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日本HPが2023年の事業方針について説明、ハイブリッドワークや印刷のデジタル化などを支援
新たな3カ年計画「Future Ready」を推進
2023年1月20日 06:00
株式会社日本HPは19日、2023年の事業方針について説明した。
日本HPの岡戸伸樹社長は、「経営者にとっては、会社運営が難しい時期にかかっている。だが、変化はチャンスととらえることもでき、経営者の力量が試される時期ともいえる。2022年は前任の岡さん(岡隆史氏)からしっかりとバトンを受け取り、経営基盤の一層の強化を行った。2023年は、グローバル企業だからこその充実した製品やサービスのポートフォリオと、東京生産をはじめとして日本に根ざしたきめ細やかで持続可能なオペレーション、多様性に富んだ卓越した人材により、さらなる事業成長を遂げる準備ができている。卯年にふさわしい飛躍の1年になる」と位置づけた。
日本HPの岡戸社長は、2021年11月の社長就任後、「日本HPが第二の創業期を迎える」という表現を用いていた経緯がある。
「第二の創業は、戦略事業の成長、社員一人ひとりが活躍できる環境、サステナブルな社会への貢献が柱であり、2022年は、それぞれに成果を出すことができた。将来の成長に向けた基礎固めができた1年であった」と振り返る。
そして、「ハイブリッドワークなどの市場変化を新たなチャンスの機会と前向きにとらえ、適切な製品やサービスをタイムリーに投入し、ニーズに迅速に対応してきた。ブランド別PC市場シェアではナンバーワンに返り咲き、成長市場であるゲーミングPCでは最も成長率が高いベンダーになった」と述べた。
また、リーダーシップチームの刷新および女性登用による多様性の実現、社員エンゲージメントの強化のほか、東京生産で使用するクッション材を発泡材から紙素材に変更するなど、サステナブルに対する取り組みを強化したことも示した。「リーダーシップチームの女性比率は35%を占め、イノベーションが生まれやすいチームを作ることができた」とも語っている。
2022年度(2022年10月期)のグローバルの業績は、売上高が約630億ドル、利益が約54億8000万ドルとなっており、「売上高はパーソナルシステムズ事業が前年比2%の上昇、プリンティング事業は6%減となったが、成長分野については2桁増を達成した。下期は世界的な経済のスローダウンの影響を受けたが、年間を通じて安定的に結果を残せた1年であった」と総括した。
HPでは、「周辺機器」、「ゲーミング」、「ワークフォースサービス&ソリューション」、「個人向けサブスクリプション」、「インダストリアル&グラフィックス」、「パーソナライゼーション&3Dプリンティング」の6つの分野を注力ビジネスに位置づけており、2022年度における6事業合計の売上規模は110億ドルに到達。「当初計画を上回る規模であり、この分野は今後も大きな成長を遂げることが見込まれている。HPは2023年度も、この6分野に注力していく」との方針を示した。
さらに、HPでは、「ハイブリッドワーク」、「デジタルと物理世界の融合」、「サブスクリプションエコノミー」、「製造業のデジタル化とマスパーソナライゼーション」の4つを、グローバルトレンドとして定義。「私自身、この3カ月間で2回の海外出張を行っており、オフラインでしかなしえない円滑なコミュニケーションの必要性を感じている。だが、以前のように毎日出社するということはない。リモートワークの柔軟性とオフィスを活用したコラボレーションを組み合わせたハイブリッドワークは不可逆な変化として継続していくことになるだろう」とする。
また、「複合現実の技術を活用することで、産業用機械の修理を行うといった用途での実用化がはじまっている。Indigoシリーズ向けに、HoloLensを利用したHP xR Servicesを提供しおり、200社以上が採用し、修理時間の大幅な短縮を実現している。3Dプリンタでも同様のサービスの提供を開始しはじめている。さらに、所有から利用へのサービスシフトが進展し、HPも海外ではインクのサブスク事業を拡大している。そして、製造業では柔軟なデザイン設計や製品投入スピードが加速しており、ここに3Dプリンタを活用するケースが増加。HPの製品のなかに3Dプリンタで造形した部品を使っている」などと、4つのグローバルトレンドにおけるHPの取り組みについて紹介した。
なお、日本におけるサブスクリプションモデルの展開については、「現時点では具体的なものはないが、市場の動向を見ながら、どんなタイミングで、どんなものから始めるのかといったことを考えていきたい」と語った。
また、新たに打ち出した「Future Ready」戦略についても説明。「コロナがパンデミックからエンデミック(特定感染)に移行するなかで、HP自らが事業を変革し、レジリエンスを高めるための3カ年計画がFuture Readyになる。その中心になるのはお客さまであり、お客さまニーズによりよく応えることに重点を置くことになる。お客さまの変化のスピードが速いいまだからこそ、あらためてお客さまを中心に掲げ、基本に戻った。それを支えるのが、お客さまのニーズにあった最適な製品とサービスを提供するFuture Ready Portfolio、社内DXを推進し、プロセスの自動化と簡素化を行い、マーケットの変化に対して柔軟に、生産性が高く適用するFuture Ready Operation、レジリエンスを備え、アイデアと実行力があり、多様性に富んだ人材を育成し、活躍できる場を作るFuture Ready Peopleの3点になる」とした。
2023年はハイブリッドワークが定着する年になる
ハイブリッドワーク向けの事業戦略については、日本HP パーソナルシステムズ事業本部クライアントビジネス本部の小島宏本部長が説明した。
小島本部長は、「HPの調査によると在宅勤務、オフィス勤務、リモート勤務のいずれの環境においても、テクノロジーに対する満足度が低い。働く場所を問わずに高い生産性やコラボレーション、デジタル体験ができるようにすることが大切である。日本HPは、どんな環境下においても、高質なコラボレーションと生産性の向上、セキュリティを強化できるPCを投入した。ライフサイクルの短縮、IT予算の増加などによる需要拡大は、日本HPが社会に貢献するという意味でも大きなチャンスになる」とコメント。
また2022年8月に、周辺機メーカーであるPolyの買収を完了しているが、これもハイブリッドワークを支える製品群の拡大につながっていることを強調した。
「オフィス、在宅、外出先、会議室といった多様化する働く場所に応じた製品ラインアップを用意している。また、ハイブリッドを前提とした管理アプローチや、ハイブリッド環境を支えるためのセキュリティも強化している。独自の隔離技術であるHP WOLF SECURITYや、VPNを利用しなくてもデジタルワークスペースに安全にアクセスできるHP Anywareにも関心が集まっている。2023年は、ハイブリッドワークが定着する年になるだろう。顧客体験に基づいたニーズに対して、コミュニケーション機能の強化、人間工学に基づいたモニター、エンドポイントセキュリティ、ハイブリッドワークを前提とした管理ソリューションを強化。そこに周辺機器が加わることで、ハイブリッドワークソリューションをエンドトゥエンドで提供することが可能になる」と述べた。
デジタルプレス事業と3Dプリンティング事業
デジタルプレス事業については、脱炭素社会を担うサステナブルパートナーとしての役割を強化。産業印刷のデジタル化の進展にあわせて、印刷のDX化と、印刷の付加価値向上という観点から事業に取り組む姿勢をみせた。
日本HP デジタルプレス事業本部の山口哲利本部長は、「印刷のDX化では、自動化システムのHP PrintOS Site Flowの導入が促進されており、グローバルでは標準といえるポジジョンを獲得している。先ごろ日本でも、トッパンインフォメディアが採用。国内ラベル業界では初となった。また、複合現実を利用した保守サービスであるHP xRServicesは、日本でも大阪印刷、吉村、フジプラスが導入している」とした。
このほか、「印刷の付加価値向上では、これまでの印刷の常識を打ち破るRGB印刷のニーズに対応している。また、偽造品に対抗するHP Indigo Secureも、他社が追随できないセキュリティ印刷パッケージとして、高い評価を得ている。HPならではの特長を生かして、デジタル印刷の市場を拡大したい」と抱負を述べた。
3Dプリンティング事業については、日本HP 3Dプリンティング事業部コマーシャルアカウントマネージャーの宮内大策氏が説明。日本において、HP Multi Jet Fusion 5200シリーズを中心に展開していることに触れながら、「3Dプリンタによる造形物が、最終商品に活用されることが世界中で増えている。日産自動車やトヨタ自動車など、日本の企業でも導入が進んでいる。半日で400個以上を造形できるスピードを持っているのが最大の特徴である。全世界で1000社以上がHP Multi Jet Fusionを活用し、累計造形数は1億7000万個に到達している」と語った。
スペインのバルセロナには、HP 3D Labを開設。量産までの最適なワークフローの検証を行うなど、部品製造における3Dプリンタの導入を促進するきっかけになっているという。またHP Multi Jet Fusionを活用して、個人ごとにカスタマイズしたスノーゴーグルや、複雑なデザインを施したメガネフレーム、5週間で6万個の納品を完了した自動車のリアスポイラーなどの量産に活用されているとした。
今回の事業説明会では、白色パーツの製造が可能なHP Jet Fusion 5420Wソリューションを国内で販売開始することを発表。高品質な白色パーツを安定的に製造することができるという。
「いままでの造形では、グレーがベースになるため、色をつけても暗いトーンになっていた。だが、白をベースにすることで、色彩豊かな表現が可能になる。コンシューマ製品についても鮮やかな色を採用したり、義肢装具においては、利用者の肌の色にあわせた処理が可能になる。これにより、HP Multi Jet Fusionの活用の幅が飛躍的に広がることを期待している」と述べた。
すべての人がより素晴らしいゲーム体験ができる世界を目指している
ゲーミングについては、日本HP パーソナルシステムズ事業本部コンシューマービジネス本部の沼田綾子本部長が説明した。
沼田本部長は、「世界人口の35%となる27億人がゲームを楽しんでおり、日本におけるゲーム人口は5000万人を超え、そのうちPCゲームユーザーは1601万人を占めている」と指摘。「日本HPは、エンスージアストからメインストリームユーザー向けブランドとなるOMENと、メインストリームからカジュアルユーザー向けのVICTUSの2つのブランドで展開し、さらに、2021年からは、HyperXがHPブランドのひとつに加わった。また、新世代のゲーミングダッシュボードであるOMEN Gaming Hubは、2023年からは、ゲーミングPC以外のすべての個人向けPCにプリインストールする。これにより、NVIDIA GeForce NOWの機能が利用でき、独立型GPUを搭載していないPCでも、1600以上のタイトルがプレイできる。すべての人がより素晴らしいゲーム体験ができる世界を目指している」と述べた。
2022年は、日本HPのゲーミングデスクトップPCが3年連続でトップシェアを獲得。ゲーミングノートPCでは、年間で最も高い成長率を達成したという。「2023年はゲームコミュニティの活動を大切にするなど、より深いゲーム体験を提供する360度のゲーミングエコシステムの確立に取り組む」とした。