグローバル標準化と変化に迅速に対応する経営基盤の確立に取り組む「トランスフォーメーション」の3点を経営のフォーカスポイントにあげた。
数値目標としては、最終年度となる2015年度に、売上高で10兆円、EBIT(営業利益)率で7%超、当期純利益は3500億円超を目標にする。
また、1株あたり当社株主に帰属する当期純利益は70円超(2012中期経営計画平均で55円)、製造・サービスなどの株主資本比率は30%超(2012年度実績は23.2%)、サービス売上高比率は40%超(同30%)、海外売上高比率50%超(同41%)、国内人員数20万人(同20万8000人)、海外人員数15万人(同11万8000人)を目標とするほか、Hitachi Smart Transformation Projectを通じたコスト削減効果は、2012年度実績の750億円に対して、2013年度見通しが1000億円、2015年度までの累計で4000億円の効果を見込む。
日立の中西宏明社長は、「2012年度までの2012中期経営計画は、2009年度の大きな赤字からの復活を目指すリカバリー施策であった。2015中期経営計画は、それに対する手応えをもとに、グロース(成長)に取り組むものになる」と説明。「海外売上比率は、2012中期経営計画でも50%を掲げていたが、コンポーネントビジネスをシンプル化するなど、ポートフォリオの変更があって達成はできなかった。今回の海外売上比率50%の目標は、具体的なソリューションを提供するという点で、チャレンジングな目標となる。これを達成するには、世界中からタレントを集めなくてはならない」などと述べた。
グローバル展開の強化にあわせて、地域別営業、コンサルティング、マーケティング、エンジニアリング能力の拡充のほか、クラウドを活用したプロジェクト管理力やプラント建設力、サービス提供力の強化を進める姿勢をみせた。加えて、社会事業強化をけん引する地域に密着したR&Dの強化、システムプロダクトとIT・クラウドを結んだ世界最先端の研究開発の展開などを進める。
また、中西社長は、「10兆円という売上高には大きくこだわるつもりはない。だが、社会イノベーション事業を推進する規模として、これぐらいの規模がないと難しい。経営者としての問題意識によるもの。また、事業は放っておくと腐る。それをそぎ落としてきたのがここ数年の取り組みだったが、一番のパワーは、伸びる領域があるという点。しがみつかないで済み、こっちの方向だ、と成長を目指すことができる。そうした点でも10兆円という数字に意味がある」とも語った。
クラウドを活用してイノベーションを実現
社会イノベーション事業の推進強化としては、クラウドを活用したサービス事業を通じて、イノベーションを実現。2015年度にはサービス売上高比率を、システムソリューションの売上高を含んで、40%超に引き上げる。サービスでは、設備・機器保守サービス、アウトソーシング・運用サービス、経営支援サービスへと事業範囲を拡大。また、クラウドを活用したサービス基盤として、「収集・蓄積」、「知識・分析・評価」、「経営施策の立案」といった形へと拡大し、ビジネスインテリジェンスの活用範囲を広げていくという。
今回の中期経営計画の策定にあわせて、日立グループ・ビジョンを、新たに、「日立は、社会が直面する課題にイノベーションで応えます。優れたチームワークとグローバル市場での豊富な経験によって、活気あふれる世界を目指します」とし、中西社長は、「B2Bだけでなく、B2S(Business to Society)が、われわれの主戦場になってくるだろう。そこにおいて、われわれのグループ・ビジョンを推進していくことになる」と語る。
そして、「社会イノベーション事業で世界に応える日立へ」、「SOCIAL INNOVATION-IT'S OUR FUTURE」を掲げ、「グローバルメジャープレーヤーへの変革を加速する」(中西社長)などとした。
同社では、2015中期経営計画を、日立グループ・ビジョンの実現に向けた施策と位置づけ、その中核となる社会イノベーション事業では、「社会・お客さまが抱える課題をともに見いだし、One Hitachiで解決」、「プロダクト、サービス、IT(クラウド)を組み合わせたソリューションによりイノベーションを実現」の2点を標榜した。
プロダクトでは、幅広いシステムノウハウおよび技術を活用し、各地域のニーズに応えるプロダクトを提供。サービスでは、保守サービスから運用・アウトソーシング、経営支援までをサポートする。またクラウドを活用したサービス基盤では、最先端のITを活用し、収集・蓄積したデータの分析・評価を通じた知識化を提案していくという。
「経営支援のところまで踏み込んできたい。だが、そこでコンピュータを買ってくれではなく、クラウドサービスを活用して、最先端のITをお客さまに届けることができる。日立は、そのためにえりすぐりの製品とサービスを取りそろえることができるが、それを単に製品として提供するのではなく、ソサエティに対して貢献していくということを、可能な限り推進していく」などと語った。
さらに、中西社長は、いくつかのソリューションを具体的な事例として掲げ、「これまでのように鉄道システムという観点でとらえると、車両製造や保守、運行管理といった範囲にとどまる。だが、これからの日立が目指していくのは、交通トータルソリューションシステム。運行計画を正しくするには、車両の故障がないということが大切であり、そうしたことを含めて、インフラ全体として社会に貢献する形で提案していくことになる。国によっては、公共交通機関そのものを、どう利用していくべきかといったことが課題となっているケースもあり、そうしたことまで含めて提案をしていく必要がある」としたほか、エネルギー分野では、Energy Saving as a Serviceとしてメリットシェア方式を用いて、エネルギー費用の削減率によって、利益を得るという仕組みを採用していることなども示した。
建設機械分野においては、現在位置や稼働情報、故障情報を把握し、クラウドを活用することで、顧客資産の稼働率向上を支援している例も紹介。ここでは企業向けクラウドサービスのGlobal e-Service on TWX-21を利用することで、ユーザー企業と一緒に情報を活用。部品、機械、市場動向、故障発生を予測して、効率的な稼働を支援している例も示した。
事業構造改革にも踏み込む
一方、Hitachi Smart Transformation Projectにおいては、2015年に向けて、従来施策に加えて、事業構造改革への踏み込むことを掲げ、「グループ構造の簡素化」、「グローバルシェアードサービスの拡大」、「IT・業務システムのグローバル標準化・集約化」に取り組むことを示しながら、「これまでのHitachi Smart Transformation Projectへの取り組みによって、戦える形になってきた。それならば戦おうという姿勢を示したものといえる」とした。
グループ体制を、お客さまの観点からみた6つの市場対応型組織へ改革。「インフラシステムグループ」、「情報・通信システムグループ」、「電力システムグループ」、「建設機械グループ」、「高機能材料グループ」、「オートモーティブシステムグループ」の体制とし、「事業拡大と集中による社会イノベーション事業の強化に取り組む。三菱重工業との合弁による火力発電システム事業は、『日本で強い』事業から、『世界で勝てる』事業を目指す」とした。
なお、デジタルメディア事業に関しては、「日立が、この分野でイニシアティブを取るのは無理である。そうしたことを踏まえながら、よく考えて、決断して、実行していく。ビジネスとしての存在感を小さなものになる」と語った。