ニュース

日本HPが最新PC製品を一気に発表 AI PCをメインストリームにまで拡充

Poly Studio V12ビデオバーなど、Polyのビデオ会議システムもアピール

 株式会社日本HPは11日、法人向けおよび個人向けの次世代AI PC、およびワークステーションなど19モデルを発表した。また、Polyブランドによるビデオ会議システムなども発表した。

 日本HP 執行役員 パーソナルシステムズ事業本部の松浦徹事業本部長は、「今回の製品発表によって、AI PCをメインストリームにまで拡充することになる。法人向け、プロフェッショナル向け、個人向けのすべてのカテゴリーにおいて、新製品を投入することで、AIを搭載したデバイスと、Polyによる各種製品を組み合わせたポートフォリオ全体で、より良い体験を提供する。AIを使うだけでなく、AIを作る領域もサポートできる」と述べた。

 また、「オンデバイスAIならではのスピードと低コストを実現するとともに、オンデバイスAIだからこそ求められるセキュリティとプライバシー保護を強化し、PCだけでなく、Polyなどとのコラボレーションによって、AIをさらに快適に使ってもらえる環境を実現していく」とも話した。

日本HP 執行役員 パーソナルシステムズ事業本部の松浦徹事業本部長

 加えて、「日本HPは、国内PC市場のブランド別マーケットシェアにおいて、13四半期連続でトップシェアを獲得している」と前置きしながら、このほか、日本HPが打ち出している事業方針「Future of Work(未来の働き方)」について触れ、「トップシェアメーカーである日本HPが取り組んでいるのは、Future of Workの実現である。企業および個人が生産性を高めながら、やりがいを感じ、生き生きと仕事をし、成長や成功につなげることを目指している。それをサポートするのが今回の新製品になる」とした。

13四半期連続で国内PCマーケットシェアNo.1(ブランド別)を達成したという

 Future of Workでは、「AIを搭載したデバイスの提供」、「ポートフォリオ全体でより良い体験を提供」、「適切なツールでIT担当者を支援」、「データ活用のプラットフォーム」の4点から取り組んでいくという。

Future of Workの実現をリード

 松浦事業本部長は、「HPの調査によると、ナレッジワーカーの73%がAIは仕事を楽にしてくれると回答しており、68%がAIは仕事を楽しむ新たな機会を提供してくれると感じていると回答しているように、AIをポジティブにとらえているナレッジワーカーが多い。AIの活用によって、Web会議や提案書の作成、文書の要約が楽になっている。AIがFuture of Workの実現を推進することになる」とした。

 本誌の単独取材に応じた日本HPの岡戸伸樹社長は、「オンデバイスAIの登場によって、まさに自分の伴走者が、すぐ横にいるという環境が生まれることになる。多くのお客さまからPoCの話をもらっており、これから具体的なユースケースが数多く出てくることになるだろう。AIに対する期待値が高いことを感じている。AIを活用することで、Future of Workを加速していく」と述べた。

日本HPの岡戸伸樹社長

 法人向けPCでは、ノートPCとして「HP EliteBook 8」シリーズで5機種、デスクトップPCでは「HP EliteDesk 8 Mini G1aDesktop Next Gen AI PC」を発表した。いずれも、すでに発表しているフラッグシップのElite Ultra / Xシリーズの下位モデルと位置づけている。

 日本HP パーソナルシステムズ事業本部CMIT製品部の岡宣明部長は、「Elite Ultra / Xシリーズは、最新機能をいち早く利用したいというユーザーが導入するのに対して、今回発表したHP Elite8シリーズは、幅広い顧客層に展開するものであり、エンタープライズユーザーに対して、標準PCとして提案できるAI PCになる」とした。

2025年春 法人向けAI PCラインアップ

 HP EliteBook 8シリーズは、AIワークロード用に設計。カラーはグレイシャーシルバーとし、スタイリッシュなデザインを採用している。13.3型、14型、16型のクラムシェルと、13.3型のコンバーチブルを用意。最大50TOPSのNPUオプションでは、従来の非NPUモデルと比較して電力効率を最大224%向上し、AI画像生成は最大で43倍高速化しているという。保守が可能なキーボードと、交換が可能なスクリューレスバッテリーも用意している。

HP EliteBook 8シリーズの再設計

 さらに、標準搭載している覗き見検知機能を第5世代のSure View 5へと進化。AIの強化とWebカメラセンサーを利用することで、覗き見が検出されるとPCが通知して、Sure Viewが自動的にアクティブとなり、斜め後ろからの覗き見を防止できる。

覗き見検知機能を第5世代のSure View 5へと進化

 また、5年間のLTE通信無制限利用権が付属したHP eSIM Connectモデルも用意。外出先でもセキュアな接続環境での通信が可能であるほか、PCを紛失した際にデバイスが電源オフあるいはインターネットに接続されていなくても、リモートから発見して、ロックおよびデータ削除を行うHP Protect and Trace with Wolf Connectも搭載した。こうした強化により、ハイブリッド環境においても、利便性が高く、安全な利用を可能にしていることも強調している。

 法人向けミニデスクトップPC「HP EliteDesk 8 Mini G1a Desktop Next Gen AI PC」は、「日本HPが提供する次世代AI PCとしては、最初のデスクトップ製品になる」と位置づけた。AMD Ryzen AI 300シリーズを搭載し、小さな筐体であることからカバンに入れて持ち運ぶといったニーズにも対応できる。また、HPビジネスPCのセキュリティ基盤として採用しているHP Endpoint Security Controller(ESC)チップの最新版を搭載しており、量子コンピューティングによるハッキングに対抗できる世界初のデスクトップPCとも位置づけている。

HP EliteDesk 8 Mini G1a Desktop Next Gen AI PC

 プロフェッショナル向けとなるワークステーションでは、モバイルとデスクトップをあわせて8機種10モデルを発表した。

 日本HP アドバンスコンピュート&ソリューションビジネス本部の杉浦慶太本部長は、「AIを使うユーザーだけでなく、エンジニアやデータサイエンティスト、AI開発者といったAIを作るユーザー向けの製品となる。未来の働き方を支える高性能コンピューティングを実現する」とした。

ワークステーション製品ポートフォリオ
日本HP アドバンスコンピュート&ソリューションビジネス本部の杉浦慶太本部長

 モバイルワークステーションでは、18型ディスプレイを搭載した「HP ZBook Fury G1i 18 inch」を発表した点に注目が集まる。Intel Core Ultra 9 HXプロセッサーに加えて、NVIDIA RTX PRO Blackwellグラフィックスの搭載により、高性能デスクトップワークステーションレベルの性能を実現。最大128GBのメモリと、M.2 SSDを最大4個搭載できるストレージ容量の確保を実現しているという。

 またTDP200Wに対応することで、CPUおよびGPUのパフォーマンスを最大限に発揮でき、AI学習や高度なビジュアルコンピューティングの用途に活用可能。プリインストールOSには、Windows 11 Proのほかに、Ubuntu 24.04 LTSを選択できるようにした。重量は3.52kgだが、「デスクトップ性能を持ち運ぶことができる」としている。

HP ZBook Fury G1i 18 inch

 デスクトップワークステーションでは、HP Z2 SFF G1iが目玉となる。従来製品に比べて20%小型化し、標準型タワー筐体の3分の1となるシャーシを採用して小型化を実現。最大256GBのDDR5 5600MT/sメモリを搭載しているほか、最大12台の4Kディスプレイ出力をサポートしている。専用ラックマウントキットにより、7Uのラックスペースに4台のシステムをマウントできる設計もユニークだ。

HP Z2 SFF G1i

 個人向けPCでは、インテルCPUを搭載したHP OmniBookX Flip 14 AI PC、AMDを搭載したHP OmniBookX Flip 14 AI PC、Z世代を対象にしたHP OmniBook7 Aero 13 AI PCの3機種を発表した。すでに発表しているOmni Ultraシリーズの下位モデルに位置づけている。

 日本HP コンシューマービジネス本部コンシューマー製品部プロダクトスペシャリストの吉川直希氏は、「ハイブリッドユースを支える次世代AI PCのラインアップを拡充した。AIになじみがなかったユーザーに対して、より求めやすい価格帯でAI PCを楽しんでもらう狙いがある。自己ベストを更新するPC体験を提供する」と述べた。

 中でも、HP OmniBook 7 Aero 13 AI PCは、AMD Ryzen AI 7 350を搭載。スタイリッシュなスタイルとユニセックスなカラーリング、1kgを切る軽量ボディを実現し、最大50TOPS NPUによる次世代AI PCの体験を可能にしているという。学生や社会人を対象にした製品となっている。

個人向けPC

AI活用を促進するための独自ツール「HP AI Companion」

 一方、日本HPでは、PCなどでのAI活用を促進するための独自ツールである「HP AI Companion」についても説明した。無料で提供するツールで、HPのAI PCにおけるAI活用を促進する機能を提供する。今年夏には、オンデバイスモードを新たに追加して、ローカルデバイスでのAI活用を促進していくことになる。

 HP AI Companionでは、プロンプトを入力してQ&Aやインサイトを得たり、AI関連のトピックを学習する「検出(Discover)」、個人ファイルのカスタムライブラリを構築し、ドキュメントの分析や比較を行い、レポートの要約や下書きが作成できる「分析(Analyze)」、PCのパフォーマンス状態を可視化し、BIOSやファームウェアを最新の状態にセットし、セルフトラブルシューティングが可能な「最適化(Perform)」の3点から機能を強化していく考えであり、音声入力やキーロギング防止機能も順次追加していくことになるという。

 「HP AI Companionは、今後進化を遂げ、AIを活用するための機能していくことになる。ハードウェアだけでなく、ソフトウェアの観点からも、AI活用を支援する体制を整えている」(日本HPの松浦事業本部長)とした。

HP AI Companion

コミュニケーション製品を手掛けるPolyをアピール

 今回の会見では、Polyに関する説明に時間を割いた。

 日本HPの岡戸社長は、「ハイブリッドで働くことが一般化し、オンラインによるコミュニケーションやコラボレーションが重視されるなかで、音声および映像デバイスにおいて重要な鍵を握るのがPolyである。また、Polyが持つ技術をHPのAI PCに展開するという点でも重要な役割を果たす。Future of Workを実現する上で欠かせない」と語る。

 Polyは、1990年にPolycomとして設立された周辺機器メーカーで、2018年にPlantronicsが買収して社名をPolyに変更。さらに2022年8月にHPが買収した。

 日本HP ハイブリッドワークソリューション・ペリフェラル事業本部エンタープライズ営業本部アライアンス&ビジネス開発マネージャーの是枝日登志氏は、「Polyは、オンライン会議をはじめとしたコミュニケーションの際に、利便性を高め、より臨場感を高めることができるデバイスを用意している。例えば、自らが音を聞く際に周りの雑音を除去するActive Noise Cancelling(ANC)機能だけでなく、コミュニケーションをする相手にもメリットを与えることができるPoly NoiseBlockAI技術、Poly Acoustic Fence技術などを用意しており、これらは、コミュニケーションを重視しているPolyだからこそ注力している部分である。AI技術を活用してコミュニケーションの密度を高めることができる」と述べた。

日本HP ハイブリッドワークソリューション・ペリフェラル事業本部 エンタープライズ営業本部 アライアンス&ビジネス開発マネージャーの是枝日登志氏
PolyのAI音声技術

 今回説明したPoly Camera Proアプリは、AI PCに搭載されているNPUを活用して、効果的なWeb会議を実現するもので、HPのAI PCに搭載している業界最高クラスの高精細AIカメラと、各種補正機能を持つPoly Camera Proの機能を拡充することができるという。

 また、Poly Director AIでは、AI技術により、カメラフレーミングとトラッキングを自動的に行うことで、複数人の参加者がいても、発言者にフォーカスするだけでなく、最大6人までを参加者ごとに表示するといったことが可能になり、ウェブ会議における最適なコミュニケーションを支援することができる。

 新たに発表したのが、Poly Voyager Legendシリーズである。

 PolyNoiseBlockAIやWindSmart技術といったPolyが持つ4つのノイズキャンセリング機能を採用したマイク搭載型の片耳Bluetooth AIヘッドセットであり、法人向けのPoly Voyager Legend 50 UCと、個人向けのPoly Voyager Legend 50および同30をラインアップしている。空港や駅、カフェなどで会話をしていても、周りの音が入らずに、しゃべっている音声だけを相手に伝えることができるのが特徴だ。

 「営業部門の社員をはじめとして、外出先で仕事をする人に最適なツールとなる。空港や駅のような騒音があるところでもオンライン会議をすることができる」と述べた。

Poly Voyager Legendシリーズ
法人向けのPoly Voyager Legend 50 UC

 また、Poly Studio V12ビデオバーは、カメラやマイク、スピーカーが一体型となったビデオ会議専用デバイスで、PolyNoiseBlockAIなどの独自技術を活用して、バックグラウンドノイズを遮断し、クリアな会話を実現することができる。

 「室内の反響音や、空調音などの部屋の音を消して、相手に届けることができる。また、Acoustic Fence技術によって、室内に仮想的なフェンスを作り、仮想フェンス外の音は、声も含めてすべて遮断することができる。オープンスペースでも会議が行いやすくなる」という。

 Microsoft Teams、Zoom、Google Meetなどの主要なプラットフォームとのシームレスなシステム統合が可能で、USB接続によりセットアップも簡単に行える。

 さらに、Poly Lensアプリにより、ヘッドセットから会議室デバイス、USBビデオバーまでPoly製品のすべての最適化と、IT管理者による一元管理を行うことが可能であり、IT管理者は、デバイスのプロビジョニング機能によって、ポリシーを適用したデバイス管理を簡素化できるほか、デバイスのファームウェアの更新、会議室の使用状況や稼働率の数値化による分析なども可能になるという。

Poly Studio V12