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エクイニクス、2025年のアジア太平洋地域における技術インフラトレンド予測を発表

プライベートAI、セキュリティ、エッジ、ハイブリッドマルチクラウドがIT戦略の鍵に

 米Equinix(以下、エクイニクス)は13日、2025年のアジア太平洋地域における技術インフラストラクチャトレンド予測を発表した。

 エクイニクスでは、2025年以降、アジア太平洋地域のビジネスとテクノロジーの風景を形成すると予想されるトレンドとして、4つの主要なトレンドについて考察している。

 1つ目のトレンド「プライベートAIインフラを取り入れたハイブリッドAI導入の推進」については、AIサービス導入の初期ブームは、パブリッククラウドで利用可能な大規模言語モデル(LLMs)の普及によって支えられてきたと説明。しかし、デジタル企業の間では、特にプライベートデータを扱うAIワークロードに対して、他のアプローチがより適している場合があると認識され始めているとしている。

 ユーザーのクエリや関連データをパブリッククラウド上のモデルで処理する、従来の「Data To The Model(データをモデルへ)」アプローチに代わり、多くの組織が「Model To The Data(モデルをデータへ)」アプローチを採用していると説明。これは、AIモデルを組織のプライベートデータストレージに隣接するプライベートコンピューティングインフラに展開するもので、多くの場合、モデルのエンドユーザーに近い物理的な場所に配置される。また、このアプローチは、プライバシー、速度、コストの観点からメリットをもたらす可能性があるとしている。

 プライバシーの観点からは、最も有望なAIユースケースの多くは、機密性が高く、プライベートまたは規制されたデータセットに技術を適用することを伴うと指摘。例として、金融記録を活用する銀行の不正防止システムや、医療画像に基づく予防医療サービスを挙げている。こうした機密データを完全に管理するため、または国のデータ主権要件に準拠するため、一部の企業はAIインフラをプライベートに展開することを選択しているという。

 2つ目のトレンド「AIと量子技術の進化に伴うサイバーセキュリティの強化」については、アジア太平洋地域ではサイバー脅威が増加しており、2024年にはサイバーセキュリティ支出が360億ドルに達すると予測されていると指摘。この急増は、AIやIoT技術を活用したサイバー攻撃の高度化など、さまざまな要因によって引き起こされており、

 量子コンピューティングは、サイバーセキュリティに対するもう一つの主要な脅威となり、現在の公開鍵基盤の重要な部分に深刻なリスクをもたらし、現在の暗号を数分で破ることができると予測されていると説明。実際、国家レベルの攻撃者は、暗号化された機密データを現在は解読せずに収集し、技術が利用可能になった時に解読しようとしているという。これは「harvest now, decrypt later(今収集して後で解読)」攻撃と呼ばれている。

 これらの脅威に対抗するため、量子暗号技術と生成AIツールは、組織のサイバーセキュリティ戦略において不可欠な要素となりつつあると説明。例えば、量子鍵配送サービス(QaaS)は、インターネットを通じて量子鍵配送技術部にアクセスできるクラウドサービスで、エンタープライズネットワークに対して強力な保護を提供し、安全な通信とデータ完全性を確保する。量子技術のサイバーセキュリティフレームワークへの段階的な統合は、ますます高度化する暗号攻撃からデータを保護するために極めて重要で、量子鍵配送は、これらの高度なサイバー脅威から機密データを守るため、前例のないレベルのセキュリティを提供するとしている。

 3つ目のトレンド「エッジコンピューティングを活用したデータ主権の強化」については、政府のデータ主権への関心が高まる中、IoT、生成AI、リアルタイムアプリケーションの普及が進み、端末(エッジ)での強固なITインフラの必要性が増していると指摘。エッジコンピューティングは、データのローカル処理を可能にすることで、転送リスクを軽減し、国ごとに大きく異なるアジア太平洋地域のデータ主権法への準拠を支援するとしている。

 アジア太平洋地域では、国民のデータを保護するために、いくるかの国が厳格なデータ主権政策を実施し始めており、例えば、中国のサイバーセキュリティ法は、国内で収集されたデータを国内に保存することを義務付けていると説明。同様に、インドネシアの政令第71号では、電子システム運営者にデータの国内を求めており、これらの規制は、コンプライアンスを促進し、安全なデータ管理を可能にするエッジコンピューティングのような、ローカライズされたデータ処理ソリューションの必要性を強調しているとしている。

 エッジコンピューティングサービスは、企業や政府がデータを発生源の近くでい処理することを可能にし、応答時間を短縮やデータセキュリティの向上を実現する。このローカライズされたアプローチは、特に厳格なデータ保護法が施行されている地域で、データ主権規制を順守するために不可欠なものだとしている。

 4つ目のトレンド「ハイブリッドマルチクラウドでビジネスアプリケーションを進化」については、アジア太平洋地域が世界のクラウドデータセンターの37%を占め、アジア太平洋のパブリッククラウド市場は2026年までに年平均成長率26%で成長すると予測されており、マレーシア、タイ、ベトナムなどの市場で拡大が計画されていると説明。一方で、多くの企業が複数のパブリッククラウドサービスのアジリティと、プライベートクラウドインフラの利点を組み合わせた、ハイブリッドマルチクラウドアプローチを採用していると指摘する。

 ハイブリッドマルチクラウドは、ITインフラを最適化しようとする企業にとって、引き続き標準となり、パブリッククラウドとプライベートクラウドの利点をバランスよく活用すると予測。エクイニクスのグローバルデジタルインフラプラットフォームは、広範なクラウドおよびネットワークプロバイダーのエコシステムへの高速接続を提供し、シームレスな統合と効率的なデータ移動を可能にする。このアプローチにより、企業はビジネス環境の変化に柔軟に対応しながら、重要なワークロードを制御し続けられるとしている。

 エクイニクスでは、プライベートAI環境や量子強化サイバーセキュリティの開発、エッジコンピューティングやハイブリッドマルチクラウドソリューションの加速的な導入など、これらのトレンドがデジタルの未来を形作ると予測されていると説明。さらに、持続可能性への関心が高まる中、企業が環境への影響を最小限に抑えながら、これらの先進技術を導入することがますます重要になっていると指摘する。

 エクイニクスは、持続可能なエネルギーで運営されるデータセンターを通じて、企業がカーボンフットプリントを削減しながら、技術革新の最前線に立つことを支援しており、最先端技術と持続可能性の両方に焦点を当てることで、企業は急速に進化するデジタルの世界で繁栄しながら、地球環境の保護にも貢献できるとしている。