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日立中間決算、増収増益も通期見通しは上方修正せず

~16四半期連続の黒字を達成、好調な海外売上が4割を占める

 株式会社日立製作所は、2014年3月期の中間決算(2013年4月-9月)を発表。連結売上高は対前年同期比3%増の4兆4706億円、営業利益は6%増の1734億円となった。

 代表執行役 執行役副社長 CFOの中村豊明氏は「16四半期連続で黒字達成となり、黒字体質が定着できた」と分析。下期については消費税導入前の駆け込み需要が期待できるものの、中国、米国市場に不透明さがあるとして上方修正は行わず、7月30日に公表した売上高9兆2000億円、営業利益5000億円のままとした。

16四半期連続の黒字達成で、黒字体制が定着

株式会社 日立製作所 代表執行役 執行役副社長 CFO 中村豊明 氏

 情報・通信システム事業グループの中間期売上高は6%増の1兆1720億円、営業利益は8億円増の396億円、EBITはプラス29億円の372億円でいずれも7月発表の見通しを上回った。

 日立の2014年3月期 第2四半期連結累計期間の売上高は対前年同期比3%増の4兆4706億円、営業利益は6%増の1734億円、受取利息及び支払利息調整後税引前四半期純利益(EBIT)は14%増の1420億円、税引前四半期純利益は17%増の1355億円となった。

 CFOの中村豊明 副社長は、「連結累計期間も増収増益となった。これで16四半期連続の黒字達成となり、黒字体質が定着できたと言えるのではないか」と分析している。

 営業利益の主な増減要因としては、売価下落によるマイナスが520億円、操業度悪化はマイナス620億円、原材料高騰による影響がマイナス100億円とネガティブな要素もあったものの、2015 中期経営計画の「Hitachi Smart Transformation Project」効果でプラス430億円、さらに為替影響でプラス440億円、原価低減などの氏セクでプラス898億円のプラス材料があった。結果として、営業利益は対前年同期比98億円増となった。

 「操業度の悪化については、下期になってから改善し、プラスに転じていきたい」(中村氏)

 国内・海外売上高はマイナス5%の2兆4130億円、海外売上高が14%増の2兆576億円。国内の占める割合が54%で、海外が41%と海外の好調な売り上げが好調な売り上げの要因となっている。

2014年3月期 中間期 連結損益計算書
営業利益の主な増減要因
国内・海外売上高
要約連結貸借対照表
連結キャッシュフロー計算書

 インフラシステム、情報・通信システム、電力システム、建設機械、高機能材料、オートモーティブシステムの6つの事業グループと金融サービスを含めた事業グループ別売上高・営業利益・EBITは、インフラシステムグループの売上高が5%増の1兆5563億円、営業利益がマイナス81億円の123億円、EBITがマイナス36億円の147億円。

 情報・通信システムグループの売上高は6%増の1兆1720億円、営業利益は8億円増の396億円、EBITは29億円増の372億円。電力システムグループの売上高は9%減の3763億円、営業利益は52億円減の21億円、EBITは24億円減の34億円。建設機械グループの売上高は3%減の3580億円、営業利益は66億円増の294億円、EBITは31億円減の266億円。高機能材料グループの売上高は1%減の7394億円、営業利益は116億円増の516億円、EBITは136億円増の523億円。オートモーティブシステムグループの売上高は6%増の4267億円、営業利益は15億円増の208億円、EBITは162億円減の20億円。金融サービスの売上高は9%減の1636億円、営業利益は23億円増の160億円、EBITは18億円増の174億円。

事業グループ別売上高・営業利益・EBIT(1)
事業グループ別売上高・営業利益・EBIT(2)

 10の事業部門別売上高、営業利益、EBITでは、情報・通信システムの売上高は対前年同期比6%増の8847億円、営業利益は41億円増の313億円、EBITは65億円増の289億円。電力システムの売上高は9%減の3763億円、営業利益は52億円減の21億円、EBITは24億円減の34億円。

 社会・産業システムの売上高は10%増の5973億円、営業利益は5億円減の26億円、EBITは31億円増の63億円。電子装置・産業システムの売上高は2%減の4998億円、営業利益は91億円減の106億円、EBITは78億円減の93億円。

 建設機械の売上高は3%減の3580億円、営業利益は66億円増の294億円、EBITは31億円減の266億円。高機能材料の売上高は1%減の6695億円、営業利益は110億円増の492億円、EBITは116億円増の492億円。

 オートモーティブシステムの売上高は6%増の4267億円、営業利益は15億円増の208億円、EBITは162億円減の20億円。デジタルメディア・民生機器の売上高は7%増の4591億円、営業利益は15億円増のマイナス8億円、EBITは9億円増のマイナス10億円。その他(物流・サービス他)の売上高は3%増の5749億円、営業利益は22億円減の185億円、EBITは10億円増の225億円。

 金融サービスの売上高は9%減の1636億円、営業利益は23億円増の160億円、EBITは18億円増の174億円。全社および消去となった売上高がマイナス5398億円、営業利益がマイナス66億円、EBITがマイナス229億円。

 情報・通信システムの詳細セグメント別売上高は、ソフトウェアが752億円、サービスが4954億円、ストレージが942億円、サーバーが380億円、通信ネットワークが594億円、その他が705億円。営業利益ではソフトウェア/サービスが187億円、ハードウェアが84億円。ソリューションも含めたストレージソリューション事業の売上高は1750億円。

事業部門別売上高・営業利益・EBIT(1)
事業部門別売上高・営業利益。EBIT(2)
2014年3月期 連結決算の見通し
事業部門別売上高・営業利益・EBIT見通し(1)
事業部門別売上高・営業利益・EBIT見通し(2)

オリンピック招致成功とアベノミクスの第四の矢で、日本市場に明るいきざし

 上半期の情報・通信システムは不採算案件もあったものの、「新規受注は対前年比では改善のきざしが見えている。元々第4四半期の売上が大きい傾向にあり、不採算案件の払拭は実現しなければならないが、戦略的案件も存在することを考えるとほぼ前年と同じ程度となるのではないか」(中村氏)という。

 2014年3月期の連結決算の見通しについては、7月30日に発表した売上高9兆2000億円、営業利益5000億円、EBIT2100億円のまま変更しない。

 下半期については、消費税増税前の駆け込み需要なども期待できるものの、「中国市場の先行き懸念、米国経済も今回は危機が回避されたものの年明けの状況が不透明など不安定要素も多い。見通しの変更は行わず、実績で上回れるようにしたい」(中村氏)と慎重だ。

 ただし、事業部門別見通しでは、7月の発表内容を変更した。情報・通信システム売上高は7月発表の見通しを2%上回る1兆8600億円で、営業利益の1200億円、EBITの1100億円はそのまま据え置く。電力システムは売上高の7500億円、営業利益の150億円、EBITの140億円も前回発表通り。

 社会・産業システム売上高は4%上回る1兆4300億円だが、営業利益は50億円減の610億円、EBITは10億円減の620億円。電子装置・システムの売上高は2%増の1兆1100億円、営業利益は30億円増の500億円、EBITは40億円増の480億円。

 建設機械は売上高8000億円、営業利益820億円、EBIT780億円とそのまま据え置く。高機能材料の売上高は2%増の1兆3400億円、営業利益は140億円増の980億円、EBITは120億円増の950億円。オートモーティブシステムの売上高は2%増の8400億円、営業利益は10億円増の420億円、EBITは180億円減の230億円。

 デジタルメディア・民生機器の上高は4%増の8500億円、営業利益0億円、EBITマイナス30億円は前回発表のまま据え置く。その他の売上高は3%増の1兆1800億円、営業利益は据え置きで450億円、EBITは20億円増の450億円。金融サービスは3%減の3200億円、営業利益は10億円増の310億円、EBITは30億円増の330億円。

 現在進行中の「2015 中期経営計画」については、目標達成に向け業務プロセス、グループ構造に踏み込んだTransformationを実施し、グローバルSCM、グローバル調達拠点の活用、本社改革推進などを進めている。

 今後について中村氏は、「これまでの経験からすると、今年下半期には消費税増税前に駆け込み需要があり、来年度はその反動で厳しい状況になるという見方もあるが、東京オリンピック招致が実現し、アベノミクスに第四の矢が放たれたことで、成長率からいえば中国となるが、先進国の中では日本は成長市場となる可能性がある」と日本市場に明るい兆しが見えていると指摘した。

2015 中期経営計画「Hitachi Smart Transformation Project」の進捗と今後の展開
2015 中期経営計画の着実な推進(1)
2015 中期経営計画の着実な推進(2)
情報・通信システム売上高・営業利益 詳細

三浦 優子